第2話 実弾射撃

  まずは一人目、名前は本田奈央なお。何故か常にハイテンションの、ショートカットの少女が教官から実弾の装填されたマガジンを渡された。彼女の着ている服は、派手ながらのTシャツとジーンズのホットパンツといういでたち。そして茶色に染めた髪。活発的な性格によく似合っているといえた。

 弾倉を受け取るとウキウキしながら子供のような笑みを浮かべて首にかけていたイヤープロテクターを頭に合わせ耳を覆う。それから、SIGP226に弾倉を叩き込んだ。

 まわりにいた全員もそれに合わせてイヤープロテクターを装着する。

 10m先に並んでいる四つの紙のマンターゲットの方角に向き直り、元海兵隊員ジェフ・クーパーの提唱した射撃姿勢――ウィーバー・スタンス(拳銃を両手で包み込むように握り、目線と同じ高さまで上げて撃つ方法――この射撃スクールでは皆この撃ち方で訓練される)――を取り、左手で拳銃のスライドを引いて、初弾を装填すると、ターゲットに狙いをつける。そしてちらりと教官の顔をうかがう。無表情な教官の顔。射撃OKだと判断した奈央は、一呼吸すると、すぐさまトリガーを連続して引き、あっという間にターゲットは穴だらけになり、装弾数15発全弾を打ち尽くすと拳銃はスライドストップがかりホールドオープンの状態になった。

「えへへ。教官、すごいでしょ、全弾ターゲットに収まったよ!」

 そう無邪気に笑う奈央が振り返ったさい、一瞬銃口が後ろにいた教官と生徒合計四名の身体をなぞるように動いた。

 空砲とはいえ、他人に銃口を向けてはならない……銃を扱う上での初歩の初歩の、そして絶対にやってはならないことを、彼女はしでかしてしまった。

 教官はすばやく奈央のそばに近づくと、右手で無理やり拳銃を取り上げ、左手で奈央のえり首をつかみ、こうどなった。

「二度と同じことやってみろ! その時はこのスクールから叩き出すからな! よーく覚えとけ!」

 そうして奈央を突き飛ばす。地面にしりもちをついた奈央は、教官をにらみ返していた。自分がしでかした初歩的なミスのことは忘れて。

「次」

 冷静な教官の声。

「はい」

 座っていたベンチから腰を上げ一歩前に出て教官から弾倉を受け取ったのは、白いブラウスを着て、黒のミニスカート姿の倉本りんだった。首の金色のネックレスがゆれ、大きく開いたブラウスの胸元の奥が見えそうな挑発的な格好をしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る