第9話 ダンジョンコアに名前をつけてみた
その後、ダンジョンコアのスキル、ダンジョン管理を使うことで、この廃病院の中でも電気やガス、水道を使えることが判明した。
ここに住むことでダンジョンを充分すぎるほど堪能できるだろう。
だが、その前に田助にはやらなければいけないことがあった。
それは金塊の現金化だ。
「こういうものの買い取りって質屋でいいのか?」
スマホで調べようとしたが圏外だった。
「電気とかガスはいけたのに、電波はダメなのか? がんばれよ、doc○mo!」
doc○moは特に関係ない。
ダンジョンコアを見れば、申し訳なさそうな顔をしている。
「あれか? ダンジョンコアのレベルが上がれば使えるようになったりもするのか?」
「たーう!」
なるらしい。
ダンジョンコアのレベルをどうやって上げるのかは、今後の課題だろう。
とにかく、まずは金塊を現金に換えてこよう。
スマホでいろいろ調べるために外に出ようとすると、ダンジョンコアも一緒に来たがった。
どうやら田助と離れたくないようだ。
「本当にかわいいなぁ、お前は。まあ、こんなところに一人……ではないかもしれないけど」
ゾンビとかスケルトンとかいるし。
それでもここは養育に向いている環境とは言えないだろう。
「……まあ、ダンジョンコアの養育って何だという問題が発生するわけだが」
そこには目をつぶることにする。
「よし、それじゃあ一緒に行くぞ」
「たー!」
おー、という感じでダンジョンコアが、田助に習って一緒に手を上げる。
田助はダンジョンコアを抱き上げると、歩き出した。
倒してまだ時間がそれほど経っていないからだろう。復活していなかった。
「ダンジョンコアにしてみれば初めての外になるわけだな」
「たー!」
「というか、ダンジョンコアって呼び方、間違ってはいないけど、微妙に大変だよな。名前は……なしだったか」
鑑定結果を思い出す。
「なあ、名前どうする? なんかないか?」
「たー! たー、たー、たー!」
田助の顔をぺちぺちと叩いてくる。
「何となくだけど、俺につけろって言ってるか?」
「たー!」
どうやら当たったらしい。
「いいのか? 俺がつけて? 本当に?」
「たー!」
「よし、わかった。俺に任せろ! ……んー」
ダンジョンコアを見つめる。
ぷにぷにのほっぺに、同じようにぷにぷにの手。
虹色の瞳。
鮮やか過ぎる青い髪。
「プニル……レイン……ブルー……」
思いついた言葉をそれぞれ呟くが、どれもダンジョンコアにはお気に召さなかったようだ。
だうー、と却下されてしまった。
「わかりやすいので言えばダンジョン子とかなんだけど」
「だーう!」
めちゃくちゃ嫌そうだった。
「じょ、冗談だから、そんなに怒るなって」
今の流れで、ダン子とか、ジョン子という名前も思い浮かんだが、口にしない方がよさそうだ。
「なら、他には……う~~~~~~~~~~~~~ん」
トイレで踏ん張る時のように長く唸る田助。
「あ、こいうのはどうだ? アンファ。ドイツ語で『始まり』を意味する言葉がアンファングって言うんだが、それだとちょっと固いっていうか、お前に似合わないから。はじめの文字を取ってアンファ。俺にとって、お前との出会いが新しい人生の始まりって意味を込めてみたんだ」
どうだろうかと反応を見れば、
「たー! たーう! たー!」
喜んでくれていた。
「よし! じゃあ、今日からお前の名前はアンファだ。よろしくな、アンファ!」
「たー!」
田助が差し出した手にダンジョンコア改めアンファがぷにぷにした手をぺちんと打ち付けてきた。
アンファの名付けが終わったところで、ちょうど出入口にたどり着いた。
ドアを開け放ち、外の世界へ始めの一歩を踏み出す。
ただし、田助だけ。
アンファはダンジョンに取り残されていた。
「え、なんで?」
その後、何度挑戦してみても、アンファが外に出ることは叶わなかった。
どうやらダンジョンコアであるアンファはダンジョンから離れることができないらしい。
「す、すぐに戻るから! だから待っててくれ! な!?」
というわけで、めちゃくちゃ寂しげなアンファをダンジョンに残し、田助は外に出た。
だが、そこで問題が発生した。
「山田くん?」
何とアパートのオーナーがいて、見られていたのだ。
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