気分転換に

あたしは新垣あらかき遥叶はるか


年齢:34歳

好きなモノ:ロックバンド、洋楽、お酒、刺身

嫌いなモノ:人参、白子

性格:言いたいことがハッキリ言えない、周りの目を気にする、困ってる人を放っておけない

職業:OL



今日も残業を断れず夜遅くに帰宅。



「はぁ~。疲れたぁ~」




疲れを少しでも吐き出そうと長めに息を吐きながらソファに倒れるように座った。この瞬間が体の力が抜けて帰ってきたって感じがする。


少し休んでからお風呂に入りつつ乙女の仕事をこなす。そして温かい湯船に浸かる。気持ちいいけど今日は短めに。


お風呂から出ると化粧水なんかをしてから適当に作ったご飯を食べる。



「こういうときにご飯を作って待っててくれるイケメンで優しい彼氏がいたらなぁ~」




思わず願望が零れた。


ご飯を食べた後は今日も頑張ったあたしへのご褒美として大好きなチョコチップ入りのバニラアイス。それとヘッドホンを装着してこれまた大好きな音楽を集めたごっちゃ混ぜのプレイリストを聴く。これがあたしなりの最高の時間。


いつもは2~3曲聴きながら1つのアイスを食べるのだが今日は1曲の内にあっという間に食べ終わってしまった。しかも2つも。



「きっと疲れのせいだ。そうに違いない」




言い訳のような言葉を言い聞かせるように呟く。


食べてしまったものは仕方ないとスプーンを置いて次に流れてきた曲を聴いていた。これは洋楽で好きなDJと女性歌手の歌。思わず首と肩を揺らす。


テンションの上がったあたしは大大大好きなロックバンドのプレイリストに切り替えた。それで更にテンションは上がった。あたしはその高ぶる気持ちに身を任せスプーンをマイクのように握り立ち上がる。そして口パクで歌い始めた。



2曲目にはいった時には目を閉じ左手を踊らせていた。



3曲目に突入すると立ち上がりあたしはステージの上に立っていた。何万人もの観客がペンライトを振って盛り上がっている。


あたしはステージを走り回り歌った。曲に合わせてダンスをしながら歌う。口パクだけど。最高の気分でステージの私は歌ってる。英語だってお手の物。投げキッスなんかしてサービスも忘れない。


それから4曲目、5曲目とライブは続いた。曲が終わり一杯に広がった歓声とギター,ベース,ドラムの音を全身に浴びる。そしてあたしがメンバーのところを向き目で合図を送ると最後は一本締めのように締めくくった。一瞬の沈黙のあと先ほどよりも大きな歓声が私達を称えた。



「さいっこう」




少し汗をかいていたけどあたしの心は満足に満たされていた。仕事での嫌なことを全部なかったことにしてれる好きが一杯詰まった時間。疲れただけの一日だった今日をたった30分ほどの時間が最高の一日に変えてしまった。


そして満足と疲れに満たされたあたしはベッドでぐっすりと寝て明日いつも通り仕事に出かけた。



その週の土曜日、またもや残業を引き受けてしまった。しかも友達との夕食があったのに...。電話で謝り快く許してもらったが帰宅したあたしはどっと疲れていた。特に気分的に。


だけどやらなきゃいけない事を済ませアイスを食べながらプレイリストを選ぶ。



「どれにしよっかなー」




またあの大大大好きなロックバンドで楽しくなるのもいいと思ったが今日は別のにした。



「今日はお気に入りのDJにしよっ」




ヘッドホンからはEDMがガンガンに流れる。そして今日のあたしはDJとなってフェスに来たみんなを大いに楽しませた。



あたしの人生の支えで栄養や水分補給のように欠かすことのできないモノ。それが音楽。




妄想の中のあたしは最高にはっちゃけてて人生楽しんでるって感じ。残業もなくて好きなことで頑張ってる。

「あたしには無理」なんて思ってやりたかったことを諦めたあたしとは違う。

妄想の中で楽しいにまみれて生きてるあたしには嫉妬しちゃう。




だけど...。




あたしは、新垣遥叶。

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