第8話 自作分析を兼ねた番外編:倒叙推理の書き方を試してみる

 ということで、『平田警部補の事件簿』シリーズを起ち上げてみました。

 本エッセイのたたき台になればと、急ぎ足でとりあえず形だけ整えたのが、「うつされた死体」になります。


 シリーズとしての設定は。


主人公(探偵役)

 将来的に二人組にする予定。うち一人は刑事で、もう一人は未定。部下の刑事になるか、親しい探偵になるか、全く別か。

 腹案としては、コロンボにおける「かみさん」をいっそ相棒にしちゃったらどうかと考えてました。が、これってテレビドラマ版の鬼貫シリーズと似てくる気がしたので、再考中。


 刑事の名前は平田民洋ひらたたみひろ。刑事コロンボを演じたピーター・フォークのもじりです。

 どこがもじり?と疑問に感じる向きが大勢いらっしゃるかもしれないので、恥ずかしながら解説しますと、


  ピーター → ペーター → ぺいたー → ぺいた → 平田 → ひらた


  フォーク → フォークソング → 民謡 → 民洋 → たみひろ


 となります(汗)。


 第一作「うつされた死体」では平田のみの登場となります。ビジュアルも含めてキャラクターが固まっていないため、コロンボを彷彿とさせる言動がたまに出てしまっているような。


 以下、拙作「うつされた死体」における設定で、ネタバレとなっています。



犯人

 大熊吉人おぐまよしと


被害者

 安谷麗菜やすたにれいな


動機

 よりよい縁談に気の迷いが生じて、恋人の排除を画策するに至る。


犯行計画

 アリバイ作りのため自宅近くの車中で絞殺。そのまま被害者宅に運び、首吊り自殺に見せ掛ける。


探偵役が自殺を疑うきっかけ

 被害者の腕に新聞から転写した文字がべったり。そんな状態のまま自殺するものか?


探偵役が犯人を疑うきっかけ

 被害者の口中にあった便箋に、犯人の名前が出て来る。犯人自身は被害者とはだいぶ前に別れて以来、会っていないと証言。


犯人を追い詰める決め手

 被害者宅では新聞を取っていない。犯人宅の新聞を調べることで被害者の痕跡発見。



 ここから反省の意を込めての自作分析です。客観的に分析できる確証はありませんが、今回はスピード第一で書いたので、粗は分かっているつもりです。


 倒叙推理を書く上で抑えておくべき三つのポイントの内、本作で一番弱いのは決め手でしょう。

 犯人がもっと用心深ければ、被害者が触れたであろう物は早々に処分するのが当然。処分さえしていれば、後日、刑事が問題の新聞を調べようにも現物がなく、手詰まりになる。


 次いで弱いのは、犯行計画ですね。このストーリーだと、犯人は何のために被害者を自宅に呼んだのか、理由がぼんやりとしている。首吊り自殺に見せ掛けるだけなら、最初から被害者宅に出向き、そこで殺害しても同じなのに。

 一応、アリバイ工作目的で死体移動を行ったことにしましたが……。死亡推定時刻の幅を考慮すると、この程度のアリバイ工作ならやってもやらなくても同じかも。もっといいアリバイトリックを考案する必要がありそうです。


 他では動機も弱いかも。大金が入ると決まった訳じゃなし、地位が約束された訳でもない。相手女性の魅力にメロメロになってもいない。



 あと、倒叙推理とはあまり関係ないですが、舞台設定が犯人にとって――つまりは作者にとって都合よすぎるのが、ちょっと恥ずかしい。

 地下の車庫に加えて、防犯カメラの少ない田舎を連想させる平屋建築や古い別荘。これほど死体移動に適した設定はないんじゃないかと。


 一般論と言っていいのか、現実世界でこれほど防犯カメラが溢れてくると、現代を舞台にした推理物を書きにくくなっているのは確かだと思います。

 そして、防犯カメラを気にしなくて済む館物や孤島物が増える傾向に向かうんじゃないかと、期待を込めて予想しています。(^^)



 以上、これだけ短所を把握しているのであれば、もっとちゃんとした形にしてから公開しなよと叱られそうですが、たたき台用の習作ということでご容赦ください。


 何かまた倒叙推理について思い浮かんだことがあれば、書きます。


 それでは。

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