第39話 悪魔大元帥とエンジェル
現生徒会メンバーの自己紹介と言う名の俺弄りが終わったところで、
多分どっちから自己紹介やるかって感じ。
予想の通り性格上新垣から立ち上がり、自身の首元に手を当て口を開く。
「
「オイやめてあげろください」
柴咲がニヤァッとした。本当やめて、嫌いな奴からのダブル弄りとかストレスで禿げる。
「得意な事はピアノです。その道に進むつもりですから」
「新垣さんはピアノ業界だと全国区だもんね。色んな大会優勝してるとか」
「福山くん、ご紹介に預かり光栄です」
ニコッと微笑んだ新垣、なーにがピアノの全国区だよ。そんな綺麗な笑顔を浮かべといて、どうせ裏では汚い金でのし上がったに違いない。俺は騙されないぜ!
俺の睨みに気づいた新垣は、これでもかというほどの営業スマイルを浮かべた。嫌な予感しかしない。
「会計監査を志望した理由は、この前に妻夫木くんから、てめぇの金銭感覚はとち狂ってるからどうにかしろという、有難いお言葉を頂いたからです」
「妻夫木……君ひどいな」
「
「ブッキー輩……」
「……孝宏くん」
「違う、言ってない。そこまでは言ってない」
土曜にもうちょっと金の使い方を考えろ的な事は言った気がするけど、え、あれ、あの時俺どう言ったかな。もしかして思わず素が出て、言っちゃったのかしら……。
土曜の記憶の消去も絶賛脳が頑張っているお陰で思い出せぬ。
「なので、会計監査として、妻夫木くんや、柴咲さんに色々と教わりたいと思います」
「まっかせてくださーい。ガッキー先輩」
「おい、柴咲ちゃんと俺の事も先輩って呼ぼうか」
「私が輩って呼ぶのはブッキー輩だけですよ」
「頰を赤らめて可愛く言うな。余計に悪意を感じるわ」
悪魔大元帥が悪魔を仲間に引き入れてしまった。柴咲はどうせ権力と金に絶対的に弱いしな。もう柴咲なんてお金の前ではミジンコも同然のはずだ。
「自己紹介、します」
全身全霊をかけて、全神経を研ぎ澄ませ。聞き流せば死ぬぞ、そのくらいの覚悟で臨め。
「
あぁ……趣味が可憐過ぎる。多分天使の生まれ変わりの作る菜食や、奏でる音色は、俺の想像出来る限界のチンケなものではなく、素晴らしい世界を創造するに違いない。
悪魔大元帥がいたところでこのエンジェルがいるならお釣りが7億円くらい返ってくるわ。問題ねぇ。
「入った理由は孝宏くんに誘われたから」
「お、おぅ、入ってくれてマジサンキューな。一緒に頑張ろうぜ」
「うん」
ちょっとニコッと笑ってくれたぁー! はぁー幸せー!
「で、今日からの事なんだけど」
俺の至高の幸せをよそに、陣内が取りまとめる。
「テスト週間に入るから、活動自体はやらないつもりなんだけど、私は生徒会室に来るから、勉強しに来たりしてもいいよ。新垣さんや、石原さんも仕事を教えて欲しかったら教えるし」
「そういや、テスト週間だったな」
先週は例の音楽部の事件を解決する事に躍起になっていたわけだが、今度はテスト勉強に躍起にならなければならんわけだ。忙しい……バイトもしないといけないってのに。
「それと、今日帰りの会で先生から言われると思うけど、金曜の職員会議でテスト週間中は駅まで、集団下校義務付けられてるから。もし生徒会室来るんだったら二人以上で来てね?」
「え、会長もいるんですよね?」
柴咲の質問に、陣内は苦笑いで答える。
「私は近隣にお住いの父母さんと自治体の人達に注意喚起。可能なら下校時間に簡単な見回りをお願いしないといけないから、一緒に帰れないんだよね」
「いや待て、それお前一人で帰ることになるんじゃねぇの?」
「駅までは
「だめだあいつは、信用ならん。俺が一緒にいてやる」
あんな吹けば飛びそうな中年ヒョロガリ親父に任せられるかってんだ。
「忠犬ブキ公」
「ぶっ!」
「おい、柴咲、聞こえてんぞ」
ボソッと言ったセリフに
「じゃ、妻夫木、一緒にお願いします」
一つ優しく微笑んでから、ぺこりとちゃんとお辞儀してみせた陣内。こういうところはしっかり感謝するんだよなこいつ。
「おう、任せろ」
それに、俺自身も見回りに加わればあの赤ピアス野郎を今度こそ捕まえれるかもしんねーし。
赤ピアス用の対策は既に考えてある。次会った時を楽しみにしてろよぐっふっふっ。
「会長、ブッキー輩が会長に対して良からぬ事を考えている顔をしています」
「してねぇよ」
「妻夫木……」
「頰を赤らめるな!」
陣内のノリの良さは相変わらずだが、新垣と遥さんの視線が俺を貫き通すので、今後ぐっふっふとか心の中で笑うのも良くないなと思いました。
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