第37話 元ヤンは大型犬扱いです。
お昼のチャイムが鳴っている。
あー……朝から授業中でも関係なく視線が半端なかった。
これが
「妻夫木くん、今日のお昼はどうするの?」
それとなく話しかけてきた新垣に俺は即答する。
「学食でラーメンをば」
「そう、それじゃ栄養が偏りますわ。私今日お弁当を少し作り過ぎてしまったので一緒にどうかしら?」
「いやー今日はどうしてもラーメンを食べたい気分なんだよなぁ。いや本当に悔しい。お嬢の弁当食えないの、
スマホ片手に弄りながら答えると、新垣が顔を横まで近づけてボソッと言う。鳥肌が半端ないのは内緒。
「医療費」
「馬鹿な! その件はもう済んだはずでは!?」
「土曜にその事は触れてませんけれども。私カードを切るタイミングをいつも遅らせてしまうので」
残念そうに言ってるがお前の場合、手札も多いし、効果的な瞬間狙ってカード膨大に切ってくだけでしょうが!
周りはゲームの話か? なんて風で勘繰ってる始末。違うよ。脅されてるよ、お金を払えと脅されてるよ。
金髪金眼金取少女だよ。
「あ、丁度いいじゃん。お昼休み生徒会室でみんなで食べようよ。新垣さんも会計監査やるって聞いたし」
「こ、
いつのまにかそばで話を聞いていたらしい昂輝、ここにきて最悪の選択肢を持ってくる。ふざけんな誰が行くってんだよ。俺は何がなんと言おうとラーメンを頼んであの学食のおばちゃんからチャーシューをサービスしてもらうんだよ。
「
「行く」
我、可憐な即答を認識。
「じゃあ孝宏」
「行くに決まってんだろ。任せろ。何? 生徒会室の鍵取ってこればいい?」
「きゅ、急に変わり過ぎじゃない?」
新垣のちょっとよくわからない感想はともかく、俺の人生をかけてお昼に行かなければならなくなった。
「鍵なら多分会長が持ってるし、元々俺らお昼一緒に食べる予定だったから本当丁度いいよ」
「え、なんだよ俺昼なんか誘われてねぇぞ」
「だって孝宏の分の仕事やりに来てたんだもん。音楽部の件でいなかったから」
「本当に申し訳ない」
思わずガチ平謝り。土下座すべきかと迷うレベル。めっちゃ気を遣わせてた。そういやこの前のお昼休み行った時もなんか仕事してましたね。
「ごめんなさい」
「いやいや、気にしないでよ。結構生徒会で喋りながら仕事するの俺嫌いじゃないし」
「そうか? 俺隣で
「孝宏相手だからかな?」
「え、どゆこと」
「じゃあ行こっか!」
聞こえてないとばかりにみんなと歩き出す昂輝。
え、何? 昂輝相手だと柴咲のアマ、そういう毒にも薬にもならない話を50分とかしないわけ!? ざっけんなよ何だよあいつぅ!
調べたらメガマフィンセットも550円だしよぉ!! あいつ50円先輩から
あまり見たことの無い、四人の組み合わせで生徒会室に向かったのが理由なのか、やたら周りの生徒が色めき立っている。てゆうか多分新垣がいるからですね。やだなー。こいつの隣とかずっと一緒にいられるやつの気が知れない。ずっと注目浴びないといけないわけじゃん。
「あれ、妻夫木達がいる?」
生徒会室の階の階段を通過する時に、うへぇと嫌な想像をしてたら、片手に生徒会室の鍵をプラプラさせたうちのボスが階段を降りながら出現した。
「あ、会長」
「こんにちは」
「
「おっす」
「はいはい、みんな一緒にお昼食べに来たの?」
メンバーを見て察する陣内、答えようと思ったら、何故か新垣が営業スマイルで先に口を開いた。
「えぇ、
「なるほど、丁度いいね。まだ正式発表前だけど、二人が入る事は決定事項だし、簡単な親睦会みたいな感じでご飯食べよう」
何でもないように言った陣内、スタスタと生徒会室まで行って鍵を開ける。
ので後ろを付いていく。
「柴咲は?」
「
「はぁ? どうゆう事だよ」
「柴咲には柴咲のコミュニティがあるって事。妻夫木みたいにいつも一匹狼でいられる奴の方がレアなんだよ」
「ふーん、つまりザマァって事だな?」
「全然違う」
そんなやり取りを扉前でしていたのだが、何故か周りが静かだと思って遥さん達を見ていると、三人からジーッとした強い視線を向けられていた。
「どうした?」
「いいえ」
新垣の即答。
「別に」
遥さんの可憐な即答。
「いや、孝宏は馬鹿だなーって」
そして昂輝の罵倒。
「はぁ!?」
「はいはい、早く入るよ邪魔なんだから」
「はぁ!?」
納得がいかないでいるのだが、陣内に首根っこを掴まれて生徒会室に引きずられていく俺。大型犬みたいな扱いは良くないと思います。
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