第28話 そんな買い物で大丈夫か?
こいつの事だからタカシマヤでも行って高そうな服でも買うのかと思いきや、銀時計に集合だった理由がハッキリする。
「まさかのビッカメ……」
「何? なんか文句があるなら聞くけど」
「いや、何? お前意外と庶民派なの? あの家なんだし、いいとこのお嬢様だろ? 今日の格好といい、なんかセレブってない感じしてんぞ」
「お嬢様が全員ドレス着て社交界出てると思ってるの? 普通の服着てコンビニ行ったりするけど」
「そーなのか」
「全く興味なさそうね」
うん、全く興味がない。
というか、まさかの名古屋駅近くの大型家電量販店である。
その好きな人とやら家電好きっ子なのだろうか。ハッ! 荷物持ちする事を進んで言わなくて良かった。冷蔵庫とか持たされたら流石の俺も途中で力尽きる自信があるぜ。
とか思っていたら、お探しのものは俺でも持てそうなものだった。
「ゲームショップは何階なの……」
「ゲームか。4階のソフマップとかでいいんじゃねーの?」
「詳しいじゃない」
「ダチがゲーム好きでよ。
「友達? いたの?」
「ハハッ、ぶち犯すぞこのアマ」
「やれるもんならやってみなさいよ」
挑戦的な笑みを浮かべる
「げっ、そういやあの執事がまた見張ってんのか? 店内で銃突きつけたりなんかしたら大騒ぎになんぞ?」
「……今日は
「え、何で?」
「……あんたに話す必要ある?」
「ないな。興味もない」
「そう、じゃあいいじゃない」
言ってからスタスタとエスカレーターの方まで歩き出す始末。こいつ、いつもは不機嫌になっても隠してるんだろうけど、俺相手だとすぐ不機嫌になるな。俺もすげー不機嫌だけども。すっげーー不機嫌だけども!!
心で
昼のラーメン代考えたら……184円で何か買えるかしら……。
「ねぇ」
「あん?」
「ゲーム、あんただったら何買うの?」
「俺の参考にしたところで、ゲームなんて、人の好き嫌いで分かれる事必至なんだが……好きなジャンルとか分かんねーの?」
尋ねると、新垣はううんと自分の記憶から、必死に絞り出そうとしている。お前絶対そいつの事そんな好きじゃねーだろ。直ぐ出してやれよ。
そして、数秒要した結果、出た答えが。
「クレーンゲーム?」
「お前は
「って言っても、その人と遊んでたのなんて昔ながらのアーケードゲームくらいだし、よく分からないし」
「昔ながらのね。ただ多分クレーンゲームやるの好きな奴でも、家に置こうとまでは思わないと思うぞ」
「じゃあ……後はレーシングゲームとか!」
新垣の思い出せたことが嬉しそうな感じが、そいつの事を、実はちゃんと好きなのかもしれないと、俺に思わせる。
「お、その辺なら俺も好きだし分かるかもな」
そう言ってゲームのカセット売り場の方へ歩いて行く。
「因みにハードは何持ってんだそいつ」
「ハード? ハードって?」
「マジか……」
キョトンとした顔、この反応、こいつ自身はまともにゲームした事無さそうだな。そんなんでゲーム好きな男と上手くいくのか甚だ心配……でもないな。うん、フラれてしまえばいい。ハハッ、楽しくなってきた。
「そいつも金持ちなのか?」
「いいえ、どちらかと言えば金銭的な余裕は無い方だと思うけど」
「お前、そんな男でいいの?」
「本当よね。自分でも何でこんな男をって思う」
「いや、家柄的な事で聞いてんだよ。そいつの良し悪しは知らねーよ」
「あ、そう」
惚れられた男が不憫すぎる……。こんな奴に惚れられるとか絶対不幸体質だと思う。仲良く出来そう。
「別に、結婚するわけでも無いんだし、学生の間の恋愛なんて気にしないわよ、あの親は」
「ふーん」
明らかに新垣の声のトーンが下がった。親と上手くいってないのだろうか。金持ちも色々大変らしい。全く共感出来ないけど。
「とりあえず持ってないゲーム機のカセット貰っても、意味無いぞ。別の物の方がいいんじゃねーの?」
「じゃあそのハードと一緒に買えばいいんじゃないの?」
「その発想は無かった……」
もうそいつがそのハード持ってたらどうすんだよ。このアルティメットブルジョアジーめ。でも今時同じ据え置き機2個あっても、金無い家系なら壊れても修理に出さなくていいし、喜びそう。俺なら嬉しいし。
というわけでグランツーリスモとPS4のセットで約4万円のお買い上げー。
……また新垣ゆかなを一つ嫌いになった瞬間であった。
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