電脳潜行と潜行障害について

『おマツリ少女とSCP! アフター!!』で登場し、『黄昏街と暁の鐘』でも登場した、作品を横断する設定。以後、いちいち作品世界を作るのがめんどくさいものぐさな作者の小説にたびたび登場する予定なので、概要をまとめる。


・電脳潜行


 読んでそのまま“でんのうせんこう”。“ダイブ”や“もぐる”とも呼ばれる。全没入型VR世界、情報海オーシャンにアクセスする電脳技術。南アフリカの電脳工学博士ヨハン・ダニエルが(作品世界史の)2010年代に発明、実装した。


 大まかにいうと、五感をフルに使ってネットの世界を自由に動けるサービス。展開する企業によってできることに特色はあるが、基本的に情報海オーシャンは一つの世界であり、隔たりがない。


 必要なのは、潜行適正と呼ばれる情報海オーシャンでの運動神経を示す値で、これが高ければ高いほど、より深く様々な楽しみ方ができる。逆にカナヅチと呼ばれる潜行適正皆無な人間もおり、あまりに長く情報海オーシャンにいるせいで現実の身体と齟齬が出る電脳潜行症候群ダイブシンドロームという精神病も蔓延し始めている。


 使い方としては、ホログラムモニターPCとして使える携帯機器CT(コンパクト・タブレット)や、PCの付属品となっているヘッドセットを装着する。

 瞬時に脳の主だったニューロン・大脳新皮質の信号をスキャニングし、電脳潜行サービスを展開している各企業のサーバーへ送る。その後、サーバー内で全身体機能と感覚機能を疑似的に再現したアバターが生成され、その“目”を通して、情報網ネットより深く三次元的な情報海オーシャンを、自由に動けるようになる。ただ、各社によって隔たりのあるサーバーから全世界を跨る情報海オーシャンへと至る技術は完全なブラックボックスになっており、開発者以外では技術者でもよく分かっていない。


 と、いうのは表の話であり、本当は魂の異世界転移装置ともいうべき出鱈目でたらめな代物。


 無数の宇宙から切り離された意識やデータ―――『世界のゴミ』が集まる空白の世界“ストレイワールド”に、人間の意識や、ネット上にあるデータを持ち込んで、香港の九龍城くーろんじょうの如き野放図な増築を重ねた結果できた歪で超巨大なマンションのようなものが情報海オーシャンの正体。


 電脳潜行の真の姿は、ストレイワールドと現実世界リアルワールドのゲートを繋ぎ、人間の意識(≒魂)を転送する技術のことである。ぶっちゃけ、異世界転移。作者がWeb小説らしく異世界転生・転移モノを書こうとしてどうしてもできずにいた時期、ポロッと出てきたアイデア。



・潜行障害


 現実にある海に潜ることとはまったく関係がない。電脳潜行ができない脳機能障害。


 と、こちらも表立ってはそうなっているが、電脳潜行の真実が上記の通りなので、実際は脳ではなく、魂が異世界ストレイワールドへの転移を拒む障害。世界中の(電脳潜行の実態を知っている人物も含めた)研究者・医学博士が原因を追究しているが、そもそも症例が世界でたったの十例しかなく、その誰もが研究対象となることを拒否したため、半ば都市伝説的な障害とされている。


 作品世界の2022年以降の世界は、電脳潜行による技術革新・革命の恩恵を幅広く受けている。


 情報海オーシャンでの疑似的な五感の再現により、主な身体障害が克服され、全盲・弱視・聾唖ろうあ・難聴・色覚異常・ディスクレシア・各身体障害に克服の道筋をつけた。さらに末期患者の緩和ケアにも採用され、認知症の治療にも効果が認められている。


 2026年には既に情報海オーシャン内だけで経済活動が完結するほどになっており、新たな雇用となっている。


 そのような世界で潜行障害であることは、“世界のはぐれもの”になることを意味する。潜行障害者は、大なり小なりそれぞれに孤独と心の傷を抱えている。


 そして、その潜行障害者たちが、この作者が書く小説の主人公たちである。どこまで書けるかは不明だが。

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