第23話 第一次産業革命期

ネーレとの契約を果たし、里に帰還を果たしたのは夕暮れ時だった。


そして俺は忘れていた。


「何か弁明はあるかこの人間ッ!」

「流石にこれは許さんぞ!」

「冗談にも限度があるわッ!」


皆大激怒だった。

俺に絆された男達は、自身から秘密を嫁に暴露し撃沈。かなりの説教を喰らったようだった。


そして怒りの矛先は俺へと向けられた。


他にも、俺が流した『ニセリベア情報』は既に里中に拡散されていて、俺はしばかれた。


助けを求めてレインやネーレの方を見ても、

『流石にこれは怒るよ〜』

『タチが悪いわね』

と見放された。


さっきはあれ程感謝の念を示していたネーレのあっさりした掌返りに、少し心が傷付いた。


びっくりだよ全く。

俺一応里の長なのにさ?

目が覚めたら、なんと縄で縛られて木に宙吊りでしたよ。


俺は誓った。

二度とこのような嘘はつかない事を。




そして今日も里は平和に朝を迎える。


狼牙族の景気の良い遠吠えが目覚ましがわりで、それを皮切りに里は活気付いていく。


今日は久々に里への貢献を行う。


つもりだったのだが……。


「マジかよ……俺の知らない間に一体何があった?」

「あっ、やぁルクシオ!来てくれたんだね」

「レイン、これは一体何?」

「ん?見れば分かるでしょ?野菜だよ野菜」


そう。以前俺が最後に畑を訪れた時には、ちょうど野菜の種を撒き終わった頃だ。

それから十分に時間は経っていない筈なのに、何故か畑には野菜の姿がある。 


レインはなんて事ない様に言うけれど。


「いや有り得ないでしょ!?野菜が育つにはもっと時間が……ッ!」

「そんなもの、精霊族に通じるとでも?」

「……」


当たり前だと、透かした顔でこちらを見るレイン。他の子供の精霊達も「えっへん」と自慢げに胸を張っていた。


通じませんね!?分かってますよ!

だって伝説だもんね。



ヤベェ、伝説マジパネェ。


だがこれだけでは終わらないのが伝説侵略。


「おい」

「あら?ルクシオじゃない。どうしたの?」

「お前昨日里に来たばかりだろ?これはどういう事だ?説明してくれ」


ネーレに俺は説明を求めた。


俺がやった視線の先には。


「おおッーー!我が装備がピカピカじゃー!?」

「うっは、ヤベッ、この肌触りヤベッ!」

「神か?」


里の男達が自身の装備を泣きながら抱くという、需要皆無な光景が広がっていた。


「あら?別に不思議な事ではないわよ?だって私は神剣だもの。武器にまつわる事は基本なんでも出来るわ」

「……あなたは以前は女神だったのでは?それが呪いで剣にされても、そんなおかしな能力がつくんですか?」

「あら、ひどいわ!私自己紹介はちゃんとしたわよね?私は時の女神ネーレウス。単純に武器の時間を巻き戻したのよ。地上に来て力は少し抑えられてるけど、それくらいなら全然余裕よ」


……は?

やばくね?


「なんかもう、この里別の意味でぶっ壊れてる気がする」

「?寧ろ凄い勢いで進化してる気がするけど?」


すみません少しあなたは黙って頂けないでしょうか?


「あっ、ルクシオ様!」

「ルクシオ〜」


茫然としていた俺に、フィアナとルミナがやってきた。


「なぁ二人とも」

「どうしたの?」


すぅ〜。


「……俺も伝説になるべきかな?」

「……本当に何言ってるの?」


今日も、里は、圧倒的な速度で進化中です。

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