第13話 ルクシオ・クルーゼ、里の長に就任する
ジョーロのような奴が完成した。
これで、野菜に困る事はない。
「ルクシオさん、本当にありがとうございます。あの荒廃寸前だった畑が、以前の様子を取り戻す姿を見られるとは思いませんでした」
「いえいえそんな、感謝なんていいですよ。こちらとしても、野菜抜きの生活は苦しいものがありますし」
完成した畑を感慨深く眺めていると、ラウンジさんが感謝を念を述べてくる。
この里に来てから、感謝される事が多くなりやや困っているのだ。
「ラウンジさん、敬語はやめてくれませんか?俺上下関係が少し苦手で、同じ里で暮らすんですから、畏まらなくてもいいんですよ?」
「いえそんな!今やこの里の救世主であるルクシオさんに馴れ馴れしくなどできませぬ!もししよう者なら、あなたの信者から厳しい仕打ちを受けてしまいます」
「ちょっと待って。今信者って言った?」
「あれ?ルクシオ様は知らないのですか?」
そこに作業の後始末を終えたフィアナとルミナがやってきた。
「フィアナ」
「ルクシオ様は少し自覚が足りませんね。リベア討伐だけでなく、里の畑や家の改善に加え、狼牙族までその深い懐で受け入れたルクシオ様は、誇張なしで里の英雄です。今では密かに、私の父さんが筆頭になって、ルクシオ教なんて組織を計画中です」
「よし今すぐローを連れてこい。やめさせてやる」
「そんな連れない事言わなくていいんじゃないルクシオ。皆あんたに感謝してるのよ?」
「ルミナまで……」
「そうですルミナの言う通りです。私としても、ルクシオ様を崇めてくれる人が増えるのは誇らしいですよ」
「頼むから本当にやめてくれよ?」
ルクシオはあくまでこの里の住人に他ならない。
それなのに、族長を差し置いて英雄や救世主だなんて、こんな状況に族長が戻ってこられたりなんかしたら打ち首だ。
と言うか、この二人って仲がいいのか?
話してた所なんて見たことないぞ?
「二人ともそんな事言うけど、俺はこの里のただの住人だぞ?俺がこんな出しゃばっていいなんて、本来いい筈が……」
「何言ってるのよ。あんたはすでにこの里の長でしょ?」
「……はぁ?」
「もしかして、伝言もらってないの。私のお爺ちゃんが、「儂がこの里に戻るまではお主に長の座を譲る。精進せい」って言ってたわよ」
「はぁ!?俺はそんな伝言初耳だぞ!?てか爺ちゃんってなんだ!?」
「ルミナは族長の孫娘ですよ」
「What's!?」
「まぁいいじゃない。あんたはこの里の正式な長よ」
まじか!
俺が知らないところで妙な宗教が作られてるどころか、俺がこの里の長だと?
無理だろ!?
人族のまだ子供の俺に長を、しかもエルフや狼牙族が住人の!?
「ちなみに、この事は全住人の総意よ。あんたなら長を任せられるって、みんな信頼してる証拠よ」
「そんな……。フィアナ!」
「私はルクシオ様が長になってくれた方がいいです。皆も既に受け入れてしますし、今更拒絶するのは野暮ですよ」
八方塞がりだ。
「何ですか?ルクシオさんは知らなかったですか。なら今日は宴でも開きましょう!
そして今日から正式にルクシオさんには長を務めてもらいましょう」
「それはいい案ですね!是非そうしましょう」
「私も賛成ね。ここははっきりとしましょう」
「待て!俺はまだやると言ってな」
「なら今すぐ宴の開始の合図を送るしますね。エクスプロージョン×3!!!」
「あんたこの里破壊する気か!?」
「エルフの里では、宴の開始はエクスプロージョン×3が合図なのです!」
「ほんっとに頭爆発してのか!?」
こうして、なし崩し的に、このハイスペックな集団の長に仕立て上げられました。
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