第49話

「余計なことはしなくていいかい?」

「いえ、とんでもない!」

「あんた、この前もいったけど、いま女のことで悩んでることがあるだろ? あたしに隠したってだめだよ。その女と別れなければならない状況になって、気の優しいあんたは、これまでの償いとして何がしかのお金を用意してやりたいと思ってんじゃないの?」

「――まったくその通りです。でも彼女にはわるいんだけど、僕もサラリーマンなのでどうしたらいいか悩んでるところです」

「そうだろうね、ちゃんと顔にそう書いてあるよ。それで、五つの数字の宝くじが当たれば何とかなるのかい?」

「それはもう……それが当選すれば、多少彼女への償いはできると思います」

「あんた、よほど彼女のことが好きなんだね」

「確かに好きことに間違いないんですが、それよりも自分の身勝手で彼女の大切な時間を奪ってしまったことを後悔しているんです。だから、僕のできる限りのことはしてやりたいと思って……」

「よおくわかったわ、そんなあんたの気持あたしが何とかしたげる」

 占い師はベッドの上に坐り直すと、自然ではない乳房を露わにしたまま胸の前で合掌をして、

「7・11・16・23・29……」と呟いた。

 それを聞いた弓削は、すぐさまベッドを脱け出て、背広の内ポケットから手帳を取り出すと、忘れないうちにその五つの数字を素早く記した。

 そして、手帳を背広にしまってベッドに戻ると、訝るようにして訊いた。

「先生、きょうは割り箸を使わないんですね」

「いいのよ、いつもそうするとは限らないの。そんなこと心配しないで、あたしを信用すればいいの」

 占い師は自分の仕事にケチをつけられたと思ったのか、いつもと違った口調になった。

「はい、すいません。余計なことをいいまして……」

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