第48話

 愛の告白と受け止めるべきなのか、男同士の打ちあけ話として解釈したらいいのか判断できないでいる。返事のしようがなかった。そんなことよりも、弓削の頭の中には山里をそこまでしなければならなかった占い師の正体と、アパートに見たふたつの影との関係がどうしても知りたかった。しかし、そんなことを面と向かって尋ねるわけにもいかない。苛立ちが襲った。

「先生が女じゃないってこと、くにちゃんも知ってるんですか」

 はぐらかすようにいった。

「もちろんよ。くにちゃんもそうだけど、あの店に来る常連客の中でも数人は知ってるわ。

別にあんたに隠してたわけでもないんだけど、あえていうこともないと思って黙っていたの、ごめんね」

 占い師の色っぽい言い方にどう対処していいかわからない。男として接するべきか、女性として接したらいいのか戸惑うばかりの弓削だった。

「いえ、人それぞれ生き方がありますから……」

「わるいことしたわね……あたしは別にわる気があったわけじゃないのよ、それだけはわかって」

「それはもちろん……」

「その代わりといっては何だけど、あんたが望んでいる五つの数字を予言してあげようか」

「ええッ!」

 弓削は何をいわれたのか咄嗟わからなかった。何度も反芻するようにしてやっといっている意味が理解できた。五つの数字については、これまでさんざん勝手なことをいいつけてきた手前、そう簡単に口に出すことができなかった。

そんな半ば諦めの気持でいるときに先方からそういってくれたのだから、願ってもないことで、まるで夢でも見ているようだった。

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