第47話
「そんなとこで煙草なんか喫ってないで、こっちに来たら?」
占い師は掌で弓削の枕を叩いている。
弓削は呼ばれるままに腰を上げた。全裸のままである。占い師の視線が一点に注がれているのが目を見なくてもわかった。
ベッドに行き着つくまでの間に、これからまたあのゲームのつづきをしなければならないと想うとやたら気が重かった。
ベッドに入り込んでも弓削から話すことは何もなかった。ただ黙って天井を見詰めた。占い師の自分を見ている顔が目の端に引っかかっている。
香織との行為のあと、気づかって優しくすることが当然のことのように躰が動いたのだが、生まれてはじめてのことに動揺しているのと、自分自身の所在がどこにあるのかわからないために気持の整理がつきかけている。
「……はじめての経験だったようね」
いままで何事もなかったような話し方に戻っている。
「……はあ、正直いうと……」
処女と知って男が欲望と征服感を満足させたときに発する言葉のようにも聞こえたが、弓削のいまの心境からは素直にそういうより他なかった。
「あたしも正直なことをいうと、久しぶりなの。ずいぶん前に彼氏がいたんだけど、突然あたしの前から姿を消してしまったの。風の噂によると九州の福岡にいるみたい……数えてみるともう十年以上も前のこと……いけない、余計なこと喋っちゃったわね。でもあんたはわかりやすい男ね。顔を見てれば何考えてるか手に取るようにわかるわ……たびたびいうけど、あたしはあんたのそんなとこが好きなんだよ」
「……」
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