第24話  5

 朝、弓削がベッドの中で目を醒ますと、すでに寝室の中にははちきれんばかりの清冽で白い光が横溢していた。目をしばたたかせながら枕許の目醒まし時計を覗くと、時計の針はとっくに十時を廻っていた。体勢をもとに戻し腕枕をしながら天井に向けて大きく息をはく。

 ふと、きのうの占い師のことが頭に浮かんできて、彼女の本質といものを垣間見たような気がした。ゆっくりと話をしたことがまだ二、三回しかないが、いままで心の片隅に自分なりの占い師に対するイメージがあった。ところが、彼女にしてみれば、仕事や責任から離れて素の自分になったところに、酒といういたずら者が介入したものだから加速度をつけて本質を曝け出すことになってしまったに違いない。

 弓削はそんな酩酊する占い師の姿を見て、これまで疑心と別階層の人間という二種類の要素が綯い混じりになっていたのだが、改めて何か同じ種類の人間の匂いを感じた。そう思うと彼女を占い師としてではなく、普通の飲み友達としてもう少し心の中を覗いてみたいと思った。

 のんびりとそんなことを考えていたとき、突然寝室のドアが開き、妻が少し声を荒げるようにしていった。

「パパ、いつまで寝てるの?」

「ああ、いま起きるから。たまの休みぐらいゆっくりと寝させてくれよ」

「朝ご飯が片付かないでしょ、それに、こっちだって予定があるんだから……」

「わかったよ」

 弓削にしてみたら久々にゆっくりできる週末。この数週間は朝早くから接待ゴルフで出かけたり、仕事にかこつけて香織と逢っていたりして何かと忙しかった。自分勝手かもしれないが、それもこれもどこかで自分を正当化していたために妻のひと言が瞬間的に血液を逆流させた。しかし弓削はここで不満を口にしたら……と思って黙ってパジャマ姿のまま寝室を出ると、重い足取りで階段をゆっくりと降りた。

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