第10話
占い師は、くにちゃんに新しい割り箸を一膳もらうと、カウンターの上で両の手を合掌し、それを左右の拇指に挟み込むと何かを念じるように瞑目した。そしてしばらくの間瞑想したあと、おもむろに目を開き、
「3と7と8」と、呟いた。
「えッ! 3と……」
弓削は一瞬耳を疑った。
「しぃっ。あんた声が大き過ぎるんだよ」
占い師は口の前に人差し指を立てて弓削を制した。
「すいません。でも、これって、前に教えてもらった数字と同じじゃあ……」
「同じだろうが何だろうが、あたしが占って出た数字だから仕方ないだろ」
占い師は、矜持を踏みにじられたと取ったのか、やや語気が強くなった。
「わかりました。そいで、明日買えばいいんですね?」
「ああ、そうだよ。今度はへましないようにね。くにちゃん、お酒にするわ。熱燗の大きいのを早いとこね」
その後ふたりは飲みつづけ、世間話から個人的な内容にまで話が及び、時間を見ると、十二時近くになっていた。
占い師は、もう少し店に残るから先に帰れと弓削にいった。弓削は約束通りそこまでの勘定を払って店を出た。
さすがにこの時間ともなると、夜気が冷ややかさと静謐を湛えて大きく包み込んできた。
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