第2話 1人目、ナナちゃん
僕が中学2年生に進級した時の話。
初めて後輩もでき、所属していた野球部にも沢山の1年生が入部してきた。
そこで出会ったのが、マネジャー志望の
ナナちゃんだった。
目がクリクリしていていつもニコニコ笑っていて、二つ結びがとても似合う可愛い女の子。
夏の大会が終わり3年生が引退した頃に、彼女から告白されて付き合うことに。
初めての彼女。しかもこんなに可愛いみんなのアイドル的存在が彼女だなんて、同級生からは羨ましがられるわで。
まぁ、調子に乗っていたわけですよ。
だけどまだその時は、彼女の本当の姿を知らない僕だった。
付き合って4ヶ月くらい経った頃、合唱コンクールの季節がやってきた。
各クラス、朝練や帰りのHRではみんな真剣に練習をしていた。
ある日の放課後、合唱の練習終わりに教室の後ろにまとめた机を僕はクラスの女子と直していた。
普段からよく話す、ただの女友達。
くだらない話をしながら笑っていたら‥
ん?なんか視線を感じる‥。
僕は窓ガラスの先にある、反対側の校舎を見た。
ナナちゃんがこちらを見ていた。
ずっとこちらを見ている。
「ナナちゃ〜ん!」
僕はベランダに出て叫んだ。
無反応。そして去って行った。
聞こえなかった?いや、確実にこっち向いていたよな‥
でもその時は気にせずに教室に戻りまた机を直し始めた。
その日の帰り、ナナちゃんと一緒に帰る約束をしていたので下駄箱で待っていると、向こうからナナちゃんがやって来た。
右手にはカッターナイフ。
しかもダンボールを切る時に使うような、大きいやつね。
少し早歩きで俺に近づく。そして俺にこう言った。
「浮気したの?」
顔つきもいつものナナちゃんじゃない。
目を見開いて、なんかこう‥言葉では表せない恐ろしい顔つき。
思い出しただけでも怖いなぁ。泣
俺は目の前にいる自分の彼女が別人のようで頭が真っ白になった。
「浮気?!俺がそんな事するわけないだろ!」
「さっき教室で女と2人で楽しそうにイチャイチャしてたもん。」
「いやいや‥あれはクラスメートで、一緒に机直してただけだよ。」
彼女は黙った。
良かった‥納得してくれ‥
「絶対違う!!!!!!」
急に大声で叫んだ。
もう俺はびっくりしすぎて声が出せなくなった。
「浮気したなら、あたしもういらないよね!?もう生きていけない!!死ぬ!!」
ナナちゃんは、右手に持っていたカッターナイフを長さMAXまで出して、自分の手首に当てた。
「ちょちょっっあたたたたちょだだぁぁあ!!!!まっっ待って待って待って!!」
俺はやっと我に返り、ナナちゃんを落ち着かせようと説得し始めた。
「本当だよ!!ただのクラスメート!!何にもしていない!!てか俺が好きなのはナナちゃんだけでしょ?!分かってよ!!もし嫌なら、女友達とはもう最低限の会話はしない!!だからそれ俺に渡して!!」
もうパニックだよね。
中学生ながら脳内フル回転させて、彼女を説得する。
「本当に?絶対?」
「絶対!約束する!」
ナナちゃんはカッターナイフの刃を閉まって、俺に渡した。
「約束だよ?先輩。」
いつものナナちゃんに戻った。
可愛い笑顔で俺にそう言った。一安心。
今思えば、その時別れていれば良かった。
だってカッター出してきても切らないもん。この先、何回も出してくるけど切らないもん。
そう、彼女は最初から死ぬ気はない。
重度なメンヘラ女子だった。
可愛い女は、やはり怖い! @ta2ta2-09
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。可愛い女は、やはり怖い!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます