009:それは、悪意にまみれた悪ふざけ。
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『72:00:00』
・転移地図だよん☆
※ ダンジョンを設置したい座標をクリック!
※ 一つのダンジョンの半径10km圏内に、別のダンジョンは作れないよん♪
※入り口の形状はランダムで決まるー(๑>ᴗ<๑)
※ 早い者勝ちだから急いでね〜♡
※あと、転移後は即ダンジョン解放になっちゃうから注意してね☆
…………。
…………。
…………。
なぁ、こんなページの最下部に書かれた注意書きに気づけるやつおる?
早い者勝ちだから急いでね〜なんて言われたら焦るっしょ。
だって命かかってんのよ? こっちは。
守りたい命もたくさんあるわけ。
マジふざけんな。
今だから普通に笑い話として話せてるけど、当時は
DPもカツカツで、俺はこの72時間で手に入るはずの36DPも計画に組み込んでたのよ。
こんなことされたらもうめちゃくちゃだわ。
悪意がすーごい。
悪意にすーごいまみれてる。
本当にいい性格してるわ〜管理者L。
++++++++++
『72:02:18』
現在の残りDP─── 102DP
うーん、なんかそわそわしてしまう。
このなんにもできない時間。
ダンジョン解放まで残り約3日まで迫った。
なーんか、こう、期限が迫ってくるとそわそわしちゃうよな。
まあ、やれることはだいたいやった。
あとはDPが回復するのを待って、落とし穴と何か武器とか防具とかを作るくらいか。
・落とし穴[60]:簡易落とし穴。任意発動、もしくは自動発動かは選択可能(魔力使用により)
・【劣】鉄の剣[30]:劣化した鉄の剣。
・【劣】鉄の軽鎧[40]:劣化した鉄の軽鎧。
えーっと72時間後に手に入る72×0.5=36、合計102+36=138DPで購入できるギリギリのライン。
ないよりはマシ……かな。
というか、説明が手抜きすぎて分からん。
どのくらい劣化してんだよ。
あとは、オーガとかオークも意外と強そうだし期待しよう。
ゴブリン、あいつはダメだ。
まあ、最終的には空からの奇襲で俺が仕留められるかにかかってるんだけど。
あ、それとそれと。
なんかステータスが変化してた。
ちょっと感動したわ。
名前:ルイ
種族:魔王【堕天種】
Lv:1
攻撃:D
防御:E
魔力:C
敏捷:D
精神:A
DP:102
【エクストラスキル】
〈コミュニケーション:Lv.3〉
【スキル】
〈魔素吸収〉〈ダンジョン生成〉〈領域〉〈配下創造〉〈物質創造〉〈飛行:Lv.5〉
そうなのよ。
〈コミュニケーション〉のレベルが3に上がり、さらには〈飛行:Lv.5〉っていう新たなスキルもゲットしてたのよ。
いつの間にか。
なんか、普通に嬉しいわ。
努力したことが目に見える形で分かる感じ。
身体ボロボロにして頑張ったからな〜俺。
その甲斐あって、〈飛行:Lv.5〉が手に入った。
うん、感動。
身体をボロボロにして〜とは言ったけど、実はもうけっこう治ってる。
この身体、回復力もハンパない。
怖い。ヤバい。
─── よし、ぼーっとしてても仕方ないし、アイツらが生き残るための作戦の続きでも考え、いや、その前に………………
ピコンッ♪
ん?
その時、PCとスマホが同時に何かを通知した。
気になったので、俺はPCデスクに座る。
そして、その画面に映っているものを理解したと同時に、俺の中にあった僅かな余裕が一瞬で掻き消された。
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『71:59:38』
・転移地図だよん☆
※ダンジョンを設置したい座標をクリック!
※ 一つのダンジョンの半径10km圏内に、別のダンジョンは作れないよん♪
※入り口の形状はランダムで決まるー(๑>ᴗ<๑)
※ 早い者勝ちだから急いでね〜♡
…………。
…………。
…………え。
え、え、何何何!?!?
急すぎんだろ、ちょっと待てって!!
── この時、俺はめちゃくちゃ焦っていた。
俺は高速で脳を回転させる。
今ある情報を、瞬きすら忘れかき集める。
── 心のゆとりを失えば、視野は狭くなる。
ふぅー、落ち着けー俺ー。
カームダウン、カームダウン。
── 普段なら見えていることも見えなくなる。
大丈夫。
設置する場所なら既に決めている。
そうだ。
焦る必要はない。
既に決めていることではないか。
俺は『知識だよん♡』に載っていた情報を思い出す。
まず、この世界は大きな大陸が四つある。
その中で俺が目をつけたのは、その四つの大陸のうちで最も小さな大陸。
『ゴルデリア大陸』と呼ばれる大陸だ。
この大陸には、『巨龍の骸』と呼ばれる超巨大な山脈が中央を走っており、大陸を東西に分断している。
そのため、東側と西側では全く異なる文化が発達している。
多少は交流もあるようだが、東と西は基本仲は良くないらしい。
これがまず、俺の評価している点だ。
俺の"最終目的"を考えれば、周囲にある国は少ないにこしたことはない。
この大陸に決めてから俺は、ダンジョンを設置するならどこがいいかを考えた。
そして、限りなく理想に近い場所があることに気づいたんだ。
それは東側の大国、『アルム王国』の持つ都市の一つ『城塞都市ヴァルグラム』である。
この都市の近郊が絶対にベストだ。
まず、この都市の近くには一つの大きな村がある。
そして、その村と都市の間の道を阻む形で、広大な大森林が横たわっているのだ。
これが素晴らしい。
この都市と村のちょうど中間の位置にダンジョンを設置すれば、あくまで俺の予想だが、『弱い人間』の定期的な訪れが期待できるはずだ。
ダンジョンが見つかるまでは村人が迷い込むかもしれないし、見つかったあと訪れるであろう『冒険者』もそこまで強くない……と思いたい。
どんなことであってもそうだが、優秀な人材というのはより中央の都市へと流れていくものだ。
つまりは、王都。
本当に強い冒険者は、おそらくだが王都に集まっている……のではないだろうか……?
異世界に俺の常識がどこまで通じるかは、分からんが…………。
それに、根拠ならもう一つある。
『冒険者』という職業は、平民が成り上がれる可能性を秘めた数少ない職業の一つである、という点だ。
この世界は未だに貴族やら王族やらと、身分が重要視される世界。
つまり、生まれた瞬間に人間の"上下関係"が決まってしまうというわけだ。
平民として生を受けた者の扱いは、決して良いとはいえない。
日々の生活すら厳しい者も多いだろう。
だが、その不条理から抜け出す手段が僅かながらに存在する。
その一つが─── 冒険者だ。
冒険者となり、名をあげること。
上位の冒険者になれば、貴族と同等の扱いをされる者もいるという。
─── おそらくだが、『冒険者』というのは平民にとって憧れの職業なのではないだろうか?
俺は様々な考察を経て、この結論に辿り着いた。
この予想が正しければ、冒険者になることを夢見て、村を出て城塞都市ヴァルグラムに来る者も少なくないことになる。
そうすれば必然的に─── ヴァルグラムには、冒険者になったばかりの『ビギナー』が多くなるというわけだ。
弱い冒険者を俺のダンジョンの糧として、いずれ訪れるであろう本当の強者に備える。
そして、最終的に俺は─── 城塞都市ヴァルグラムを乗っ取る。
これが俺の考えるベストだ。
思考に誤りがないか。
あまりに自分に都合のいい考えをしているのではないか。
幾重もの不安が俺に過ぎるが、迷っている時間はない。
覚悟を決め、俺は─── ダンジョンを転移させた。
++++++++++
「イテテ……ルル、大丈夫か?」
「にゃー。にゃにゃー」
「心配してくれるのか〜優しいなお前は。俺も大丈夫だ。てか、結構でかい地震だったな〜家具に地震対策シール貼っておいてよかったわー」
かなり大きな揺れが収まり、俺は少しだけ安心していたんだ。
大きな決断をした達成感と、その心地よい余韻に浸っていた。
だが─── 得てして不幸は重なるもので。
ダンジョンをヴァルグラム近郊の大森林に転移させてから僅か10分後。
俺のダンジョンとしての感覚が告げる。
身体に異物が入ってくる不快感を。
これは─── 侵入者だ。
俺の脳は完全に停止した。
おかしい。
おかしい。おかしい。
おかしい。おかしい。おかしい。
絶対におかしい。
残り時間ならまだあったはずだ。
なら……ならなんで………………
6人も侵入者が入ってきてんだよ………………。
俺の視界が絶望によって黒く染まった。
うわー。
俺、死んだかも。
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