007:東〇ドームくらいあるくね?
さて、次は何しようか。
大雑把な方針は決まった。
俺は人間の居ない国を作りたい。
んー、まあ国なんて大層なものでなくてもいい。
具体的には、都市を一つ乗っ取りたいと思っている。
魔王の能力 《領域》を使えばおそらくそれができる。
すっごい大変そうだけど……。
俺たちは基本ダンジョンの外には出られないが、それを可能とするのがこの《領域》という能力だ。
《領域》はダンジョン判定範囲を拡大するとともに、俺の行動可能範囲の拡大も兼ねている。
その範囲を拡大し、都市を飲み込む。
からの制圧。
ということを今考えている。
───ずーっと先の話だけどな。
まあ、先を見すぎていても仕方ない。
大切なのは今だ。
まずは今を生き残ることに全力を尽くそう。
俺は玄関に向かう。
その目的は、未だ確認していない玄関の先の世界を見るためだ。
なんか、少し緊張する……なぜだ……。
「にゃー」
ルルも着いてきた。
やっぱりたまにはお前も外に出たいよな。
でも───
「ちょっと待っててくれ、ルル。俺が確認してからな」
外がどうなっているかわからない。
そんな場所にルルは連れていけねーよ。
さて。
俺は意を決し、ドアを開ける。
そこには……………………
「うわー広いわー。東〇ドームくらいあるくね?」
異様に広い空間が広がっていた。
天井もめちゃくちゃ高い。
本当に東〇ドームくらいあるのではないだろうか。
俺行ったことねーけど。
僅かに黒みを帯びた石の壁と地面。
黒曜石……ほどではないかな。
それがどこまでも広がっている。
なんか綺麗だわ、気に入った。
「これが1フロアかね。───さて、どうしたものか」
今あるDPでできる最善は何か。
様々なシュミレーションが俺の脳内で繰り返される。
ついさっきまで見ていたカタログの情報を、思い出しながら。
気になっているのはこれだ。
迷宮化[700]:一つのフロアを丸ごと巨大な迷路へと変える。任意に変更可能(魔力使用により)
樹海化[700]:一つのフロアを丸ごと巨大な樹海へと変える。任意に変更可能(魔力使用により)
はぁ……。高すぎる。
なんだよこれ。
これだけでほとんどのDPなくなるっての。
えーっと残りは……1168-700=468、ね。
はぁ……。
だけどなー。
これが最適な気がするんだよなー。
いろいろ考えたけど。
最初はモンスターを大量に創造することを考えたが、不安要素が多すぎる。
まずは戦闘能力。
どれだけの力があるのか、カタログの説明だけでは分からなさすぎる。
次に知能。
俺の指示に本当に従うのか。
そして、従うとしてどれほど忠実に命令を遂行できるのか。
これらが全く分からないし、それを検証するための時間もDPもない。
加えて、『冒険者』とやらの能力も不明だ。
本当に嫌になる。
なんだよこの八方塞がりな状況。
管理者Lさん……もうちょい初期DP増やしてくれよ……。
このように、モンスターもとい魔物の大量創造には不安がとてつもなく付き纏うというわけだ。
それで、どうするか。
俺は考えた。
ルルを撫でながら考えた。
そして結局、一つの結論に至った。
唯一DP不要で検証できるものがあったのだ。
それは─── 俺だ。
魔王【堕天種】となった俺の能力は分からんが、検証することは出来る。
しかもDP不要で。
そして、創造する数匹の魔物で『冒険者』の検証を行う。
いきなり大勢でこられたらまずいので、どうにか個々に分断する方法を考える。
これから。
んで、最後に俺が罠とかを駆使しながら侵入者を───殺す。
うん、まずは殺そう。
捕獲は殺せることが前提だ。
だからそんなのは後。
今は難しいことは考えず、いかにして侵入者を殺すかだけを考えよう。
捕まえても入れておく檻がないしな。
これが俺の考える、最善だ。
++++++++++
「んーよし、『樹海化』にしようかな」
いろいろ悩んだ結果、俺は樹海化に決めた。
本当に迷ったけど、ダンジョンの内部が暗闇であることを考慮するば、樹海の方がより一層迷いやすいだろう。
そして、もう一つ。
─── 俺が飛べるかもしれないということ。
この点が正直決め手となった。
俺は背中に生えている純黒の翼に目を向ける。
動かすことは出来る。
感覚としては、腕が増えたような感覚。
腕を動かすように翼を動かせる。
だけど……飛べるか?
俺飛べる気がしないんだけど……。
翼があるのと飛べるのって違うよな?
言うなれば、飛び方を知らない産まれたての雛鳥のようなものだ、俺は。
飛べるイメージが全く湧かない。
練習したら飛べる……と信じたい……。
だが、もし飛べるのなら。
空の見えない樹海と、空中からの俺の奇襲は相性抜群だ。
魔物や罠で地上に意識を割かせ、タイミングを見計らい俺が空中からの一撃で仕留める。
─── あれ、そういえばダンジョン内って真っ暗なはずなのに、なんで俺は普通に見えていたんだろう……?
「にゃーにゃー《る……あそ……》」
しばらく考え込んでいると、ルルが俺の膝の上にすたすたとやって来て、ちょこんと座った。
ヤバい。可愛すぎる。どうしよ。
「あー可愛いな〜。ルルは本当に可愛い。ごめんよー俺もルルと遊びたいけど、今はどうしても手が離せないんだ」
「にゃ…にゃー…《う……わ…た……》」
「ごめんよ。ルルを守るために俺頑張るから。安全を手に入れたら、思いっきり遊ぼうな」
「にゃー」
心なしか、ルルが笑っている気がした。
なんか、ルルの声が聞こえる頻度が上がってきている気がする。
それに、俺の言葉をルルの方も理解しているようにも感じる。
やっぱ、〈コミュニケーション〉は素晴らしい当たりスキルだと思うわ。
いや、マジで。
なんでこんなスキルが俺にあるのかはわからないけど。
これも管理者Lの仕業かな。
まぁ、どうでもいいや。
方針が決まったのなら早速行動に移そう。
時間も有限だしな。
俺は若干手を震わせながら、『樹海化[700]』という項目をクリックした。
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