JK、旅立つ時

山城炎上から、三日。

未だ、混乱の続く尼ヵ谷ではあったが、党首国仲を始めとする飛曾家人の尽力と、周辺諸国の助力により、少しずつ日常を取り戻しつつあった。


抜けるような青空の下。飛鳥はあの廃寺で、二つの墓標に手を合わせていた。体にはところどころに焦げ跡の付いた水兵服を纏っている。


「飛鳥さん。」


後ろからそっと、ひたきが声をかける。傍には、忠松の姿もあった。


「本当に、行ってしまわれるのですか。」


「……私はまだ、疑われる身上です。ここにいれば、邪魔になってしまう。」


飛鳥がそう言うと、ひたきが少しだけ俯いて涙ぐむ。忠松は支えるように、そっと手を添えた。


「心配せんでください。皆のお陰で、今度は剣生として旅立てる。いつか、きっと帰ってきます。」


そう言って飛鳥は、にっと微笑んだ。二人もまた、返すように顔を上げる。

やがて日の天頂へ昇る頃。飛鳥は傷だらけになった二輪に跨り、二人へ振り返った。


「では、。」


静かに駆け出す二輪に、ふたりは手を振って。

やがて、飛鳥の姿が少し小さくなる頃。忠松が駆け出して、声を上げた。

それは、松鶴組に代々伝わる木遣り唄。目出度き門出を祝う、朗々とした歌い声であった。


飛鳥はその声に、少しだけ惜しむように顔を上げて。

やがて、走り去っていった。

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JK侍必殺剣 - 妖剣うらみ胴の巻 加湿器 @the_TFM-siva

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