第3話

今日も夜ご飯はカレーだった。

出来立て特有の香り高さがない。1日後の方が美味しいというカレーの定説はやっぱり嘘なのだ。


部屋を片付けるにあたって、絶対に片付け以外のことをしないと固く誓わないと永遠に片付かないのは今朝で骨身に沁みた。ついでに凛。あの絶対零度の眼差しは一生忘れない。


さて、今度こそ。

と片付けようとしたところにノックが2つ。


ドアを開けると絶対零度の眼差しの凛がいた。



∆∆∆


「……ねえ」


「なに」


「今朝、何読んでたの」


「『ドキドキ☆文系女子と理系男子は付き合えるのか?』だよ。ほら、凛も知ってるやつ。私が勧めたことあるでしょ」


「うわっ、あれかぁ……美琴、あれ大好きだよね。私ちょっとわかんない」


ぬりぬり。


「あの面白さがわからないなんて人生の3.1415926」


「もうそれ何度も聞いた。あと桁ふえてるし」


「もっと言えるよ。3.14159265358979323846264338327950288」


「わかった、わかったから。……ちょっと頭痛くなってきた」


「なに、陣痛?」


ぺたぺた。


「美琴は頭で妊娠するのか。あと頭痛は美琴のせいだ」


「あ、そっか、あんた頭悪いもんね」


「うるさい! ほら、終わったよ」


「どうもー」


パタン。ドアが閉まる。と思ったら途中でそれは止まる。「あ、そういえば」


「またか、何?」


「昨日また美琴が病気治る夢見たよ」


「あ、それ私もみた」


「えっ嘘っ」


「本当だし。なんかゴミ箱が浮いてたりちょっとおかしい夢だったけどね」


「美琴、もしかしてエスパー?」


そういう凛の顔は少しだけこわばっていた。

もしかして、同じ夢を見ていたのだろうか?


「まあいいや、私この部屋久々に掃除するから出てって」


「あ、う、うん」


パタン。今度こそドアは閉まる。


さてと、今はまだ8時。片付けをするとしよう。



∆∆∆


結論から言うと、私の部屋はいくらかマシにはなったのかもしれない。私の固い意志により本は開かれることなく本棚へ、埃もただ払われるだけの存在になり、朝よりはるかに効率的に掃除をすることができた。

でもあくまでも「いくらか」であり、お世辞にもまだ綺麗とは言い難かった。

それに、部屋にずっといるせいか、筋肉がほとんどなく、何度も転んだりものを落としたりした。筋トレとやらも少しはやっておいた方がいいのかもしれない。幸いこの病気は紫外線が駄目なだけで運動はできるのだから。


時計を見ると時間はちょうど11時。疲れたしそろそろ寝よう。

筋トレは明日から、うん、明日から本気出す。絶対に。

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