第57話ウーゴ出発

「ここの中に奴はいるよようだぞ」


エブァンとイブリースは建物の前で2人を待つ


「俺が思っていた奴だといいのだが」


「ラシッドお前はもしかしたら勘違いをしているかもな」


「兄さんどういう事だ?」


「俺たちの元凶と考えている人物とお前が今日戦っていた奴と違うかもという事だ」


ラシッドは毎日戦いに明け暮れていた。自分が守れる人だけでもと思い守っていたのだ。その前線でトップに立つ奴を何度も見てきたからこそ、奴だと思っていたのだ。


「まさか」


「見てみればわかるさ」


キリウスはなんとなくそうではないかと思っていた、答えは簡単、昔からラシッドとは早とちりが多くこうだと思ってやるのだがことごとく違う。そんな弟だからこそ余計にそう思うのかもしれない。


「待たせたな」


「2人とも遅いぞ」


「勝手にスタスタ行ったのはお前たちだろうが」


「悪かったよ、それでここからどうする?」


「そのまま入ろうぜ」


「イブリース待て、その前にここを結界で保護しておこう。逃げる事が出来なくなるからな」


「よし、それは俺がやる」


「キリウス任せた」


「ラシッドは俺たちとくるか?それともキリウスの所にいるか?」


「え!」


「ラシッド行って来い、俺は大丈夫だ、お前もこいつらのこと見てみるいい機会だしな」


「兄さんが言うなら」


見てみたいと好奇心にかられてしまっていた。本来ならここはキリウスの所にあるべきなんだろうな。


キリウスが結界を貼り終えた。


これでいい。扉の前で待機していた


「では行くぞ」


「「ああ」」


バン!扉を蹴り飛ばして中に入った


「なんなんだ、お前たちは?」


「こいつが元凶だ」


目の前にいる人物はラシッドが普段から見ていた奴とは別人だったが、知り合いでもあった。


「おい、こいつが元凶な訳がないだろうが」


ラシッドが以前助けた奴だった。


「お前は知り合いだったか」


「こいつは俺が助けた奴らの1人だ。魔法が使えず、足にも傷を負っているのがわからないか?」


「ラシッドよく見てみろよ。あれが怪我人に見えるか?」


「!?」


「これは、動かせるようになっただけだ」


「ほー、ならその手にしているものはなんだ?」


そいつの手のひらに魔力を込めて握っているのがわかった


「これも今出来るようなっただけのことだ」


「そんなに簡単にできるように、治るようなものだったんだな」


「そう言う事だ、今度はこっちの質問だ。何しにここにきたんだ」


「俺たちはお前を捕らえにきた」


「ふざけやがって、そんな簡単に治るものではなかったし、魔力を使える訳がないんだ。ましてや2日ではな」


ラシッドが怒りで我を失いかけている時、外でキリウスがラシッドを見ていた。警戒が必要だった為外にいるのだが。


あいつはいつもだ、怒ると手がつけられなくなるからな。それでもあの2人に勝てるほどではないのか。冷静に考えてため息を吐きながらあたりの警戒を続けた



「おい、落ち着け。俺たちもわかっているからさ」


「これが落ち着いていられると思うか」


ラシッドの手に魔力が握られているのを見てイブリースが動いた。


「おい!」


ラシッドの首に刃物が当たり背後にいるイブリースがラシッドに恐怖を流し込んだ。


「!?」


「イブリースやり過ぎるなよ」


「わかっている。冷静になる程度にしてあるからな」


「それならいい」


「ラシッド落ち着いたか?」


「あ、あ」


その二文字の言葉を出すのがやっとだった。


「待たせて悪かった。大人しく付いてきてくれる気はないか?」


「俺が何をしたんだ?」


「そうか、お前は自覚していないのか?」


「イブリース、そうではない。自覚していないのではなく、あれで隠しているつもりなんだよ」


「なに!こんなお粗末なので隠しているのか」


「俺たちにはそうかもしれないが、こいつらには隠せていたようだからな。それなりに使えるようだぞ」


イブリースは品定めするかのように見ている。



なんなんだあいつら、怒らせてはいけないやつが目の前にいる。そう思わせられる程の恐怖が俺を襲った。


「イブリース、そろそろといてやらないとラシッドが固まっているぞ」


「あー、悪い悪い」


冷や汗を流して立っているラシッドから恐怖を解除する


「はぁ、はぁ、はぁ」


「イブリースやり過ぎだ」


「お前は一度死んだ方がいい。このままだといつか死人が出そうだ」


「お前と一緒にするな」


たく、またはじめやがったな。仕方ない中に入るか、いや待て。出てきたようだな。あれで教えてやるか


キリウスは、水を2人の間に浮かべた。



(おい、いい加減にしろ。マリー様が異空間から出てこられたぞ。それから先今みたいにしていれば)



!?


(大丈夫だ)


(ああ、わかっている)


(それならばいいが)


その状況を目にしていた奴は声も出せずにたたずんでいた


「それでお前は、捕まる気はあるのか?」


「えーと」


「どうした?」


「そんな気はないか?」


エブァンとイブリースがいいよる


「お前達は何を言っている」


「エブァン、こいつの闇引きずり出していいか?」


「構わないさ。その後誰がこいつと相手をするかだ」


「だからなんなんだよ」


「俺が」


「バカだろラシッドが敵うわけがない。そこで見ていろ」


「俺だって」


「そこまで言うなら、見てからにしろ。それでも勝てるというなら任せる」


「わかった」


「俺が言ってやる」


「わかった」


「キリウスもそれでいいか?」


「ああ」


「それなら始めるぞ」


瞬時に奴の闇に入り込む


《居た居た、それで隠れているつもりか?》


《誰だ》


《答えるつもりはないな。お前には出て来てもらわないといけないからな》


《出るわけがないだろう。そもそもここに入ってこられるんだ》


《そうかよ》


イージェスが闇に手をかけると


《何故だ?どうして触れる?なぜ前はここにいる?》


《それにも答えるつもりはない》


《時間だ》


イブリースが上に向かって投げつけた。その瞬間体の外へと出されてしまう


そろそろくるか。動かずに止まっている奴を見ていると


「きたようだな」


闇から戻ったイブリース


「出てくるぞ」


「わかっている」


奴の体が闇に覆われて姿を現した


「お前な、いい加減にしろ。殺してやる。どいつもこいつも、俺のジァマをしやがって。ここにいる奴らもそうだ、中央都市の王になる為に動いているのにお前らもみんな死んでしまえ」


体から闇が溢れてくる


「お、俺には無理だ」


ラシッドのか細い声が聞こえた。


化け物だ、こんな奴にどうやって勝てと言うんだ。


「おい、キリウス。ラシッドを守ってやれよ。俺らはこいつをなんとかするが守ってやるほど甘くはないからな」


「知っている。こっちはいいから。終わらせてくれ」


「わかった」


エブァンが緑で拘束し始めた。


「こんなもので俺を捕らえたつもりか」


炎で緑が焼かれた


「やっぱ無理か」


「おい、遊んでないで早くなんとかしろ」


「そうだな。なんか面倒になってきたからあれをやってもいいが」


「バカか?そんなことしたらここが大変なことになるだろうが」


「やっぱり」


「わかっているなら、違う方法にしろ」


攻撃をエブァンとイブリースに向けて放っているのだが全く効いていない


「それならお前の方が適任なんじぁないか?俺も奴を捕まえられるがさっきお前が言ったようにここら一帯全てが緑と化す。イブリースなら奴も闇だからもっと簡単だろうが」


「お前がやるっていうから譲ってやったのに」


「悪かったな。それならここら一帯緑とかしてやる」


手に緑を出し始めた


「わ!やめろ。その後がもっと面倒になるだろうが」


「あ?」


「悪かった。俺がやるから」


「最初からそう言えばいいんだよ」


こいつはイラつくと普通にやりそうだからタチが悪い、エブァンの事だ本気ではないにしてもやりそうだ


手の平に黒い球体が浮かび上がった


そんなことをしてても奴の攻撃が当たるのだが意味をなしていなかった。


「化け物!何も効かないなんて有り得ない」


恐怖に近いものが奴を襲う


イブリースは黒い球体を奴に向かって放った


奴のそばに来ると一瞬で黒い球体の中へと吸い込まれ消えた


「これで終わりだな」


「そうだな。後はラシッドと戦っていた奴らもついでに捕まえておくか」


「それもいいな。きっとマリー様が何か考えてくださるさ」


「なら、行くか」


「おい!」


「どうした?ラシッド」


「どうしたじぁない、奴はどうしたんだよ」


「捕らえた」


「はぁ?どこにもいないだろうが」


「奴自身が闇の中にいるだけだ。闇から出るには俺か、スルトが許可を出さない限り出ることは不可能だからな」


「そんな理不尽なことがあるか」


「これがあるんだよ。俺たちなんて可愛いもんだ」


「イブリースの言う通りだ。もっと理不尽なお方を知っている。あれを見てはな」


「そうだな、あれを見てはな。いや、見るよりもくらった方がきつかったか」


「そっちの方がきつかったな。そうそうなんせしにかけているからな。あの時は流石の俺も死んだと思ったよ」


「そう言うことだ」


「どう言うことだよ。理解に苦しむぞ」


「とにかくだ、捕まえに行くぞ」


「そうだな」


その後は早かった。エブァンとイブリース、キリウスは次々と攻撃していた奴を捕らえていった。


「これで最後だな」


こいつらの方が化け物だ。どんな魔法、物理が効いてないうえにいとも簡単に結界の中に捕らえられている光景を見せられている。


こいつらに勝てるやつなんているのか?


目の当たりしている光景を見ながら思うラシッド


「これでウーゴをここに連れてこれるようにはなったな」


「後は捕らえた奴らを城にでも連れて待機だな。明日一番で連絡を入れておけばいいだろう」


4人は城の大広間に到着し、捕らえた奴らを隅に置いてゆっくりし始めていた。


「そうだな、腹も減ったし何かないか探してくる」


「それなら、これがあるが食うか?」




川の向こう側を出る時


「これ良かったらみんなで食べてください」


そう言って渡されたのが食事だった



「これどうしたんだ?」


「出る時に渡されたんだ」


「渡された?」


「学民がみんなで作ったそうだ。今頃向こうでも食べているからだろうよ」


「エブァン早くそれを言え」


「言っただろうが」


「遅いんだよ」


「お前らな、少しは言い争いをやめられないのか?」


「これは言い争いではない」


「キリウスも言ってやれ。俺が言わなかったらこれは出てこなかったんだぞ」


「いや、俺は食べなくても平気だがな」


「バカか?学民の飯最近ではみんなの評価が高くてなかなか手にできないのがわからんのか」


「そうだな。俺たちが口にする前になくなっているからな」


「わかっているならなおさらだろ」


「そんなに美味しいのか?」


「ラシッドよく言った。うまいんだよ、どんどん上達しているみたいでな」


「御託はいいから食うのか食わないのかどっちだ」


「食うに決まっているだろうが」


「それなら座って食え」


「仕方がない、わかったよ」


4人は床に腰を落とし食事を始めた。


「うまい」


ラシッドが声を上げる


「そうだろう、俺たちのまちにうまい飯屋あるからな」


「なんか羨ましいな。今やここにはその面影も無くなっているからな」


「確かに俺たちが最初に来た時に比べると見るも無残な状況だからな」


「ここに来たのか?」


「かなり前になるがきたな」


「そうか」


会話が弾み夜が更けていった。



翌朝





「これからマリー様に連絡を入れるからな」


「キリウス頼んだ」


(マリー様、おはよございます。連絡が遅くなりました)


(キリウス、それでどうだった?)


(こちらは、今静けさを取り戻しましたが、城の周りは見るも無残な状態です。元凶となる者とそれを手助けてる者その他を捕らえておりますので一度マリー様も来ていただいた方がよろしのではないかと)


(そうなの修行もある程度終わったしそっちで適当にしておいてもらってもいいんだけどな)


(それでもいいのですが、適当と言いますと殺しそうなんですが、それでも構わないですか?)


(なんで殺すなよ)


(中央都市が状態が悪く、マリー様見てもらうと言う事で捕らえると判断したのです。それが適当となるとまたややこしくやりそうで指示を頂きたく)


(わかったわよ。そっちにウーゴ連れて帰るから、それに今ウーゴ誰が面倒見てるの?)


(はい、学民の者にお願いをしております)


(それなら大丈夫ね)


(はい)


(ウーゴ回復させてからそっちに向かうからお昼少し前ぐらいになるから、それまで待機ね)


(はい、皆にはそのように伝えておきます。それと)


(それとなに?)


(1人俺の弟がここにいます)


(誰かと思ったらキリウスにも弟いたのね)


(はい、ここに来たら改めて紹介いたします)


(わかったわ、しばらくそこで待機しててね)


(は!お待ちしております)


「マリー様よりしばらくここで待機していろとの指示が出たぞ」


「そうか、待っている間、俺たちがマリー様についた経緯とかを話してやるよ。昨日話す予定だったがそんな暇もなかったからな」


「兄さん悪いな」


「それに、外は静けさを取り戻しているし。争いもないからゆっくり話ができる」


「たしかに、都市全体が静かすぎるほどだ」


「イブリースの言う通りだ。警戒はちゃんとしているからゆっくりするといい」


「エブァンも警戒しててくれたんだな」


「当たり前だ。抜かりがないようにな」


「助かる」


ラシッドにキリウス、イブリース、エブァンが語り話を始めた頃



ーーーーーーー



「しょうがないわね」


「部屋から出て、ウーゴの元にやってきた」


コンコン!


「はい」


「入るわね」


中に入りウーゴに近づいた


!?


「ウーゴ体を見せなさい」


「え!」


「あーあ、ちゃんと見てあげればよかったわね」


「え!」


何が何だか分からず一言、言うだけだった


「このブレスレット、身につけていたのね」


「あ、はい」


「このブレスレットは確実に脱出できる代償に貴方の皮膚破壊される。使用しなくてよかった。これならなんとかしてあげりれるわ」


「も、もし使用していたら?」


「起き上がるのがやっとになっていたか、最悪生きるしかばねとかしていたわね。それと変なお爺さんに合わなかった?」


「変なお爺さんですか?」


そんな変なお爺さんなんていたか?確かにじじいはいたな


「えーっとですね。変ではないですが年老いた者には会いました」


「まだいたのね」


「え!」


「ふふふ、ウーゴ都市に帰ったらその者がいるところに案内できるかしら?もし遠いいようならまた今度にするけど」


「いえ、遠くはないですよ。城の中から出られずにいたので」


「そうなのね、ちゃんと守ってくれていたのね」


「もしかして……」


「ウーゴなにか知っているような顔をしているわね」


「それがですね……」


ウーゴは事の次第をマリーに聞かせた。


「だぶんそれは私だと思うわよ」


「やはりそうでしたか」


「もしかしたらと思ってはいたのです」


「その話はまた後で先にウーゴの体を治すわよ」


「はい、よろしくお願いします」


マリーが回復魔法を施し回復していった。


「ウーゴそのブレスレットは預かるわよ」


「はい、俺には要ありませんから」


ブレスレットを受け取ると2番目の異空間にしまった


「クオン、ファティマ、イージェス聞こえているわね」


(((は!)))


「ここを守っていてね、少しの間ここを離れます。何かあればすぐに連絡してきて。それと中央都市がある程度落ち着いたらエブァン、イブリースが先に帰ってきてもらう予定だから」


(わかりました)


(マリー様お気をつけて行ってきてください)


(何かあればこの身に変えても守ります)


「イージェスそれはダメ。ちゃんと自分も守ってね。そうでなければねぇー」


(はい!肝に命じます)


危ない。これ以上言ったらこっちがどうなることか


内心ヒヤっとしたイージェスだった


「それならいいわ、行ってきまーす」


魔法陣を展開して中央都市の城前に到着する


「マリー様からは……」


「これはウーゴが居なくなった後内乱でこうなってしまったのよ、昨日まではね。それを行っていた者は全て捕らえているそうだから、攻撃とかはなくなったようね。とりあえず中に入りましょう」


「はい」


城周りが廃墟と化していた。唯一残っていたのは城より離れて立っていた建物より奥の方だけどなっていた。


俺がちゃんと守ってやれていればこんな事にはならずに済んだんだ。


ウーゴを見るマリーは


「ウーゴ、これからよ。今からなにをするべきなのを考えないといけないわね」


このお方は俺が何を考えているのかをわかっているかのように声をかけてくれる、敵わないお方だ。


「その通りです」


「これから本腰を入れて頑張りましょうね。きっと前よりもステキな都市となるわ。それが今から楽しみ」


「ええ、もちろんです。いい都市にしてみせますとも」


「その域よ」


城の大広間に向かいながら話が進んでいった

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