第56話ウーゴ出発前夜
城の大広間に着いて、椅子に腰掛け着き一息いれた。
エブァンはまだ戻らないようね。
「ウーゴ、行く前に下準備をする必要があるのよ。今中央都市に行けば混乱がさらに増してしまう。そうならないように今エブァンとイブリースが手分けしてくれているから」
「そのような事をなさっているのですか」
「ええ、だから今はここで準備が整うまで待って。それに、ウーゴ完全に回復したわけではないでしょう」
「そ、それは…ですが動けます」
「動けても使い物にならなければ意味がない。完全に回復する方が先よ」
「マリー様にはかないませんな」
「わかったらちゃんと回復してて。回復が終わり、準備が整い次第ウーゴを送り届けるから。大人しくしていなさい」
「ですが、そんなに甘えてもいられないです」
「甘えではないわよ。仕事をしてもらうのにけが人では足手まといと言っているの。わかった?」
「はい」
マリー様も人が悪い。本当は心配をしているのにそれを言わないから誤解される言い方をするんだもんな。
キリウスはウーゴを連れて部屋に戻っていった。
「ウーゴ様」
「なんだ」
「マリー様はウーゴ様を心配なさっての言葉なんです。誤解しないでくださいね」
「キリウスも心配性だな。ちゃんとわかっている、そうでなければ俺は最初に出会った時に殺されていたよ」
「そうでしたね」
「とにかくちゃんと回復してマリー様の許可をいただかなければならん。話はそれからだ」
「わかりました、もし私でよければ見てきましょうか?」
「いやいい。それをしない方がいいと思うぞ。それにエブァン殿とイブリース殿が行っているのであれば手を出す方が足手まといになる事もある。必要なら連絡がお前に来るだろうよ」
「たしかに、今は大人しくしておくとします。ウーゴ様休んでいてください。俺はまちの警戒に行ってきます」
「そうしてくれ」
ベットに体を沈め休ませた。
やれやれ俺も焼きが回ったな。こんな事で回復しきれないなんてな。
ーーーーーーーーー
イージェスとイブリースを見送った後中央都市付近に身を潜めていた。
中の様子を見なければならんな。
本当だったらキリウスに頼む所が今ウーゴの世話をしていて手が離せないでいる。
マリー様に教わった花粉を試してみるか。
エブァンは花粉を中央都市が隠れるほどまで広げた。
おーこれは便利だ。今までのものとは格段に性能が上がってる。これならわかりやすいな。
状況は最悪だった。建物は破壊され、貧困に悩まされているものもあるのか。出る事も許されずにいるとは思っていた以上に厄介だ。
エブァンが花粉で民を監視し始めた頃イブリースは闇の中を歩いていた。
さてと、これはこれはここは俺の闇と変わらない輩が多いいな。
人の闇の中を渡り歩く事が出来るようになっていたイブリースはどんどんと進む。
一際闇が多いい奴の所で足を止めた。
なるほどな、こいつが原因なんだな。
(おい、エブァンいたぞ)
(どいつだ、俺に花粉をつけてくれればわかる)
(お前などうやって)
!?
「スルト、びっくりさせるな」
「すいません、イブリース様よりこの中に花粉を入れればいいとのことです」
背後に音も気配も花粉にも引っかからずに現れたのでびっくりした。闇に花粉が存在しないためだった。
「わかった、入れるぞ」
「お願いします」
花粉は闇の中を埋め尽くさんばかり入っていった。
「おい、これいつまで入れればいいんだ。かなりの数を入れているんだぞ」
「お待ちください。今イブリース様に確認を取りま…」
(ついたと思うぞ)
「遅い」
「バカを言うな。闇の空間はとてつもなく広いんだ。到達するまでに時間がかかるんだよ」
「そんなに広いわけがないだろうが」
「お前もバカだ、闇は世界を覆うほどこの中にあるんだ広いに決まっているだろうが」
「あ!」
「あ!ではない。とにかくやってみてくれ」
「今やる」
エブァンが意識を飛ばすと
いた!
(こいつか?)
(そうだ、そいつが元凶だ。そいつをなんとかしない限りここは止まらないな)
(他にはいないのか?)
(いやもう1人いる。そいつも同じだが)
(だがなんだ)
(そいつは闇が少なすぎるんだよ。ここにいる奴らよりも少なすぎるほどだ)
(普通こんな現状を見れば闇はますはずなんだが、何というか別の何かを持っているような。そんな感じなんだよ)
(それなら、先にそいつにあった方がいいかもしれないな)
(そうだな)
(それでしたら俺が先に行って接触した方がいいですか?)
(スルトお前、闇から出られないだろうが)
(そういえば)
(今俺が闇をお前にまとわせているからそこにいられるんだぞ、しかもエブァンでなければ気がつかないんだからな。立場を考えろ、お前が闇から抜け出したらここを誰がみるんだよ)
(申し訳ありません)
(いい、お前は闇で待機しててくれ)
(わかりました)
キリウスの水は便利だ。俺たちの間の会話は全てそれで補える。キリウスがいなくても大丈夫って事なんだよな。俺もそれ欲しかった。そう思いながらイブリースはそいつの元に向かった。
後を追うように木々がある場所に移動する。緑がある場所であれば移動は簡単に行えたのだ。
中には入れたが少し遠いいか、走って向かうしかないな。ここから先木々がないからな。
エブァンはイブリースの所まで走った
夕方日が沈みかけた頃1人の男が部屋の一室で椅子に腰掛けていた。
くそ、今日もこの内乱は終わらせることができなかった。今日こそと思えば思うほど、とうざかっている気がする。
天井を見上げながらため息をついていた。
「疲れた」
コンコン!
誰だ、こんな時間にくるやつなんていないはずだ。
「何者だ」
ドア越しに男は尋ねる
「俺はある方から頼まれてここにきた」
「誰だ」
「信じてもらえるのだったら答える」
「信じる何も言わなければどうしょうも無いだろうが」
「そうか、それならウーゴと言えばお前はわかるか?」
!?
部屋の扉が勢いよく開いた。
「中に入れ」
目の前に魔法陣を構えた状態で出迎える
「わかった」
気にも止めずに中にはいる
「それでウーゴ様に何を頼まれた」
「その前にその魔法陣を解除はしてもらえないのか?」
「簡単に解除できるわけがない」
「俺が本気になればお前は赤子同然なのがわからないのか。人間は難しいな」
コンコン
今度は誰だ
「そこで待っていろ」
「ああ」
「誰だ」
「先に俺の連れが伺っていると思うのだが」
「なんだと」
「エブァンか?」
「そうだ」
「すまない、俺の連れだ」
「次から次へと」
男は部屋の扉が開く
「遅くなった」
「それでどこまで話したんだ?」
「いやこれからだった所だ」
「そうか、話の続きをする。中断して悪かった」
「話を聞かせてもらうがウーゴ様からの頼まれごととはなんだ?」
魔法陣を張っている状態で話が進んだ。
「ウーゴがここに戻るのに体制を整える必要がある」
「ウーゴ様が生きておられるのか?」
「そうだ、今我々が回復させている最中だ」
「その証拠を出せ」
「証拠か、エブァンあるか?」
「それならある。キリウスを知っているか?」
「兄貴を知っているのか?」
「勿論だ、ここに来てもらえば証拠になるか?」
「本当ならな。兄貴はそう簡単に姿を見せたりはしない。よっぽどのことがない限りな」
「何故それを言い切れるんだ?」
「当たり前だ、兄貴はウーゴ様の側近なんだからな。影で支える役目を賜っている。それが簡単に姿を見せて言い訳がないだろうが」
「それがわかっているなら、話は早いな」
「少し待ってくれ」
「何をする?」
魔法陣に魔力が込められる
「今からキリウスがここに来るように伝えるだけだ」
「だから、来るわけがないと言っているだろうが」
「もし、来なかったら俺たちをその魔法陣で攻撃してくれて構わない」
「いいんだな」
「それでいい」
魔力が込められる攻撃をすぐにできる状態になったのを確認すると
「今から呼ぶぞ」
「やってみろ。どうせ来ない」
キリウスの弟はすぐに攻撃できるように待機をした。
(おい、聞こえるかキリウス?)
(どうした?)
(悪いがここに来れないか?)
(何があったか教えてくれ)
(お前の弟だと言う男が目の前にいる。そいつがここにお前を呼べば納得すると言っているんだが本当にお前に弟がいたのか?)
(弟はいる。だが)
(だがどうした?急にいなくなったきり、行方が分からないでいるんだ)
(聞いてみる)
「おい、お前の兄貴が急にいなくなったっきり行方が掴めないと言っているのだが?お前は本当に弟なのか?」
「そうだ、それを証明することはできないがな。俺がいなくなった事を知っているのはここにいるこの地域の奴らだけだ。ここから早くに出て行った奴らから聞き出した事ぐらいお見通しだ」
「お見通しで結構。これから来てもらうのにわざわざ嘘を吐いても仕方がないからな。それでどうなんだ?」
「たしかに昔失踪していた。最近になって帰ってきてみればこの有様。ウーゴ様は捕まるは、キリウスはどうしたかそればかり考えているんだ」
「疑っているんだな」
「当たり前だ」
(こいつ頑固だぞ、さっさと来てくれ。面倒になってきたぞ、我慢にも限度があるからな)
(すぐに向かう)
「もうじきここに来る」
「お前自分が殺されたくなくて嘘をついているんだ」
「どうしてそれを嘘だと言う?」
「うるさい黙れ!」
こいつらに何がわかる。兄貴は死んだ。ウーゴ様が捕まった時点でな。俺がその時ここにさえいればそんな事にはならずに済んだんだ。2人力を合わせれば何とかなったんだ。それなの俺はここにはいなかった。クソクソクソ!!
そんな思いをよそに
「イブリース水はあるな」
「ああ」
「お前何をするんだ」
「お前の兄貴が来たから水が必要なんだよ」
「それ以上動いてみろ攻撃をしてやる」
「そうかよ」
御構い無しに蓋を全て開け終わるとキリウスの弟と名乗る男が攻撃を放った。
目の前で爆風が吹き荒れ辺りが好き飛んだ。
「危ないじぁないか、建物の中で魔法陣なんて発動するなよな、ラシッド」
煙が晴れて、キリウスが姿を現した。イブリースの前にキリウスが来た時目の前に魔法が発動していて攻撃が開始したので慌てて防御魔法を展開し相殺した結果が今の現状となる。
「本当にキリウス兄さんなのか?」
「そうだ、どうするんだ。建物なくなっただろうが」
「それはいい、偽物じぁないだろうな?」
「兄の顔も忘れたのか。勝手にいなくなったしたくせに疑うとかよく分からんぞ」
「それならキリウス兄さんと俺だけが知っている言葉はなんだ」
「ラシッド、あれ本当に探しに行ったのか」
「いいから答えろ」
「あの時ラシッドと俺が欲しがっていた物、約束をしたあの時からかなりの年月が経っていた。そうか、お前はそれを探しに旅だったのか」
「知らないんだな」
「知っているさ」
「なら答えろ」
「水の輝きを手にする」
「本当にキリウス兄さんなんだな。誰も信じてくれなかったのにキリウス兄さんだけがあの時信じてくれた。だから俺はキリウス兄さんが嘘つきにならないように旅ができる年にここを出たんだ」
「そうだったのか」
「これだけ探したのに結局見つからなかったよ。ないんだと諦めてここに戻って唖然としたよ。知り合いは全て死んで死体の山済みに積まれていたよ。それでも兄さんがいるんではないかとずっと探していたのに、ウーゴ様が捕まったと聞かされた。捕まった時点でキリウス兄さんは死んだと思っていたよ。側近がウーゴ様を守らないわけがないからな」
「心配をかけた」
「そうだよ。でも俺も何も言わずに兄さんの前からいなくなったわけだしお互い様だな俺たち」
「そうかもしれん」
顔を見合わせ苦笑いする2人に
「昔話はその辺にして、本題に入りたいのだが?」
「悪いな、イブリースの言う通りだ」
「構わないさ、久しぶりの再会だ」
「助かる、それで今回俺たちがここに来た理由、それはウーゴをここに戻すことが目的だ。ただこの内乱を一時的でもいいから納めなければならん。そこで元凶となっている奴が誰なのかを見つける必要があった」
「そいつなら、あいつしかいないだろうな」
「ラシッドは知っているのか?」
「多分だが奴だと思う」
「その事なんだが、イブリースと俺がここに探りを入れた時に1人の人物の目星をつけて、監視をしている最中なわだがその前にお前に接触することにしたんだ」
「そうだったのか。そんなこと知らないから攻撃をしてしまった。申し訳なかった」
「気にはしていない。もし俺たちがお前と同じであったら間違いなく殺しにかかっていたぐらいだからな」
さらりと恐ろしい事を言ったような
「うまく接触できたわけなんだが、ここからが本題だ。元凶を殺すつもりではいるんだが、その前にあるお方に合わせなければならないと俺たちは考えている」
「あるお方?」
「ああ、マリー様だ」
「イブリースが言っているマリー様は俺たちの主人。マリー様はどんな奴であろうと殺しを好まない。そこでマリー様に合わせてどうするかを決めてもらうことにしたんだ」
「あんな奴、死んで当然な奴なんだぞ」
「それでもだ」
「そもそもそのマリーという奴が何で………」
「くっ!にい、さん?」
瞬時に動き、ラシッドのクビにナイフを突き立ていた。キリウスが動かなかったら、エブァンやイブリースが動く所でもあるがキリウスの方が早かった。
「お前次マリー様を呼び捨てにしたらいくらお前でも容赦はしないからな」
「ど、うしたんだ兄さん」
「どうしたんだではない。俺の主人は今マリー様だ。呼び捨てにしていい奴などこの世にいない」
「兄さん」
何故だ兄さん。マリーとやらにそそのかされているのではないのか?
「その話ここが終わったらゆっくりしてやる。今は付き合ってくれ」
兄さんにも考えがあるって事か。
「わかったよ兄さん」
「とにかくだ、そいつを殺さないで捕まえて、ウーゴをここに呼び戻す」
「お前らもさ、ウーゴ様を呼び捨てにするなよ」
「俺たちはいいんだよ、ウーゴも一応マリー様の配下に加わっているんだからな。ウーゴも俺たちも仲間というわけだ」
「何だよそれ、全く状況がつかめないぞ」
「その話は、そいつを倒す前にこれから教えてやる」
「兄さんまで」
何がなんだか理解できないぞ。俺の知らない所で何があったんだよ。
「時間もない、今から行って捕まえるぞ」
「はぁー今からか?」
「そうだ、マリー様が修行を終える前に終わらせて明日一番でここに来られるようにするんだ」
「ちょっと待ってくれ。簡単に倒せる奴ならとっくに内乱は終わっているんだ。それができないから、ここ数ヶ月苦労しているというのに」
「ご苦労だったな。俺たちが来ればこれもすぐに終わる。その為にここに来たからな」
どこからその自信が来るんだ。
「話は終わったから行くぞ」
「本気だったのか」
「冗談を言えるほど暇ではないからな」
「頭が痛くなる」
「移動しながら説明してやる」
「行けばいいんだろう」
「そうだ」
「それに後4時間もすれば闇が来る。そうしたら動くことができなくなるんだぞ」
「そんなことはない」
「イブリース、それはお前だけだ」
「ふふふ、今日マリー様が漆黒の闇を教わった。そのおかげでお前たちも闇であれば動けるようになったと言ったらどうする?」
「なんだとそんな事出来るようなったのか」
「ああ、さっき発見した。人の闇を渡り歩いていた時にもしかしたらと思って試したんだよ。その辺に転がっていた死体だな」
「お前そんな暇があるなら、ここに早く来れただろうが」
「それを言うな。そのおかげで闇でも動けるようになるんだ」
「仕方ない。今回はいいが次したら、イブリースお前半殺しだぞ」
「お!望む所だ。いつでも受けるぞ」
エブァンとイブリースが火花を散らしている
「おい、エブァン、イブリースいい加減にしろよ」
「「ふん!」」
お互い背を向けた
「今そんな事をしている場合ではないぞ。このままだとマリー様の耳に入るまでにはそんなに時間がないからな、異空間から出たら間違いなくお前たちのいがみ合いは筒抜けになる。その前にそれをやめたほうが身のためだと思うぞ」
慌ててキリウスを見て
「俺たちは大丈夫だ。そんな事はない」
「そうだ、さっさと行くぞ、イブリース」
「わかっているエブァン」
スタスタと奴の元へと向かっていた
「全くいつもこうなんだからな。疲れる」
「なんだあいつら仲が悪いのか?」
「いや、悪いわけではないが、よくもないと言った所だな」
「不思議な奴らだ」
「そうだな。そもそも、悪魔と緑がくっついているのも不思議な事なんだがな」
「あ、悪魔だと」
「あーラシッドは知らなかったな。イブリースは悪魔だぞ。エブァンは緑だ。付け加えるならイブリース元王だな。エブァンもだ」
「どんな大物がここにいるんだよ」
「それはマリー様に聞いてくれ。俺がマリー様と知り合った時には2人を引き連れていたからな」
「そのマリー様だったか?何者なんだよ」
「さー」
「さーって」
「俺から言えることは、ここにいる奴らよりも強いということだけだ」
「なんか次元が違う気がしてきたぞ」
「あいつらに任せれば、大抵の事は終わりを告げる事が多いいな」
「これから、実際にあいつらの戦いが見られるからたのしみにしてるといい」
「兄さんは戦わないのか?」
「俺は足手まといになるだけだ。見てる方が楽しいさ」
そんな会話をしながら奴の元へと皆で向かったのだった。
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