第54話エブァン修行


大広間の椅子に腰をかけてお茶を飲んでいた。一息つく事にした。


「うーーーん」


体を伸ばして次を誰にするか考えていた時


「マリー様」


「どうしたの?エブァン?」


「もし、次だれか決まっていないのであれば出来たら俺が行きたいのですが」


「なぜ?」


「これからウーゴを中央都市に返すのであればそれなりの準備をしておきたいのです。それで先に終わらせていただければ準備も早いのではないかと」


「なるほど、ウーゴが当分動けないと思うわよ。キリウスの魔法、あれの反動が大きくてこないだ動けたのが奇跡みたいなものだったからね。気力で頑張っていたみたいだけど」


「はい、あれ以来体を動かすだけでもかなりの苦痛をしいられております」


「それなら尚更ね。当分無理ね」


「はい、その間に準備を整えておく必要があると思いました」


「エブァンに任せるわ」


「ありがとうございます」


「もうすこし休んだら、先にやりましょう」


「はい」


ゆっくりと体を休めていると


ドーン!


マリーが腰をかけている椅子の上で宙に浮き、ポフ!と座る。


!?


「違うわよ、断じて違う。私がそ、その。お、おならなんてしていないんだからね」


あーなんかすごく恥ずかしい。なんで


「分かっています。外で何かあったようですね」


やめてよ。もう少しゆっくりしたかったんだけど。


渋々外の様子を見に行く事にした。


「なにこれ?」


城の前に巨大な岩があった。


「岩ですね」


「見ればわかるわよ、そうじぁなくてどうしてここにあるのかを聞いているのよ」


「そっちですか」


「エブァンあなたね」


「この岩が向こうの方から飛んできたんです」


配下の女性が教えてくれた。


「あっちって」


「クオンがある方ですね」


遠くの方からクオンが走ってきた


「すいません、配下とやりあっているうちに受け止めきれずに飛んで行ってしまったんです」


「あなたね、危ないから岩飛ばすのやめなさいよ」


「受け止めるはずだったんですが手が滑ってしまって」


「いい、岩を飛ばすのだけはやめなさい。と言うかそもそも飛ばすのをやめないとこっちに被害が出るんだからね」


「はい、申し訳あり!?」


ゴン


「あ!」


「最初から言い訳なんてするな」


それ、私の役目な気がするんだけどな。


エブァンに怒られる殴られたクオンはしょぼくれていた。


少しぐらいいいではないか、ケチだな。


「わかりました」


拗ねながら答えた。


「なんで岩を投げ飛ばしていたのよ」


「それは、配下に俺が高速で岩を投げてそれを配下が受け止めて投げる反射神経を鍛えるのにいいと思ってやったんだが100回目過ぎた時に手が滑ってここに飛んできてしまったんです」


「なるほどな。だからといってそれをしたらこうなることぐらいわかるだろうが」


「そうならないと確信してやったいたんだが、間違っていたな」


「それなら気をつけてね、次は…」


「マリー様わかっております」


さっき腹に穴が空いたばかりだ。同じように穴を開けられてたまるか


「それならいいわ、それと岩持っていったよ」


「はい、もちろんです」


クオンは岩を持って森へと姿を消したのだった。


「エブァン戻るわよ。もう少し休む事にするわ」


「わかりました」


早く次の仕事に取り掛かりたいというのにあいつのせいで修行が遅れたではないか。今回は見送りにした方がいいかもしれんな。


考えがまとまった所で大広間に到着したのだった。


「もークオンのせいでお茶冷たくなってるわよ」


「マリー様今入れ直します」


「もういいわよ、エブァン修行行くわよ」


「休まらないのですか?」


「このままだとエブァンがやりたい事できなくなっても困るでしょ」


マリー様はお見通しなのだな。


勝手に思い込むエブァン、だがマリーにとっては早く終わらせて美味しいお茶を飲んでゆっくりしたいだけだったりする。


冷たくなったお茶を飲み干し異空間へと向かった。


「エブァンは花粉を操れるんだったわね」


「はい、俺は緑全般を大抵できます。出来ないとすればフロンツメーがやっている生み出す力がないだけです。あればフロンツメーの特殊スキルである為です」


「たしかにフロンツメーには生み出す特殊なスキルがあるわね。あれ欲しいんだけど私にはそれは無理なんだよね。緑特有みたいなのよね」


「マリー様でも無理なんですか?」


「生み出せたとしても、その後は枯れちゃうわね。フロンツメーはそこからさらに育成していくんだよ。私だと出来なくわないけど魔力がすごく持っていかれるから無理、出来たとしても動けなくなるのは間違いないわよ。だから私にとっては出来ないわ」


「マリー様でもあるんですね」


「当たり前でしょ、いくらなんでも出来る訳ではないわよ」


「それならもし魔力があればできるんですか?」


「魔力があればね」


「それって、出来るって事になりませんかね」


「ならないわね、そもそも出来るとは出来て維持が出来なければできたとは言えないもの」


「そう言うものですかね」


「そう言うものなの、できても動けなくなってしまったら意味がないでしょ」


「それもそうですね」


出来るという事にエブァンの中では確定した。


マリー様に言わせれば出来ないとなるんだろうがな。


「そろそろ始めましょう、エブァン花粉を少しだけ出して」


「はい」


エブァンの周りに花粉が舞い始める。ふつうに見れば全く見えないのだが、マリーは目に特殊な魔法陣を貼って見えるようにしていた。

マリーから見たら靄がかかっているように見える。


「花粉少しもらうわよ」


「はい」


マリーがつま先をトントンと地面を叩くと魔法陣が姿を表した。


マリーは花粉をその魔法陣にかけると反応を示し魔法陣が花粉もろとも消えた。


花粉を魔法陣にばらまいて、え!消えた全て。


「マリー様今何をなさったのですか?」


「今のはエブァンの花粉を大量に出せるようにしたのよ。さっきの魔法陣を出すとここの空間が埋め尽くされるくらいの量がさっきの魔法陣から飛び出るの」


そんなに簡単に花粉を出されても困るが、今マリー様が花粉をばらまいたのはほんの僅かなのだが、それがどうして大量になるんだ?


「どうやって増やしているんですか?」


「あの魔法陣は、量魔法。少しのものを大量に出せるやつなの。でもねこれには欠点があって小石以上の大きさのものは出来ないのよ」


「どうしてです?」


「それはこの魔法陣が耐えきれず壊れてしまうからなの。魔法陣そのものを強化することも可能だけどそれでも出てくる量が凄すぎて無理ね。だから使う時選択を誤まらないことが大事なのよ」


「量を調整するのは無理なんですか?」


「それだと質が落ちてしまうのよ。一つのものが魔法陣を通過する時に約束10個ぐらい出来るんだけど、その物の性質を変えずに出すには速度が必要なのその速度を落とすと同じ物が出来ずに出てくる。別の何かになるわけ、ある程度の速度を維持するとどうしても量が調整できなくなる。かといって速度を落として量を調整すると違う物が出来る。速度か、量の調整かどちらかしか出来ないのがこの魔法陣の欠点になるのよ」


「難しいんですね」


「そうね。でも量だけを増やすのであればこれでいいのよ」


トントン!


話している最中に花粉を出し始めた。


「その花粉をどうするのですか?」


「これはね、今エブァンが出せる花粉の量を倍増して、追跡と感知を兼ね備えた物にしようとしているのよ」


「それ俺出来ますよ」


「ばかね、その感度をよくするのよ」


「なるほど」


終わったね。


「エブァン、花粉でここの空間を満たして」


「はい」


マリー様がばらまいた花粉と俺が出した花粉をどう!?


「気がついたようね」


「これはどういうことですか?」


「私の花粉はね、特別性なのよ」


「ですが、これだと気がつかれるのでは?」


私の花粉には追跡、感知、撹乱、錯覚全てが入っていた。


「ふふふ、ほら始まったわよ」



「何が始まっ!?」


エブァンの花粉と私が出した花粉が合わさり、弾けてさらに細かくなっていった。


「あのー」


「どうしたの?」


「これ完全に見えないんですが」


「エブァン貴方なら見えるはずよ。いつものように花粉を感じるように花粉を感じるのではなく緑を感じるように切り替えてみて」


「はい」


その瞬間全てが感じるようになった


「どう?」


「これはまたすごい量ですね」


「ええ、今感じている花粉を同じようにエブァン花粉として体に取り込んでみて」


エブァンは手を前に出しすとそのまま空間内の細かくなった花粉がエブァンに戻った。


エブァンはその場に崩れ跪く。


「くっ!」


「やっぱり、反動が来たみたいね。それでもそれを耐えきれば花粉はキリウスの物になるから頑張って」


「は、、、、い………」


目の前で冷や汗をかきながら耐えるエブァン、マリーは何かあった時のために水究極回復魔法を手の平に練りこんでいた。


なんなんだ体が熱い、溶けてしまいそうだ。これを自分のものにしろとマリー様は言うがどうやってするんだよ。


内心で、もがいていると体の周りに水の幕が覆っていた。


まずいわ、エブァンの体がこのままでは耐えきれずになくなってしまう。


手の平で練っていた魔法をエブァンに施した。体の中の熱が水に奪われ下がっていく。体の中傷ついているのが治っていくわね。これで後は本人次第、頑張ってエブァン


顔を上げたエブァン


「マリー様これは?」


「後で説明してあげるから、自分に集中して」


「わかりました」


とにかく集中すればいいんだな。


体が熱いのが和らいだお陰で集中できるようになった。


集中していると


あれなんだ?


体の中に一つの光が見えた。それに手を伸ばすと体中に染み渡るように花粉が入り込み、視野が遮られたが、急に視界が開ける。開けると視野に映ったのはマリーの顔だった。

目をパチクリと数回繰り返しここが現実なのかを確かめ、現実と認識するのに少しかかった。


「あのー」


「戻って来れたようね」



不思議そうにマリーを見るエブァン


「エブァン今貴方が集中していた体の中に花粉の世界が広がっていたのよ、花粉の世界は誰もが開ける場所ではないから、もしそこに足を踏み入れてしまったら出られなくなるの、でもエブァンは抜け出した。よかったね」


「何がよかったねですか、俺返って来れなかったらどうしたんですか」


「どうしよう」


考えてなかったな。


「どうしようではありませんよ。誰がマリー様のお世話をするんですか」


「大丈夫と確信していたからやったのよ。信頼の賜物!」


「信頼の賜物なのは嬉しいですが余り買い被りしないでくださいね。俺だって無理な事はたくさんあるんですから」


「本当にダメな事をさせる事はないわよ」


なんか、褒めて、けなされた気分だ。


「それならいいです」


「エブァンが手に入れた花粉をここの異空間全て埋め尽くしてみて」


「わかりました」


花粉を異空間全てにばらまいた


「できました」


「体の中と花粉を意識してて、私が動くからどうやって通ったかをエブァンがたどって来て」


「はい」


「始めるわね」


マリーは花粉が舞う異空間を移動し始めた。それを追うのはエブァンマリーの速度が早すぎて目には追えずにいたが不思議とその痕跡がわかり辿ってマリーの待つ場所にたどり着いた。


「どうだった?」


「マリー様に追いつく事は出来なかったですが痕跡が手に取るようわかりました。マリー様についた花粉を追うことができました」


「ちゃんと出来たようね。ふふふエブァン貴方やっぱりすごいわ。普通は1ヶ月ほどかかるのにほんの数時間なんて驚きよ」


「褒めていただいて光栄です。マリー様の教え方がうまかったんですよ」


「それはないわね、エブァンは元々の素質がものを言ったのよ」


「そうなんですかね」


「そうよ、追跡自体が難しいのを普段から使っていたのだから更に今回もそれの応用し使いこないだわけなんだからね」


「よくわかりましたね」


「ふふふ」


「そろそろ出ましょう、次が待っているんだから」


「わかりました」


「エブァン、出たらお茶用意して一息入れたいわ」


「わかりました」


2人は異空間を出て大広間の椅子に腰変えたのだった。


「なんか疲れちゃった、数時間で3人はきついわね」


「残り3人の相手が残っておりますからね」


「それ言わないで、3人もいるよ」


げんなりしていると、エブァンがお茶を持って来てくれた。


「ありがとう」


「いえ」


お茶を飲んでホッとしていると慌ただしく大広間の扉が開く


バン!


「エブァンいつまでかかっているんだ、次は俺の番だぞ」


姿を現したのはイブリースだった。


「そんなに慌ただしく扉を開けるな」


「悪かったな、こっちは待ちくたびれていたんだ」


「たかが数時間だろうが、そんなにカリカリするな」


「待ってる方は、カリカリもするだろうが」


「仕方のないやつだな」


「少しはマリー様を休ませる時間が必要だろうが」


「それはわかるが」


マリーは2人の言い争う姿を楽しみながらゆっくりお茶を飲んでいた。


「マリー様も少しは言ってやってくださいよ」


「え?なにを?」


これは聞いてないな


「いえ、少し休まれたてからイブリースの修行に付き合うのですよね?」


「ええ、少し休ませてほしいわね。せめてお茶を飲み終わるまではね」


「そういうことだ、少しはマリー様の事も考えてやれ」


「わかった、ここで待っている」


「イブリースがいるなら、俺は準備に取り掛かるここはお前に任せたぞ」


「なんだ、お前はさっさと済ませて気楽なもんだな」


「お前な、俺にはやることがあんるだ。あとでお前も手伝え」


「なんで俺が」


「あら、イブリースは手伝ってあげないの?」


こういう時は聞いてるんだな。


「えーとですね。俺がやっては足手まといになるのではないかと」


「そんな事はないわよねエブァン?」


「はい、もちろんです」


このやろう、手伝わせるように仕向けやがって。面倒だろうが。


「だ、そうよ。修行終わったら手伝ってね」


「はい、仰せのまま」


くそ、余計な事増やしやがって


うまくいったな。あいつはすぐサボりたがるから目が離せない。


お茶を飲み終わると


「イブリースそろそろ行くわよ」


コンコン扉が開き、中に入って来たのはイージェスだった


「どうしたの?」


「その修行、一緒にできませんか?」


「どうして?」


「その方がマリー様の負担が少ないのではないかと思いここに来たらちょうど行くところだった」


「それは構わないけど、イブリースは?」


「俺は構いません」


「なら、決まりね」


「「は!」」


「エブァンここは任せました」


「は!」


2人は異空間へと向かう。


マリー様は大丈夫だろうか。かなりの短時間でこなされているのだが、そもそも不思議なのは、あの異空間に入ってから1時間も経っていない事だ。それに気がつくやつが俺のほかに今入っていったやつの他キリウスも気がついているはずなんだがな。何も言わなかったな。それとも口止めとかされているのだろうか。いやマリー様に限ってそれはないな。教え導くわけだから聞いていれば教えているに違いない。まー、ファティマは間違いなく気がつくだろうしどうなっているんだ。


そんな思考を考えながら準備へと向かうのだった。


「まずはイージェスからね」


「俺からですか?」


「どうしたの?何か不都合でも?」


「いえそんな事はありません」


イブリースがどう教わるか見てみたかったのだがな。


「もしかして、見たかったとか考えていたのかしら」


!?


「その顔は当たったみたいね」


「いえ、その………」


「なんだそんな事か、今度見せてやる」


「ごめんね今回イブリースは漆黒の闇を教えてあげるのよ。だからその中にはイージェス貴方は入れないわよ。もし入った飲み込まれてそこから出る事が出来なくなるの。だからごめんね」


「わかりました」


バレてしまったか。まーいいかイブリースが見せてくれるというのであれば。


「イブリース私の結界に入っていてね」



「不思議そうね、このままいてもいいけど溶けるわよ」


!?


「とける」


「ええ、いくら闇でも熱には敵わないわよ。イブリースの体なくなちゃたら闇から出られなくなるわよ。それでなくても私の魔法を維持する大変なんでしょ?」


「今では大変ではなくなって自然に維持できるようになっていますが、一からとなると面倒です。なので中に入ります」


「その方がいいわ」


中から見ていればマリー様が言っている事が分かるだろう


イージェスの修行が開始される。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る