第53話クオン修行

キリウスと実戦を行う前にクオンを呼び出しておいた。


2人は異空間の扉から出てくるとクオンが待機していた。


「クオン、おまたせ」


「いえ、俺も今来たところです」


「それなら良かった」


「行くわよ」


すれ違いざまにキリウスに一言聞いた


「殺られたか?」


首を縦にコクンと頷いた。


そのまま中へ入って行った。


パタンと扉が開くと同時に他の配下がキリウスの元にやってきた。


気配を察知して仕事の途中で抜け出してきた。


「おい、大丈夫だったか?」


「いや、殺られたよ。気が付いた時には殺られていた」


「やっぱりか」


「今日のは俺が一言言わなければよかったんだ」



「それがな、しっかりと魔法を教えてもらいコツを掴んだところで終わりだったのだが、集中し過ぎて時間が経つのを忘れてやっていたから早く感じてな。もう終わりですかと言ってしまったんだ。その後が悲劇だったよ」


「キリウス余計な事を言ったな」


「俺も一度は断ったが許されなかった。あのニヤついた笑顔を見たら無理だと悟った」


「あれ、見たのか」


「あれ?」


「マリー様がニヤついた笑顔を見せると逆らえなくなるというか、言うことを聞かないとダメだと言うか。なんとも言えない気分になるんだよ」


「そうそうなの?私の時はそんなことなかったわよ」


「常に笑顔でぶちのめしに来たからよくわからない」


「恐ろしい事を普通に言うのを辞めてくれ。俺たちが変みたいに聞こえてくる」


「そんな事ないわよ」


こいつも変だったな


配下の会話が扉の外で繰り広げられている頃、クオンが到着したのだった。


「始める前に、人間の時の威力と猛獣の時の威力、部分だけ猛獣とか出来るかやってみよ」


「部分?」


「例えば手だけ猛獣とかにする」


「無理ですって支えられずにいますよ」


「使い方次第でしょう?」


「足だけとかは?」


「上半身切れますよ」


「それじぁー片足だけとか」


「もう足以外残らないですってば」


「やってみようよ」


マリー様の目が輝いている。絶対に楽しんでいるよな。


「はぁー、わかりました。どうなっても知りませんからね」


「うんうん、早く」


ダメだ。俺おもちゃにされているよな。足だけやってみるか。


ドン!


おかしな事になっているぞ。足だけでかくなってそれより上が人間とか変だろ。バランス悪すぎ


「そのまま走ってみてよ」


「走るんですか?」


「はやくー」


あーーーーこうなったらやるしかない。


ふつうに走ったらあれ?案外いける?もう少し早くしてみるかな。

これ以外にいいかも、格好は悪いけど。最高速度まであげたらどうなるかな?


クオンが速度を最高速度まであげた途端体が耐えきれずに


ブチブチ!?


「くは!」


無理だった。


体の上半身が切れかけそのまま倒れた


「クオン、やり過ぎよ」


それマリー様が言うか?


「くっ!」


「今、回復するからね」


死ぬかと思った。


「次はね」


え!まだやるの?驚いた顔のクオンに


「やるわよ」


「無理ですって今のでわかりませんか?」


「なんでも試さないと」


「いや、今試しましたよ」


「足はね」


「足だけで充分です。他も無理なんですから」


「やりましょうよ、ね。」


俺、何回死にかけないといけないんだ。勘弁してくれ


「ほら。次は上半身ね」


仕方なくやってみたが、思った通り足が潰れた


グシャ!


「ぎゃー」


「これもダメなのね」


マリーが回復しで治す。普通は治らないのだがマリーだけが治せる。物達から知識を教わっているおかげなのだ。


「今度は、手ね」


はぁー


手がでかくなりクオンの体が宙ぶらりんになった。


「これいいかも、両腕にしたら?」


「こうですか?」


体が宙に浮いているな。足と大差変わらないか。


「どれもいいのがなかったわね」


「さっきからそう申し上げているんですけどね」


「何か言ったか?」


「いえ、何も」


マリーは次に何をするか考えていた、魔法で補う形でどうにかならないかな。


………けどね。と声が聞こえた。なんて言ったんだクオンは?


「本当に?」


クオンの顔を除き混んで目を見ると、その疑いの目はやめてくれ


「いや、ですからね。出来れば違う方法がいいです」


「今、それを考えているのよ。クオンは魔法はあまり得意ではないでしょ、だから体と思っていたんだけど」


「それなら人の姿でも猛獣の強さに近くなりたいですね」


「私もそう思って部分的に行けないかと思ったのよね。でも無理だし、魔法とかで強化できるんだけど、それは得意な奴なら問題ないが、クオンは繊細な作業は苦手だしね」


「俺だってできますよ。教えてください」


クオンの負けず嫌いに火がついたかな?


「でも」


「俺だってマリー様の配下。できるまで何度もやります。お願いします」


「そこまで言うなら」


「ありがとうございます」


やっぱりクオンの負けず嫌いに火がついたのね。


「それなら猛獣になって」


「え!猛獣にですか?」


「そう、そこから変えていく事にしたの。それと小さめにね」


「わかりました」


クオンが猛獣になるとかなりの大きさになる縦1メートル横2メートルまで大きくなれる。今は抑えてもらって大型犬よりふた回り程大きい大きさになってもらっている。


「これでいいですか?」


「まずは両腕から始めるわよ」


「はい」


「そのままを維持した状態から人の皮膚をまとわせてみて」


「え?えっとですね」


いきなり難しいのが来たな。そのまま維持はわかる人の皮膚をまとわれる?が分からん。


わからないかしら


「試しに私が物を使って教えるわね」


「はい」


マリーが木を取り出した


「これがクオンの手だとすると」


次に水を薄く木に覆い尽くした


「この水が人の皮膚になるわけね、ここまではわかったかしら?」


「それならわかります、ですが俺がいつも人に化けているのはマリー様が与えてくれた皮膚と肉体が出来ている物に入れ替えているようなものなんですよ」


「わかっているわよ、そこでこの水と木を別々に扱うようにすれば、私が今持っているように中は木、周りは水となる。これが出来たらこの水に防御魔法で皮膚を覆うとどうなる?」


だんだん分からなくなってきたぞ


「えっと、水は俺の皮膚って事だから、その皮膚に防御魔法で覆うから防御される?」


「少し違うわ、皮膚だけに防御をする事で内側から皮膚が破られないし、外からの攻撃も防げるようになるのよ。それが出来た時人形でありながら猛獣の強さを手に入れることができるわけ」


とりあえずやればいいか。


「要するに人のままで猛獣の力が使えるんですね」


「そう言うこと」


考えるのが面倒くさくなっているんじゃないかしら。


「クオン、ちゃんと理解してるの?」


「いいえ」


そうだろうと思ったわよ


「やってみましょう」


「はい」


クオンは体の中に人型が存在する。普段は人型の中に猛獣を入れ込んで過ごしているのだが、猛獣になるときはその逆で猛獣の中に人型がある。皮膚そのものは人の皮膚を真似して作ってあるので全くわからない。


私からすればもどきなんだけどね。


「今クオンの体の中にある私が作った人間の皮膚と筋肉を分離してみて」


「?」


「そこからだったわね」


「すいません」


「分離魔法を覚えてからでないと次には進めないわ。それを覚えるわよ」


「はい」


「この魔法陣をこうして…………こんな感じでしてみて」


「やってみます」


マリー様がやっていたのが、こことここをこうしてと、これとこれを組み合わせて編み込むだったか?


「あ!」


ドカーン!


「あーあ」


「イッテテテテ」


顔を上げクオンを見ると


「ぶぅ!あはははは!」


「マリー様、笑っている場合ではないんですよ。真剣にやってるんですから」


お腹痛い、クオンの体に生えている毛が全部チリチリになってるんだもん。これが笑わずにいられない。


「ごめんなさい。ぷぅ!」


あーダメ。これ直さないと私笑い死ぬ。


クオン回復


あーお腹痛かった。気を取り直し


「クオン、最後あそこを組み合わせたら爆発にするから気をつけてね」


「マリー様それ早く教えてくださいよ」


「言うの忘れてた」


思い出したら


「ぶぅ!」


このままだと終わらない気がするぞ


「マリー様真剣にやってください」


「わかったわ、さっきの所と繋ぐのではなくてもう一つの方よ」


「わかりました」


クオンが真剣にやり始めた。ここがこうでこれとこれをこうする。最後にここ、違うこっちに繋ぐと。


「!!できたか?」


「うん、出来てる。それがすぐ出来るまでやるわよ」


「はい」


何百回と繰り返した。


ぎこちなさはあるけど、かなりいいわね。後は繰り返して自分のものにするだけだから次に進まないとね


「次ね」


「もう大丈夫なんですか?」


「後は今のを普段からやり続ければ自然に出来るようになるわよ、他にもいるから次よ」


「はい」


「今のを体の中で魔法を展開して、人の皮膚と肉体を分離してみて」


「はい」


「おー、なんか皮が剥けたような感覚が」


「それでいいのよ、その皮膚を今の体の表面に出して覆うのよ」


「はい」


ペラペラのやつを体に覆うように貼り付けれぼいいのか。


!?


綺麗に覆えたみたいね。


「あのーマリー様」


「どうしたの?」


「なんか気持ち悪いんですが」


「それはそうよただ覆っただけだからね」


「これで防御魔法をするんですよね」


「いいえ、その前にやる事がある。その皮膚と今の体を隔離していたわけだけど、それは体の中と外では違うの。今その皮膚に隔離魔法が付いているから、それを解除してみて。そうすればどうなるかわかるから」


「はい」


隔離魔法を解除してみた


!?


クオンの体にピッタリと貼りついた


「うまくいったようね」


「服を着ているような感覚になりました」


「クオン防御魔法は使えるのでしょう?」


「できます」


「その皮膚に防御魔法を交付してみて、もちろん体の中と外、両方ね」


「はい」


こうか?


クオンの防御魔法は私の次に強力だからすごいのができている


「マ、マリー様。これすごいですね」


クオンがそう発した途端マリーが高速魔法を打ち込んで来た。

余りの速さに反応が遅れてクオンにあたる


「痛った、くなかったです」


「そうでしょ」


「いやいや、いきなり何するんですか」


思わず我を忘れてしまった。


「攻撃だけど?」


「そうじゃなくて、いきなり攻撃するとか普通はしませんよ」


「だって避けるでしょ?」


「そりゃ避けるに決まっていますよ」


「避けてしまったら意味ないでしょ、ちゃんとできているか見たかったんだから」


「それでも、あの速度は尋常ないですってば」


「そうかしら?俺でも反応するのがやっとの速度って」


「反応しただけではダメね。避けないと」


「それ、マリー様が言いますか?今さっき避けるなって言ったばかりでは?」


「そうだったけ?」


なんか疲れてきた。


「もういいですけどね。マリー様が納得したのであれば」


「バッチリね、それじゃ殺りましょうか」


気のせいか?やるが、殺るに聞こえたような。


「これからですか?」


「これで最後ね。私も体動かしたいもの。クオンなら少しは相手になるからね」


にこにこだよ。やっぱり殺るの方がしっくりくる気がしてきた。


「クオンから攻撃してきて、殺す気で来てね」


「ですがマリー様を傷つけたら俺」


「大丈夫よ。傷つけたらたれら合格よ」


大丈夫か?いくらなんでも傷がついた日にはそれこそマリー様より怖い奴らがいるんだがな。すごい人だから思いっきりやってみるか。いやでも


「クオン!本気でこなかったら…」


マリー様の方が本気を見た気がした。


「本気でいかせていただきます」


「先に攻撃して」


瞬時に行動に移す。


マリーに渾身こんしんの一撃を与えた。


「ふふふ、それに威力魔法をつければよかったわね」


言い切ると


ドン!


「かっ!」


腹を抱えて跪いた。クオンのお腹に穴が空いていた。


「これぐらいしないとね」


「マ、マリー、、、さ、、、ま」


やりすぎた、慌ててクオンを治したい。


ふぅー危なかった。つい力を入れすぎてしまった


「マリー様、手加減をしてくださいよ」


「ごめん、ごめんつい力入れすぎちゃった」


「つい、で死にかけるこっちの身にもなってください」


「えへへ」


「褒めてませんからね」


「この後自主で鍛えてね」


あの笑顔は、開き直っている時の顔だ。


「わかりました」


「それなら帰るわよ」


「あと一戦できますか?」


「え!」


「今度は俺に合わせて攻撃をしてください。ちゃんとやってみたいんです」


「わかったわ、これが最後よ。まだ4人も残っているんだからね」


「はい」


「それじゃ200メートル程離れた所から始めるわよ。クオンがそこに到着したと同時にね」


「はい」


クオンが定位置に着いたと同時にマリーに向かって走り出した。マリーも同じ様にクオンに向かって動き出す。


クオンの攻撃とマリーの攻撃が激しく打ち合う。


「ここら辺で終わりにましょ」


その途端マリーが手を止めた途端クオンの一撃がマリーの顔に当たった。


バァン!扉から急に開いた。


「おい、クオンいつまでやっているんだ。お前の配下が……」


そこまで言いかけた時マリーの顔に攻撃が当たり口から血が出ていたのを見てイブリースが有無も言わさず襲いかかった。


「お前」


「いや待て、これには」


殴り合いと魔法の攻防が始まってしまった。


「俺の話を聞け」


「話を聞くかわけないだろ」


攻撃がドンドン激しくなる。それにさらに追い討ちをかける様にエブァンも加わっている。


なぜエブァンがいるかというとイブリースの背後にもう1人いたのがエブァンなのだが、血相を変えてイブリースの攻撃に合わせて参戦していた。


「お前の言い訳聞くか」


「マリー様を傷つけていい奴なんていないんだぞ」


「そうだ、それをお前は」


「聞いてくれ」


くそが、こうなるから嫌だったんだ。来るタイミング悪すぎだろ。


「マリー様もなんとか言ってくださいよ」


「マリー様を傷つけておいて助けを求めるなど配下としてなってない、叩き直してやる」


「俺もそれには賛成だ」


マリーはそんな3人を見ていた。


実はマリーがイブリースとエブァンがここに向かっているのをわかっていた。そこでマリーはエブァンとイブリースを巻き込んでクオンを鍛えられると考えた。


入って来るタイミングを見計らって自分を殴らせ、口から血を出せばいい刺激になるとあったのだった。


上手くいったようで何よりだわ。血を拭き取り観戦していたが、流石に時間も無くなってきたので種明かしでもしないとね。


「3人ともそろそろその辺にしたら?」


「いや、こんなもんでは気が済まない」


さらに攻撃を増した。


頭に血が上っているようね。しょうがないな。


「いい加減にしろ」


口調が荒いけど仕方ないよね。


魔力を一気に高めそこで戦闘を行うには無理な状況を作り出した。


「くっ」


3人はその場に跪いた。


「申し訳ありません」


魔力をしまい


「今すぐ私の元に来なさい」


「は!」


3人が揃うと


「これは修行であることを忘れてないかしら」


「え!」


3人がマリーの顔を見た。


修行?


そうではない。マリー様を傷つけたからお仕置きをしていたのではないのか?そうだ、締め上げていたんだ。


イブリースは混乱し始めていた。エバァンも同様に混乱し始めてる。


いや待て、今クオンの根性を叩きのめしていたんだぞ。それがなんで修行になるんだ?元はと言えばクオンがマリー様を傷つけた事から始まるんだぞ。

いや、待てよ。もしかして俺たちが利用されていたとすれば。全てはマリー様の手の平で踊らされていたとすれば、どうだ。もし自分が同じようにしていたとしたら。


「マリー様一つお聞きしてしても」


「いいわよ」


「もしかして、俺たちがここに来ることも、クオンに攻撃することもわかっていたってことはありますか?」


「あら、エバァン勘が鋭くて助かるわ」


そんな気がしていたんだ。通りでマリー様が怒らずにあそこで見ているだけだと思ったよ。変だとは思っていたが、頭に血が上っていたからそこまで深く気にも止めていなかった。


「やはりそうだったんですね」


「どういうことだ」


「エブァンはわかったとようだけど、他の2人はわからないようね。簡単に言うとわざと怪我して、それを2人に見せて激怒した2人を利用してクオンを鍛えさせていたのよ」


俺たち利用されていたのか。マリー様の手の平の上だったってことだな。


「まんまとマリー様に踊らされていたわけという事ですか」


「マリー様、程々にしてくらないとこっちの身がもたないですよ」


「そう言わないで、それにイブリースは悪魔でしょ。えらく弱気じぁない」


「弱気にもなりますよ」


「なんで?」


「いや、その……」



まずい、マリー様は皆の憧れの人だなんて言えない。悪魔がそんな事口が裂けても言えるわけがないんだ。


「なに隠しているのよ」


「マリー様、イブリースは怪我をして他の者が心配しては困ると思って言ってくれているんですよ、そうだろイブリース」


「そうです。マリー様に何かあれば皆が心配しすぎて身がもたないんですよ」


「それ言われるとなにも言えなじぁない」


「ですから程々になさってくださいね」


「そうするわ」


「それで?クオンの配下がどうしたの」


「あ!そうでした。クオンお前の配下がか探していたぞ」


「俺も忘れていた。訓練すると約束していたんだった」


「それなら早くいってあげないとね。クオンもさっきのちゃんとやっておいてね」


「はい」


3人は一度戻る事にした

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