第51話巨大な魔法陣

中に入ったマリーはあまりの大きさにびっくりしていた。


目の前に広がる巨大な魔法陣が起動していることに驚いていた。


「この魔法陣、周りに漂う魔力を動力にして動いているのね。これはすごいわ」


「そんなにすごいのですか」


「そうね、ここの魔力もすごいけど耐えられるくらいね。一体どこからこの魔力は出ているのかしら?」


辺りを見回しながら魔法陣の周りを探る。


一周回って考え込んでいた。


ここの建物自体にはそれほどではない。ならどこかしら魔法陣の周りは特に多い居場所は見当たらなかったな。


そんな時天井から細かい砂が落ちてきた。


ん?


マリーは天井に目をやると驚愕をした。


そこには大量の人が囚われていた。中を見ると生きている人が数名ほどいたが中には死んでいるものや腐敗した死体なんかもあり、おぞましい光景が目に入ってきた。


マリーが天井を見ていたので2人も続いて見たのだがあまりにひどい光景に吐き出していた。


さすがにそうなるわよね。闇の女王でなければ私も後ろの2人と同じになったと思う。


それに魔力の原因がそれだとわかった。腐敗した死体から大量の魔力が出ているのがわかったし、生きている人には死んだから魔力増大するように刻印まで施されている。


残酷すぎたから、魂が砕けたんだわ。あの中にいればいずれは誰でも壊れて当然なのだと思うわ。


「中にいる人達みんな魂が砕けてしまっているのね。可哀想に。救ってあげる方法は殺すしかないのが嫌になるわ。いくら私でも砕けてしまった魂を元には戻せない。戻すには死ぬ必要がからのだから」


後ろの2人が落ち着いたようだった。


「マリー様失礼しました」


「エブァン貴方達の反応が普通なのよ。気にしないで。それよりも大丈夫?」


「はい、なんとか」


「それならレデーを介抱してあげて」


「マリー様、泣いておられるのですね」


「ええ、でも救うわ。殺しという名の救いをね」


涙を一粒流すと唱え始める


神崎かんじきの道しるべ 魂を導く道となりて 我導くものなり パッサズーラーウム」  


天井にぶら下がっていた檻の中の人々は肉体とともに全てを光に導かれて消えていった。


「次に生まれてきた時には今日の事を全て忘れてくるから安心してね。決して魂に記憶させたりはしないからね。笑顔でまた会いましょう」


「マリー様………」


「次はこの魔法陣ね」


この魔法陣はきっと50人もの人々を現代に送り込んだ奴に違いないわね。まだこんなものを隠していたなんて破壊しなくてはならないわね


「さてどうしようかな?そのまま破壊するのはもったいないから読み解くのもアリかも」


「読み解く?ですか」


「そう、それがいいわね」


「物の王の名の下に全ての物よここへ」


その呼びかけに物達が姿を現わす。膨大な物達がマリーの元へ来るのだった。


「王よお呼びでしょうか」


「ええ、貴方達にここにある魔法陣を読み解いてもらう事にしました。すぐに取り掛かりなさい」


「は!」


物達はためらう事なく魔法陣へ食らいついた。


マリーは一冊の本を取り出すとページを開いた瞬間光がその本へと吸い込まれていった。無数の光は帯となり吸い込まれていく。それと同時に魔法陣が姿を消し始めた。


「ふふふ、いいわ。どんどん溜まっていく」


「いったい」


「読み解いた物達は元の場所に戻りなさい」


「は!」


次々と読み解いては物達は姿を消す、それの繰り返しをし続け始まってから30分ほど経過していた


「あと少し、ハァハァハァ」


「マリー様大丈夫ですか」


「ええ、少し魔力を使い過ぎているようね」


「何ですって、それなら今すぐにやめないと」


「バカ言わないで、ハァハァハァ」


「それではマリー様が」


「一度始めてしまったら最後までやらないとまずい事になるのよ。ハァハァ」


「わかりました、それなら今から隠れ家の扉をここに出してくださいいい考えがあります」


「え!ハァハァ。わかった」


手を振ると扉が姿を現した。


その途端エブァンは扉に向かい中に入っていった間も無くするとエブァンが姿を現した。エブァンは隠れ家の扉と異空間一つ目の扉を変えたままにして出てきた。


「マリー様これから奴が来ます。受け取ってください」


「!?」


(あれーマリーまたすごい魔力使ったね)


「ゲレカイ?ハァハァハァ」


(そうだよ、エブァンがさマリーが大変だから直ぐにきてくれって言うから魔法の帯使ってここまできたんだよ。これも魔力使うからあまりオススメしないんだけど、余りにもエブァンが慌てているもんだから俺まで慌てたよ)


「助か、くっ!」


(ギリギリだ、今あげるからね)


ゲレカイはマリーに触ると物凄い勢いでマリーに魔力を流し込んだ。


(ふぅーこれでここでの作業は足りる魔力は入れたよ。でも、一度僕の所に来たよね。それでも足らないんだからさ)


「ありがとう、後で顔を出すわ」


(じぁ、僕戻るね。バイバイ)


バタン、バタン


異空間と隠れ家の扉が勢いよくしまった。


「全く無理をしすぎなんですよ」


「エブァンもね。よくゲレカイがあそこから出る気になりましたね」


「ゲレカイにはマリー様が死ぬと言ってきてもらいましたよ」


「いや、死なないわよ。長い眠りにはつくかもしれないけどね」


「それ、達が悪いですよ」


「寝るだけなんだからいいでしょ」


きっとそうしたらここには当分戻れそうにないのが何となくわかる気がするのだが感がそう言っているようだった。


寝る事すら許されない私の魂は一つそれなのに、2体の体だけが違う世界に存在し続けている今、寝るという表現が正しいのかは疑問に思う。

そもそも一つの体に対して魂が一つなのが普通それが魂は一つなのに対して現代と異世界に体だけが存在し続けている。そして今は脳内の3次元を確立しているおかげで3つの脳があり、そこを経由して情報が整理されているわけだ。


もう、これは人間の領域越しているがする。

私って何なのかしら?何で私なのかしら?導いて何が楽しいのかしら。私に与えてくれるものは多すぎほどなのに素朴な疑問が脳裏をよぎる。


今更なんだけどね。最初は諦め肝心の精神で考えないようにしていたのだが、諦めきれていない所がある自分を見ないようにしてきた。そうする事で少しは楽だったからだ。


考えがまとまらないうちに作業が終わりを告げた。


やはり答えは出ないままなのよね。


パタンと本を閉じた。


「ここに残りし物達、ここの書物を全て奪いなさい」


そう言うと手にしている本を再度開くと先程と同じように本へと光が吸い込まれていった


5分後


本を閉じると


「これで終わり、あの人達連れて帰るわよ」


「は!」


捕らえた奴らの所に戻ると、殺されていた。


!?


目の前に1人の男が立っていてそのまま姿をくらました


結界が意味をなしていなかった事に気がついた


「やられたわね。あの魔法防御を破るなんてね。油断したわ」


「だか、ら。いっ、、、た、、、、」



マリーは声がする方へ向かい死体の下にいた奴を持ち上げた。


「まだ息はあるのね。それなら何とかなる。今助ける」


「い、、、い。このまま……死なせてく、、、れ」


「いいえ、貴方だけは幸せにならないとダメ」


マリーは回復魔法を施し、保護魔法をかけた。


魂は、大丈夫、まだ砕けてはいないから。


「脱出するわよ、エブァンこいつを連れて行くからね」


「わかりました」


マリーはここから出る前に死を招く魔法陣を破壊した。


建物から出ると


「さあ、いくわよ」


魔法陣を展開し配下達を送り届けたあと建物に向き直る。


「イージェス聞こえる」


「はい」


「ここに来て」


「は!」


イージェスがマリー前に来ると跪いた。


「この建物をマグマの中に。全ての残骸を沈めておいて欲しいの」



「今度ここに来る奴がきっとマグマの中に来る事になればどうなるかわかるでしょ。死ぬわよね。それの方が面白いでしょ。ここに取りに来ないといけない物がここにはあるんだから。マグマの中は入ることはできても出ることは決してない場所。あいつらにくれてやるとっておきの死に場所になるわけよ。ふふふ」


あ!マリー様かなり怒っているようだな。抑えてはいるが言っていることが怖いぞ。


「わかりました、そのようにしておきます。建物は溶かしてしまっも良いのですよね」


「溶かさないでそのままにしておけば中に来たら最後死ぬまでそこにいる事になるんだからね。魔法その物は全て遮断されるのだから当たり前ね」


怖い、静かに怒っているから余計だ。


「私は戻ります、ここが片付いたら戻って来なさい」


「仰せのまま」


マリーは川の向こう側に戻るのだった。



イージェスは建物と建物の周りにあった残骸全てを回収して保護魔法を施しマグマに沈めるとマリーの後を追った。


「今回もなんか疲れたわね」


結界内に入ってすぐ


「なんなのよこれは」


ツタだらけのまちを見ていた


「なんでこんなにツタがあるのよ。しかも大量に」


マリーが戻ったのを合図にマリーの元にやってきたのはミーだった。


「それが」


「これはミーの仕業?」


「そうなんだけど、話を聞いて」


「わかったわよ。それで」


「……………と言うわけ」


「はぁーわかったわよ。後でここら一帯みんなでなんとかするわよ。それよりもクオンは?」


「結界の外で見張りしてる」


「わかった、ミーはクオンを城に呼んでちょうだい」


「はーい」


「キリウス聞こえているでしょ。昔話してないでさっさと来なさい」


八つ当たり気味に言うと


目の前に現れ


「申し訳ありません」


「配下6人とウーゴそれと人魚達を大広間に集めなさい」


「は!」


マリーは城へと足を進めた。


大広間の椅子に腰掛けて一息をついた


疲れた。ドンドンドンと地響きが聞こえてきた。待て待て慌てて城の外に出るとクオンが猛獣姿でそこにいた


「クオンどうしてその姿のままでいるのよ」


「それがですね」


「言わなくていいわよミーから聞いているんだから、人に戻れるでしょ。そのままで来るのがおかしいわよ」


「ですか、人に戻どると背中だけものすごく盛り上がってどんどん広がっていくんてます」


「それでもいいから、一度人の姿に戻って。そうしないと直せないんだから」


「は!」


クオンは人の姿になり背中を見てた。


また派手になくなったわね。修復を施して服も直した。


「これでいいわよ」


「ありがとうございます」


「クオン、貴方私の相手してもらうからね。覚悟しておくのよ」


「は!」


冷や汗をかきながら答えた。


やっぱそうなった。こうなったら開き直ってやる。


「それとミー、貴方も少しは反省してもらわないと困るわ。そこでいい人いるからそこに行ってちょうだい」


「どこですか?」


「フロンツメーに鍛えあげてもらうように頼んでおくからね。必ず行くのよ。行かなかった時にはフロンツメーからさらなるお仕置き待っているんだからね。逃げたら覚悟することよ」


「はい」


2人がっくりと肩を落として大広間に向かった。


「だから何かあると言っただろうが」


「あのね、フロンツメーは私達の母でもある方。植物を操るのにあの方の右に出る奴はいないんだよ。それの修行って考えるだけでもこわいよ」


「諦めろ、俺も同じなんだからな」


「わかっているよ」


大広間に6人の配下と人魚達が勢揃いした。


「まずはみんなお疲れ様でした。お陰でウーゴは見事連れ帰ることができたのはみんなのおかげでます」


「もったいないお言葉」


一斉跪き言葉を述べた。


「そこで今回と前回の事で学ばなければならない事がたくさんあったと思います。それぞれ各自に鍛え学び次に生かしてもらえればいいと思う所ではあるのですが、魔法に関して各自では限界があるでしょうから私個人が何人かを修行してあげる事にしました。これから名を呼ばれる者は明日私のところまで来るように」


「は!」


「では名を呼びます。イブリース、クオン、キリウス3人は明日私の元に来るように、他の者は各自で伸び代があるはずです。それを鍛えあげるように」


コンコン


「入っていいわよ」


大広間にテーブルや椅子が大量に運ばれてきた。


「みんなこれからご飯にしましょう。ここに残っていた者達が丹精込めて作った料理です。今日はお腹いっぱい食べてゆっくり休んでね」


「は!」


そう言うと次から次へと運ばれてくる料理を食べていた。


「扉の前にいないで子供達も入りなさい」


「え、いいの?」


「いいに決まっているわよ。入ってみんなで食べるわよ」


大勢の配下が入ってきてご飯を食べていた。


好きを見計らいマリーは抜け出していた。


自室の外にあるハンモックに体を沈めるとゆっくりと揺れだした。


本当に疲れた。このまま目閉じたら眠れるんではないかと思うほどに。


そう思って揺られていると


「マリー様」


「どうしたのエブァン?」


「寝てはおられなかったのですね」


「エブァンには言わないといけない事があるの。でもそれを信じてほしいとは思わない。ただ聞いてくれるだけでいいの」


「俺でよければ」


「ええ」


「わかりました」


「私はね元々ここの人間ではなかった。現代と言う世界から来たのよ。

 本来一つの体に魂が一つそれが世界のことわりそれを覆すのが私。

 ここの世界にある私の体、現代の世界にある私の体。魂が一つなのに体は2つある。

 私が最初の頃眠くなったと言っていたのは寝ていたわけではなく、現代に魂が戻っていただけ。

寝る事を許されない者になっていた。

 今では眠気が体を襲う事なく現代とここを行き来することが出来るようになっているのだけどね。

 正直寝たいと思うことはある。

 それよりも私は人ですらなくなってしまった存在なのはエブァンも知っていることね。

 なんで私は導かなくてはならないのか?なんで私なのか?なんで普通の日常を送れないのか。

 そんな事を考え始めてしまった。誰かに言えば解決するのではないか。

 そう思って今話したのに何も変わらない。もがいても、何も始まらないことぐらい分かっていても、やはり考えてしまう。

 今やるべき事を成すだけなのだと言うことも。

それでもね。


まーそんな所かな。少し話したら気持ちがスッキリした感じ」


「マリー様、俺が思うに好きにすればいいと思います。導きたくないと、思うのであればしなくていいし、導きたいと思うのであれば、そうすればいい。マリー様が楽しいと思えるここと現代?にすればそこからきっとマリー様が思う日常でしたか、それがくるのではないですかね」


「ふふふ」


「変な事を言ったようですね」


照れているエブァンを見て


「いいえ、そんな考えもあるのだと思ったら楽になったわ」


「それに俺はマリー様が、現代と言う世界が存在すると言うのであれば信じます」


「そんなにすんなり受け入れられるものかしら?」


「何を言っているんですか。そもそも我々とは次元が違うのですから、現代と言う世界があると言われても今更驚きはしませんよ。その前に散々驚かされていますからね」


「エブァンも言うようになったわね」


「それはきっとマリー様のおかげですよ」


「それ、褒めているのよね」


「もちろんです、俺には従う他なかったのですからね」


たしかに以前そんな事を言っていたわね


「それなら良かった、これからもよろしくね」


「それは俺のセリフですよ」


「ふふふ」


「あはは」


顔を見合わせて笑う2人だった。


「マリー様どこー?」


「ほら皆が呼んでいます。行きましょう」


「そうですね」


皆が待つ大広間に向かい食事を楽しみながら夜が更けていったのだった。


「みんなそろそろお開きにするわよ、片付けはまた明日」


「はーい」


各自が家々へと戻り静けさを取り戻す


マリーも自室へと戻るとようやく体を休める事ができた。


体の異変も気になるし一度現代に魂を移動させよう。





現代へと魂を戻すとちょうど仕事が終わって帰る所


(お疲れ様でした)


(真紀さんまた明日ね)


(はい、お疲れ様でした)


仕事場を出て駅へと向かい電車のホームで待っている。


しばらくする電車が入ってきて真紀は電車に乗った。


会話の内容も変わったことがなく、以前体の異変で胸が大きくなっている事以外は変わりがなかった。


帰りながら、いつもの風景を見つめ電車に揺られる私。


変わらない日常本当はここなのだと思いたくなるが、現実はそうではない。


どちらも私の世界。


夕方の電車の中乗り降りする人々それを見送りながら最寄りの駅に到着する


「次は………駅、お降りのお客様は足元にご注意ください」


プシュー、電車の扉が開き駅を降りた。


ここも変わらない。私の脳内には変わらない日常が記憶されている。会話もちゃんと覚えている。何もかもが平和である事を示していた。


どうしてもわからない事は、自身の体の異変ぐらいだった。


ボッーと歩きながら家路に着く。


家に着くと


(ママおかえりー)と声が家中に響く。


確か記憶だと子供の帰りが早かったな


扉を開くと


(ママ返事してよ)


(ごめんごめん)


(ママお帰り)


(ただいま、今からご飯作るね)


(ママいいよ、今日ね私が作ったんだ)


(え!本当に)


(うん、食べてよ)


目の前の食事に嬉しくて涙がこぼれた


(こんなに大きくなって、食事まで出来るように)


(ママ泣かないでよ)


(嬉し涙よ)


(もーママは、ご飯食べよう)


(そうだね)


子供との安らぎのひとときを噛み締めながら食事を済ませ、家事仕事をこなし一息ついた。


向こうもここと同じようにしてあげたい。


真紀の心がそう思うようになった。もういいかななんて思っていたのが嘘のように子供の何気ない行動や言葉が私を振るい立たせてくれた。

子供に感謝しないとね。どんな理屈や正論を並べたとしても心には響辛い。

だが、身近な人に同じ言葉を言われたらきっとそれは心に響きやすい言葉へと変わるのだろうと。




布団に入り体を休めた真紀はそう思いながら、異世界へと魂を戻すのだった。



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