第47話ウーゴ奪還へ
ウーゴがいなくなった頃、中央都市は内乱が始まっていた。あちこちで殺し合いが始まり民達は息を潜めて暮らすようになる。
「いつまで続くのかしら?」
「仕方ないだろ、主側の人間とそれに対抗する人間と別れて戦っているんだ。せっかく前の主から変わって落ち着き始めると思ったのに、またよ。そろそろここを離れる事も考えないとダメよね」
「おい、気をつけろよ。どこで誰がきいているかわからないんだからな」
「そうだったわね、とにかく今は様子を見ましょう。これで最後にしましょうね、あなた」
「わかっている」
外から怒鳴り声が響く
「おい、なにをやっている」
(また、始まったか。今日は家の近くだな)
(いい加減にしてほしいわよ)
「お前達がしっかりしないからだろうが」
「何をお前達がウーゴ様を守ってやらないからこうなった事を忘れたのか」
魔法の応戦が毎日繰り返し、日に日に過激を増していった。
ーーーーーーー
「みんないいかしら?」
「はい」
魔法陣を展開し、キリウスが待つ建物の付近に待機していた。
手順はこう。
キリウスが報告を済ませ建物内から出て行く。その後ウーゴが埋められている場所に向かい奪還をして戻る手筈になっている。
私はキリウスが建物内から出た後建物内部に潜入魔方陣がある場所まで行き確認をする。
その後破壊又は川の向こう側に戻る。
どう転ぶかはお楽しみね。
キリウスが来たようね。
ーーーーーーー
「お前達、キリが向こうに到着したようだ。作戦を伝える」
「は!」
「川の向こう側に行くための魔法陣をキリが用意しているはずだ。川の向こう側で待機してキリが魔方陣を破壊したと同時にキリにバレないように侵入しろ。その後そこの奴らを叩き潰せ」
「わかりました、ですがもしキリが魔方陣を破壊しなかった場合は?」
「その時はお前達で破壊すればいいだろ。あれを使えばいい」
「わかりました」
カリドが移動魔方陣を展開し待機した。
《ただ今戻りました》
カリドの耳にキリの声が届いた
「お前達、キリが奴らの本拠地に入ったようだ。この魔法陣で川の向こう側に行って待機しろ」
「は!」
カリドの配下達は魔法陣にて現地へ向かうのだった。
カリドの耳に届く声。
《お疲れ様》
《どうしたのその格好は?》
《詳しく話をこれからいたします》
《その前に、やることがあるわ。水浴びが先よ、体の疲れをとってからでも遅くないわ。話は明日にする解散》
《ですが》
《聞こえなかったかしら?》
《いえ》
《急ぎの話だけでも》
《なに?それを聞いたら残りは明日にするのでしょう?》
《それはもちろんでございます》
《ウーゴがやられました》
《やられたとは?》
《はい、やったのは私です》
《!?》
《お前、なにをやらかしたのかわかっているのだろうな?》
《わかっている》
《それで、伝言を預かりました。これより先に来るなら容赦はしないと》
《そう、それだけかしら?》
「はい」
《わかったわ、残りの話は明日。今すぐにこの場から離れ体を休めなさい、いいわね》
《は!》
ちっ、ダメじゃないか。まあいい明日にはある程度把握できるだろ。
翌朝
《皆集まりましたね。どうでしたか》
《全てが素敵なものばかりでした》
《それは良かったですね》
《何か変わった事はありましたか?》
《特にはないわよ》
《そうですか》
《何かあったのかしら?》
《いえ、これからまた旅に出ようと思いましてもしダメならここに留まろうかと》
《大丈夫よ、キリがしたいようにするといいわ》
《ありがとうございます》
《皆には作業に取り掛かってもらうわね》
《何をなさっているのですか?》
《家々を立てているのよ》
《俺がいない間に家が増えていると思っていましたが》
《ええ、ここに来る人が多くてね》
《そうでしたか》
話の内容が変換されていることに気がつく事なくカリドは会話を聞いていた。
《それでは俺は行きます》
《ええ気を付けてね》
《はい》
ようやく動き出すか。特にこれといった情報は得られなかったか。キリが結界を壊してくれれば事は済む話だな。
人気のない場所に行き結界を破壊した。
《パリン!》
結界が破られ、キリウスはカリドの元に戻るのだった。
(お前達、聞こえるか?)
(はい)
(キリが結界を破ったようだ、作戦に取りかかれ)
(は!)
ーーーーー川の向こう側ーーーーー
おい、あいつら何をしているんだ?
クオンの目の前に20名ほど各場所で息を潜めていた。それに気がついたクオンは、様子を伺う。
あれで隠れているつもりなのだろうか。俺にはあんな無様な隠れ方は俺でも難しいぞ。わかりやすいだろ。
クオンが目にしている者達は確かに隠れているのだがクオンには意味をなしていなかった。結界で覆い姿、形は確かに隠れているが匂いまでは隠せていなかったからだ。
あそこまでやるなら、匂いも消さないと無理だな。
何か話しているな。クオンは耳を研ぎ澄まし声を聞き始めた。
(お前達、聞こえるか?)
(はい)
(キリが結界を破ったようだ、作戦に取りかかれ)
(は!)
動き出すか。どう動くか楽しみだな。酷ければ殺してもいいとマリー様から許可は貰っているが、それはあくまでもひどかった場合に限るからな。
しばらくは様子を見ることにした。
ーーーーーーー
マリーは忘れられた場所10キロ手前にいた。
「まずはキリウスが言っていた、警戒魔法をなんとかしないといけないわ」
「ですがどうするのですか?」
「ふふふ、それはね。レデーいるでしょう?」
「はーい」
「レデーに何をさせるんですか?」
「いいから見てて、これから面白いものが見れるわよ」
「面白いもの?」
「レデー、手を出して」
「マリー様あれをするの?」
「わかった?」
「わかるよ。でもいいの?それしたらここの辺り大変な事になるよ?」
「大丈夫よ。帰るの警戒魔法がある所だけだし、警戒魔法自体はちゃんと機能しながら警戒されないようになるんだから便利でしょ?」
「マリー様が大丈夫って言うならいいけどね」
「始めるわよ」
配下が見守る中始まった。
レデーの手を取り唱え始めた
「大地の申し子
目の前で土と岩が空に向かって伸びていった。それは大地を変形させるほどのものとなり遥か彼方には山がそびえ立っていた。
「地形が変形しているではないですか」
「そうよ。遠くに見えるあの山魔法陣がデカすぎて山になっちゃった」
「なっちゃったじぁないと思いますよ。流石に気づかれますって」
「そお?それならあの山に撹乱魔法と錯覚魔法を組み込んだものをつけておくわよ」
「そんな、ふて腐らないでください」
頬を膨らませながら魔法を張っていた。
「だってめんどくさいんだもん」
「可愛くいってもだめです」
「エブァンなんかお母さんみたいよ」
「お母さんではないですが、マリー様の世話をするのが私の役目です」
「もう少し面倒じぁない方にすればよかった」
「あるんですか?」
「あるわよ」
「何があったんですか?」
「破壊」
「もっとだめですよ、それこそ気がつかれて作戦の意味無くなりますよね」
「いっそのことを建物もろとも全て破壊でもよかったかしらね」
!?
たまにとんでもないことを言い出す。導く事を忘れて悪魔になったのではないかと疑う。
「マリー様、導かなくていいんですか?」
「あ!それは駄目ね。仕方ないからこのままで行くわよ」
「だから、ふて腐らずにやりましょう」
「わかったわよ」
これはわかってないな。
めんどくさそうに魔法を貼り終えた。
「次は、移動するのが大変だから土の中を移動するわよ」
「土の中?」
「そうよ」
マリーの足元が沈み始める
「待ってくださいよ、俺は無理ですよ」
「そうだったわね、エブァン私の腕に捕まって」
「俺がですか?」
「無理だって言ったでしょ?」
「いや、そうですがそのー」
「どうしたのよ」
いくらなんでも女性の腕に捕まるのはどうかと思うのだ。ましてやマリー様にそんな事をしたらあいつらに何を言われるか分かったものではない、言われるだけならマシだ。あいつら全員俺を殺しにかかりそうだ。
「俺は自分で行きますよ」
「それ遅いわよ、もういい」
!?
マリーがエブァンの腕にしがみつき無理やり土の中に入って移動し現地に到着したのだった。
まずい、流石にまずいぞ。これは間違いなく半殺しだな。大きく溜息をついたのだった。
「まだ、キリウスは来ていないようね。その間に建物の結界なんとかしたいけど動くと気がつかれそうね」
「そうだと思います。建物の中にはかなりの配下がいるようです」
「この結界花粉は通すのね」
「そのようです、花粉が通り抜け出来たのは多分ですが生きていなかったからなのではないかと思います」
「死んだものならば通れるってことかしら?それなら魔法も通れるのかしら?」
「私の花粉には魔法が付いていません。花粉を飛ばして付着したものの情報がある程度把握できるのです。魔法によるものとは別のものになるんですよ」
「属性特有なのね」
「そうですね。魔法は魔力を使いますが俺の花粉は使いませんからね」
「納得だわ。今度それを調べさせるのもいいかも」
「俺実験台に?」
「馬鹿な事言わないの、するわけないでしょ。私が言っているのは花粉の方よ」
「あ!なるほど」
「エブァンやほかの配下を実験台にするぐらいならそんなのいらないし、自分でそれに変わる物を見つけるわよ」
「マリー様ならそうだろと思いました」
「なら最初から言わないでよ。気分悪くなったじぁない」
「申し訳ありません」
「いいのよ、そろそろ到着するはずなんだけどな」
「マリー様」
「何?」
「マリー様が一番早いのですから他の配下がマリー様に追いつく訳がないんですよ。もう少しかかりますよ」
「そうかしら?それでも遅くないかしら?」
「マリー様と同じにしてもらっては困ります」
「そうなのね、それなら少しでも早く慣れるように鍛えるのもいいかも」
なぜそうなる。勘弁してくれ
「いえ、マリー様それに関しては俺の方で鍛えてやる事になっているので大丈夫ですよ」
「そうなの?ならそれに参加するのもいいかも」
「いえそれも大丈夫です。俺を信じてくださいよ。ちゃんとやりますから」
「わかったわよ。エブァン聞くけどまさか私とやりたくなくてそんな事言っているわけではないわよね?」
「もちろんですよ、マリー様もお忙しいわけですからご自分の事をなさってください」
危ない、感だけは鋭いんだからな。それにマリー様の事だからしないとは思うが心を読んだりできるからな。気をつけなければならんが多分していないと願う。
「わかったわ。信じます」
キリウスが来たようね。
マリーが待機していた場所にキリウスが姿を現した。
建物内へと足を踏み入れた。
(皆、キリウスが到着したわ)
ヤクブに頼んで水を利用して声が聞こえる様にしてもらっている。
(わかりました)
待機している配下達が気を引き締め始めるのだった。
建物内に入ったキリウスは、カリドの待つ部屋へと向かった。
コンコン
「入っていいよ」
「はい」
「頼まれていた結界は破壊しました。それと家が増えたぐらいで特に変わった物はありませんでした」
「そうか、お前の仲間はどうだった?」
「お前の仲間ですか?」
「どうした?」
「いえね、なんか引っかかる言い方をするので」
「何がだ?」
こいつ俺をはめようとしていやがるな。
「私は貴方についたのですから、お前はおかしくないですかね?」
「そうか、ならなんて言えばよかったんだ?」
まだ諦めないか。
「あいつらとかですかね?」
「そうだな、それであいつらの攻撃とか詳しい内容はどうだ?」
もし刻印が改ざんなどされたらと思っていたのだが気のせいか。
「昔は魔法が得意とする者達だったのですが今は戦いをしていないようで詳しい事は分かりません」
「そうか、他に何かなかったか」
「目新しい事は先程の事以外は特に」
「わかった、下がっていい」
「わかりました。これで失礼します」
扉に手をかけた時
「そういえば、お前の殺したウーゴは生き埋めにしたよ」
!?、この野郎殺しやがったな
「おかしいですね。俺が殺したはずなのですが」
「いや、死んでいなかったよ。虫の息だったようだ」
「それは失礼しました。俺もまだまだだったようです」
くそが、何しやがった。
「そうだね。次はないから気をつけるといい」
「はい、それでは失礼します」
「ああ」
キリウスは扉から出て行った。
思っていたのと違う反応を見せたか。今度こそ動揺するのかと思っていたのだかな。うまく刻印が可能していたようだね、僕の気のせいだったな。
ーーーーーーー
キリウスが建物から出て来ると辺りを警戒してその場から離れた。
全くカリドは何を考えてやがる、ウーゴを生き埋めにしただと。たしかに俺がそういう風にしてもいいように考えていたからいいのが。ウーゴがいる場所を突き止める前にマリー様に報告を上げないとまずいか。
ここではまずい、どこかいい場所はないものかな。
(あるだろ)
!!
(おい、イブリース余り話しかけるな。誰が聞いているかわからないんだぞ)
(俺は闇の中にいる、他の奴らと一緒にするな。大体俺に気がつくのはマリー様以外いないんだぞ)
(そうなのか)
(闇の中に居られるのはマリー様と悪魔だけだ。俺が闇から話しかけても闇が全てを飲み込む。もちろん会話もな)
(それならいいが、お前が闇の中に入って来てやればいいだろ?)
(お前な、今自分で闇の中は悪魔とマリー様以外は無理だと言っていただろうが)
(俺が許可すれば居られるぞ)
(それを先に言えよ)
(どうするんだ?)
(頼む)
(わかった、お前の陰に手を置け)
(こうか?)
闇の中にキリウスが吸い込まれるように居なくなった。
「これでマリー様と会話ができるぞ」
「助かるが、初めて闇の中に入ったが本当に何も見えないんだな」
「当たり前だ、ここの中はマリー様の手の平の上にある。ここにお前が入って来たこともわかっているさ」
「?、俺には分からん」
「何を言っている。お前の操る水と感覚は同じ、そう言えばわかるか?」
「それなら俺でもわかる」
「とにかくマリー様に報告を上げて戻らないとまずいだろ」
「そうだったな」
「マリー様聞こえますでしょうか?」
(あらキリウス闇の中に入ってどうしたのかしら)
「それがですね………」
事のしだいを話した。
(なるほど、それならその中で探して、死んでいても、生きていても連れて帰ってきて)
「わかりました、そのように致します。カリドの方はどうしますか?」
(カリド?)
「あ!申し訳ありません。説明しておりませんでした。俺に刻印をし、配下を束ねている奴がカリドと言います」
(それ、大事な事だったわよ。もっと早くに言ったよね)
「はい、気をつけます」
ドス!?
「ゔぅぅぅ」
「バカだろ、しっかりやれ」
(イブリース、それ以上キリウスを痛めつけたらその倍をあなたにあげるわよ)
「申し訳ありません」
(今すぐにキリウスを治しなさいよ。話が前に進まないわよ)
「は!」
《マリー様に感謝しろ》
《ああ》
(それでウーゴを連れ戻したら川の向こう側に戻って保護魔法をウーゴにかけて待機ね)
「わかりました、マリー様は?」
(これから建物内部に入ろうかなって思っているところだったのよ)
「そうでしたか、ご無事でお戻りください」
(当たり前なことを言わないでよ。それよりキリウスとイブリースが帰ってなかった時が大変なんだから自分の心配してね)
「わかりました、これより作戦を継続します」
(頼んだわね)
「は!」
マリーは建物へと視線を向けるのだった。
「命拾いしたな」
「加減しろよ、こっちは死ぬところだったんだぞ」
「加減したからお前は生きているんだろうが」
「あれで加減した内に入らないぞ」
キリウスの腹に大きな穴が開いたからだ。即座にマリーが回復しろと言われことなきを得たのだが一撃がここまですごいとは思いもよらなかった。
俺とは強さのケタが違いすぎる。
マリー様はもっとということになる。
案外あの適当につけた番号があっているかもしれないなとキリウスは内心で思うのであった。
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