第36話破壊

一番奥のドアを開ける。

目の前に巨大な魔法陣が広がりその三点に人魚が捕らわれ魔法陣に組み込まれているのが見えた。


「なんてひどいことをするのかしら、協力してるわけではないわよね」


ーーー助けてー


ーーーここから出して


ーーーお家に帰りたいよ



「マリー様私許せない。人魚をなんだと思っているの」


「アメール落ち着いて、私が貴方の怒りを代わってあげるから。だから今は私の怒りに免じて抑えて」


マリーの体から魔力が大量に出始めていた。


「アメール下がれ」


「う、うん」


「マリー様どうしちゃったの?私の怒りを代わってくれるっていっていたけど。あれ尋常ない」


「久々に見たな少し抑えてもらうよう言ってみるから、待っていろ」


エブァンはマリーの足元に跪き訴えた


「マリー様申し訳ありませんが少し魔力を抑えていただきたいのです。そうでないとアメールが死んでしまいます」


「エブァン貴方。ふぅー。わかったわ、いつもありがとうもう少しで配下を殺す事になる所だったわね」


「わかっていただいて何よりです。口を挟んでしまい申し訳ありません」


「いいえ、エブァンは私の為に言ったのだから気にしないで。この結界から3人を救わないとね。忌まわしい魔法陣を破壊してしまいましょう」


「その方がよろしいかと」


「もう大丈夫だから、エブァン下がってなさい」


「は!」


魔法陣に向かい歩き出した時


「お前そこで何をしているんだ?」


「誰のことかしらね」


「お前だよ」


エブァンが動こうとした瞬間、エブァンの体が動かなくなった。


「お前はそこで大人しくしていろ、聞こえていんだろがこっちを向け」


「私だったの」


エブァンが動かずにいたのを見て


「エブァン、演技はいいからさっさと、それといてアメール守ってよね。もしかして遊んでないかしら?」


「そんなことないですよ。ちゃんとアメールは守っていますよ。それよりもおとりになった方いいのではと思ったのです」


「エブァン、それおとりのつもりだったの?」


「おとりになっていたではありませんか」


「お粗末ね、それならもっとこう、助けてください的な表現も必要だと思うのだけれど」


「そういうものですかね」


「そうよ」


「お前ら俺を無視するな」


「なんだったかしら?」


「マリー様、振り向いて欲しかったようですよ」


「そうだったわね。それでなにかしら?」


「俺を侮辱するとはいい度胸だな」


「喰らえ」


魔法陣が私の足元に出現したがわかったので移動したのだが移動した先にも魔法陣が張られていた。


「痛った!」


「マリー様、足が」


「なくなちゃったわね」


「そんな冷静言われても」


「そう?私木だもの生えるわよ」


目の前で足が生えてきたが木だった。


「マリー様それは?」


「これは木の力。それ以外にも属性は全て操ることができるだけだね。今回は木を使ったの。属性別に部分回復の魔法で作れちゃうのよ。便利でしょ?物達に教えたてもらったのよ」


「そんな事まで出来るんですか?」


「うん、今、色々と試しているのよ」


「それ今試す事なんですかね?」


「何言っているのよ、今試さないでいつ試すのよ。私を傷つけてくれないでしょ。自分でやるのは嫌だから。それともエブァンがしてくれるの?」


「それは無理ですよ」


「なら、今が試す時よね」


「ほどほどにしてくださいよ。こっちは心配で仕方ないのですから」


「しょうがないわね、わかったわよ」


「そういう事だからもう少し付き合ってね」


「ふざけんな馬鹿にするな」


攻撃魔法を繰り出してきた。


「さっきのは良かったのに、もう少し頑張ってよ」


最後に放った魔法を相殺した。


「これならどうだ?」


結界に組み込まれていた人魚を1人使って攻撃を開始した。


ーーーやめて。そんな事したくないよ。


「ねえ、いい加減やめなさいよ。その子が可愛そうでしょ」


「何を言う。こいつらの意思なんてないんだ。どう使おうが俺の勝手だ」


「今なら許してあげる。その子を離して、私と一騎討ちしない?」


「今してるだろうが」


「あっそ。言っても無駄なのね」


「この人殺したくないな。なんとかならないかしら?」


「マリー様、それなら私が力貸してあげるよ」


「本当?それなら捕らえられるわね。よろしくね」


アメールがマリーの中に入った。


手の平に炎の華が咲いた。


ーーーマリー様それ始めてみたよ。私でも蕾が限界なのに


ーーー綺麗でしょ。実わね、他にも属性が揃うとお花が色とりどりに作れるのよ


ーーー見てみたい


ーーー今度ね、始めらわよ


「覚悟してね」


「何をしようとしてもこれには勝てないぞ」


「ふふふ、それなら試してみるわね」


炎の華を投げた。

華は彼らの上で花びらとして降り注ぐ


「こんなもの消し去ってやる」


光の光線を花びらに向かって四方八方に放って消えていった。


「ふん、この程度で俺は倒せないぞ」


「本当にそうかしら」


彼の足元に大輪の華が描かれていた。


「蕾に戻りなさい。華よ」


そう言うと足元に大輪の華が盛り上がり彼を包むように蕾の中に捕らえられてしまった。

大輪の華は、属性ごとに効果が違う。炎は牢獄の効果とマグマの灼熱が華には付いている。

その中は私でも触ると溶けてしまうほどになっている。どんな魔法も攻撃も効かない。かけた人魚でなければ解除不可能なのだ。


「これで完了ね。アメールありがとう。殺さないで済んだわ」


「いいのよお安い御用よ。マリー様ちゃんと約束守ってよ」


「約束破った事ないわよ。守るわ」


「それなら良かった」


「あとはあそこにいる人魚達を救って魔法陣破壊しないとね」


「そうよ。あんなのいらないー」


マリーは魔法陣に近づいて手をかざすし、人魚達を1人ずつ救い始める。


まずは光の人魚ね。


ーーー今助かるわ。


ーーーさっきの人ね。炎の人魚と知り合いなら大丈夫ね。よろしくね


ーーーよろしく、始めるわ。少し痛いけど、後で回復するから我慢して。


ーーー痛いの?


ーーーうん、どうしても痛みが出るけど、助けてあげられるから、頑張って。


ーーーわかった。


「エブァン、あれまだ持っている?」


「あれ、ですか?」


「ほら、火神からもらったでしょ?」


「あれですか、ありますよ」


マリーに剣を渡した。


「これこれ、これ便利なのよ。借りるわよ」


「はい、もしよろしければ差し上げます」


「バカね、これは貴方ではないと使えなのよ。今回使えるのはエブァンが許可を出したから使えるんだからね」


「そうなのですか?」


「この剣は、渡された者以外に使うことができない剣。エブァンの許可がなければ触れることすら出来ないのよ」


「そうだったんですね、始めて知りました」


「エブァン貴方ね、私でもこれにはエブァンの許可がないと触れる事できないわよ」


「どうしてです。マリー様ならできますって」


「本当に何も知らないのね。これは貴方の体の一部が刻まれている物なのよ。だから使えないの。それにこの剣が壊れると貴方自身がかなりの確率でダメージを食らうんだからね。気を付けて扱わないとダメよ」


「げ、使えないじぁないですか」


「ちゃんと扱えればいいだけでしょうが」


「うっ!」


「とにかく、借りるからね」


「はい」


なんか不安になってきた。マリー様なら平気だが他の者には貸せないな。


剣を光の人魚と繋がっている線を切った。切った線は、マグマで保護されそのまま残っている。


ーーーぎゃー。痛いよ。


ーーー我慢して、次の人魚行くわよ。


ーーー怖いよ。


ーーー助ける為我慢して。


マリーが涙を流し始めながら線を切った


ーーー痛いよ。助けてー。


ーーーごめんね。辛抱して。次で最後


涙を拭いながら線を切った


ーーーなんでこんな目に合わないといけないのよ。痛い痛い。


急いで回復するわよ。属性ごとに回復を施していった。


ーーーみんな大丈夫?全部治ったと思うんだけど。


ーーーありがとう。いたくなくなったよ。


ーーーうん。体も自由に動けるよ


ーーー体の違和感も消えてる。ありがとう。


マリーは泣いていた。止めどもなく涙が止まらなかった。


「マリー様が泣く事ないよ」


ーーーそうだよ。助けてくれたんだからね


ーーーそんなに泣かれると困るよ


ーーー泣かないで僕達が出来る事するからさ


「人魚達がそう言っているんだから、泣き止んで」


「みんな、なんて優しくて暖かいのかしら。感動してまた泣けてきた」


「エブァン、そんな所で跪いてないでなんとかしてよ。私達は、マリー様が泣くなんて耐えられないよ」


「少しそのままにしてあげる。今のマリー様は、世界が泣いているのと同じなのだから」


「言っている意味がわからない」


「今度説明してやるよ、少しの間だけでいい。見守ってやってくれ」


「…………………」



しばらく泣き続けた。


エブァンが立ちマリーの元に跪いて声をかけた。


「マリー様、そろそろ泣き止んでください。魔法陣を破壊しなくてはならないのですから」


「ヒック!そうね。泣いてはいられないのだったわね」


「はい、きっとマリー様が泣いた事で皆に悲しみが伝わったと思いますよ」


「エブァン、ありがとう。さっさと破壊するわ」


「お願いします」


涙を拭い魔法陣に向き合う。


これが全ての始まりこんなものがあるから現代や異世界がおかしくなるのよ。

こんなものがいらない。


結界をごとに異空間に移動させ破壊をすることにした。


異空間を一つ作りその中に移動をした。


魔法陣を前に唱え始める。


「万物を司れ 時を司れ 時空を超えてつながりを断つ ディランチァ」


ごう音と共に破壊が始まった。これで異世界と現代がつながる事はなくなった。

あと残すのは現代にある16人をここに戻すだけ。

向こうの私は日常を過ごしているし、変わりは特にない。

あるとすれば16人が何かをしでかしている可能性だけだが、今は破壊が終わるのを見届けて、人魚達を元の場所へと戻してあげることが先ね。


全ての巨大な魔法陣は、跡形もなく消え去った。


やっと破壊が終わったはずだった。

この時現代に起ころうとしている事をまだこの時のマリーは知らなかった。

知りたくはなかったのだと後で思い知ることになる。


魔法陣が消えた後に何かが残っている事に気がついた。


「あれ何かしら?」


近づくと小さな人が立っていた。


「貴方だれ?」


「俺が見えるのか?」


「ええ、見える?わよ」


他の人だと見えないという事になるわね


「これは驚きだ、俺が見えるやつに始めてあったな」


「どういう意味?」


「そのままの意味だ」


「え!」


思ったまま聞いてみた。


「私以外見えないの?」


「そうなるな」


「それで貴方だれ?」


「自己紹介がまだだったな、俺は現代の妖精と言ったらわかるか?」


「何ですって!?何で現代の妖精がここにいるわけ?そもそも現代に妖精いたの?現代だっているかもしれないけど、あくまでも神話だったはずでしょ、はぁはぁはぁ」


「質問の多いい嬢ちゃんやなぁー」


「え!よく見たらおっさんだし。関西人なの?って妖精じぁないでしょう。腹巻してるし変よ。断じて認めない。これが妖精イヤー。夢壊れるー」


「落ち着けや。質問多すぎてどこかから話せばいいかわらわやろ」


「落ち着けるわけないでしょう。おっさんが妖精なんだよ。可愛い羽のついた人型って決まってるでしょ」


「悪かったな。おっさんで」


「いや、悪くわないわよ。でもね何というか、がっかりといいますか。何とも言えない気持ちになるのはなぜ?」


「そんなの知るか」


「おい、嬢ちゃん聞こえておるか?」


ダメやな。しばらくかかりそうや」


ちっちゃなおっさん、しかも腹巻しているなんて。

異世界がそうだったなら、なんでもありみたいな所があるから我慢も出来る。

人魚が空泳げるようにできるんだからね。

それなのにおっさん。

なんか泣けてきた。ずっとイケメンやら、可愛いのが多かったせいかここに来てがっかり感が大きすぎる。そこはさやっぱ綺麗な妖精か、可愛らしい妖精が良かったよ。

やりきれない。


このままやと前に進まん


「いい加減にせい」


「ごめんなさい、受け入れるのに時間がかかってしまったみたいね」


「そうや、こっちは待っとるんや」


「それで話を戻すわね」


「ようやくやな」


「現代の妖精が異世界にきているの?」


「それはやな、さっき嬢ちゃんが消した魔法陣に閉じ込められていたのがわいや。ようやく出られたんやけど嬢ちゃんが異世界と言っとたやろ。多分やが飛ばされたという事やな」


「飛ばされた?」


「せや。現代には多くの妖精があるんやけど、現代の妖精が元々いた場所に魔法陣を貼りおうたさかいにそれに巻き込まれたんや、出ようにも出られんでおったんや」


「なるほどね、なら戻らないといけないのでしょう?」


「そう言う事やな」


「戻るすべはあるの?」


「ある事はあるが、ちと厄介なんや」


「なんか考えたくないけど、もしかして現代に戻って魔法陣を破壊しろって言わないわよね」


「お!なんだ嬢ちゃん知っとたんかい」


「やっぱり、そんな事だろうと思ったよ。いやよ。つい最近時計壊したばかりなのに、こっちはこっちでさっきまで大変だったんだからね。少し休ませて欲しいよ」


「すぐに帰らないといけないわけではないんや。ただし……」


「意味ありげな言い方ね。ただし何よ」


「ただしや、わいがここで嬢ちゃんの手伝いはできないんや」


「あーもー、それもどうせ干渉するからダメとか言うんでしょう」


「話がはようてたすかるわ」


「イヤイヤイヤー、いい加減にして。私帰る」


「おい待ちや。わいを置いていっても干渉する事になるから、しばらくは嬢ちゃんの所に世話になるからよろしく頼むわ」


「私に選択の余地ないの?」


「ないわな」


「それとなぜ現代と知っていたのよ」


「それは時空の狭間にわいらは最初から存在していた。そこにいたやつに嬢ちゃんの事も聞いているから知っとるんや」


「もしかして、時の旅人?」


「それも知っとるんやな。そう言うことや」


頭痛くなってきた。


「とにかく、配下の元に戻るからついてきて」


「わかった」


「こっちに来て」


ちっちゃなおっさんは魔法陣がある所まで歩いてきた


テクテク………テクテク


「遅いよ。なんで飛ばないの?」


「人が飛べるわけないやろ」


「いや、人ではないでしょう。おっさん妖精なんでしょ?飛べて当たり前よ」


「妖精だからといって飛べるとは限らんやろうが」


「飛べないの?妖精なのに?」


「うるさいやつや、好きで飛べないのではなくて最初から飛べないんや」


「ふざけてる訳ではなさそうね」


「当たり前や、そんな事でふざけてどうするんや」


「だよね、分かっとるんやったら最初から聞くんやない」


「おっさん頭ハゲてない。フサフサだね。格好はしじシャツももひき腹巻なのにね。腹巻の定番ハゲみたいなのがないだけマシね」


「大きなお世話や」


「私の方に乗って。そっちの方が移動が楽だから」


手をおっさんの前に出すとおっさんは手の平に乗った。


「ここにいて」


「おう」


魔法陣を展開した。


「そう言えばさっきからおっさんしか呼んでないね。名前あるでしょう?」


「わいか?」


「そう」


「わいの名前は八雲だ」


「だからやくもやて」


「もしかして……」


「なんやその目は。誰かと勘違いしているやろ」


「だって、八雲ってねー」


「違うに決まっているやんか」


「そうだよね、妖怪とか偉人とかではなさそうだもんね」


「現代では妖怪が近いが断じてちゃうからな」


「なら何?」


「せやな。何と改めて考えるとわいにも分からん」


「それ、答えになってないけど」


「何でもいいやないか。それより嬢ちゃんの所に行くんやろ?」


「そうだった、みんな待っているんだった」


「それなら、はようしてやらんと可哀想や」


「そうだね。向かうわ」


魔法陣の中に入り、エブァンの元に戻る





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