VSオークのアジト

サキュラSIDEーーー

私の周りには多くの干からびたオーク達…。

私は多くのオーク達を相手にした為か体に力が入らず動けない状態になっていた。


この位の数だと…流石にキツイわね…。

私の全身はオスオークの臭いに塗れ、早く臭いを消し去りたい所だけど体に力が入らない。


しかし意識はあるものだから余計だ。

ちょっと無理し過ぎたかな…?


そんな時。大きな影が数体現れた。


奴らは槍を構えたオーク達だった。


『なんだ干からびたオークの死体の中に小さい女の子がいるぞ?』


『女の子の周りが死骸だらけなんだ、油断するな!』


コイツらもライフティイートで干からびさせてやりたい所だけど疲れてて声を出す事もままならない。


ライフティイートは最後の一体は中々使えず何度かやられてたからな…。


全部は出しておいたけどもうライフティイート使う力は残されてない。


しかしコイツらは私を警戒し、あわよくば一思いに刺そうとしている。


私もここまでかもしれない…。


そんな時、天上から小さな影が舞い落ちてきた。


「ぐあっ!」


二体のオークが気絶して倒れ込む。


『な、なんだ!?』


残りのオークは槍を構えるが小さな影は腹部分に掌底しょうていを撃ち添える。


『ぐほぉ!?』


撃ち添えた掌底の威力が大きかったのかオークは口から唾液を吐き出し、倒れ込む。


(これは…サイコパワー!?)


小柄な体で自分の倍近くある体格のオークを掌底だけでは倒せない。


私は小柄な人物から出る大きな波動を感じ、これがサイコパワーであると見抜いた。


残りのオークは狼狽えている。

その隙に少女は地を蹴って跳ね、オークの鼻付近にサイコパワーを発した。


「ブフゥ!!」


そのオークも少女にサイコパワーを放たれ、鼻垂れながら倒れ伏した。


しかしその少女を私は知ってる。

前まで敵だったカナと言う子だわ。


…となると…。


「オークって図体とパワーの割に動きは遅いからちょっとスピードで押せばこんなものよ♪」


カナは余裕そうに笑う。


カナは私に向き直り、言ってきた。


「ありゃま、随分やられたね、トラテツのガールフレンドさん♪彼氏はどうしたの?」


「トラテツが彼氏?冗談じゃないわ…」


私は漏らす。


「ああ放っとかれたんだ!許せないね!か弱い女の子を見捨てるなんてさ!」


カナはほおを膨らませて怒気を見せる。


「そんなんじゃないわよ…」


私はゆっくりと立ち上がる。

ようやく体力にヨリを戻せた…。


「ところで石から彩華と奈照が話してきたんだけどひょっとしてカナさんの仕業?」


とりあえず気になった事を聞いてみた。


「えーなんのことかなー?」


すっとぼけるカナ。


「彩華は葛子と共に散ったはずだし奈照は死ぬ間際私を恨んでいたはずよ」


私は石を見ればどんな意思を持って亡くなっていったかわかる。

他の人にはわからないけどね。


「ネガティブだな君は、気にしなくて良いじゃん」


この子は何か色々と勘違いしているようね、まあ良いわ。


「まあ良いわ、ドロドロだし体を洗いたいの、少し見張っててくれる?」


「確かにこんな姿じゃ彼氏に心配されちゃうわね、良いわよ♪」


カナの引っかかる言葉は無視して私は手頃なオークの住宅を見計らい、そこで汚れを落とす事にした。


やっぱりオークの風呂だけあり、井戸から組むものとなっている。


そしてどうやら火で温度を調整するらしい。

思いきり古代的でややこしい。


私はそんな時間も無いので水で体を洗う事にした。

うう…冷たい…私はルルイエ人で人間の身体とは違うが一応常温動物なのでそこら辺の水は浴びるなら良いが洗うには少し苦労を要した。


向こう側では何か騒がれているが時間をかけて洗うのを少し許して頂戴。


そんなこんなでようやく出れた私…身体は冷えるけどしょうがない。


「時間かけたわね、行きましょう」


カナの目前にはオークが倒れていた。


「遅かったね、そうそう、この子焼き豚にして食えないかな?」


カナはオークに指差して言う。


「ふざけてる暇はないわ」


「つまんないの、わかったわよ」


カナは拗ねたように返答した。


トラテツSIDEーーー


なんか潤実ちゃんがおっかない…。

トライデント持ってわいを親の仇みたいに見よる。


「う、潤実ちゃんどないしたん!?」


「うるさい!オークをいじめる奴は生かしちゃおけない!!」


いつもの潤実ちゃんとちゃう!

目は怖いし口調も荒い…彩華みたいやわ…。

潤実ちゃんは槍でわいを突き刺そうと向かった。


「やめない!!」


わいは潤実ちゃんの槍を両手で受け止める。


「うるさーい!!」


潤実ちゃんのメイルストロームでわいは壁に撃ち付けられる。


「いたた…」


よろつくわいに更に潤実ちゃんはトライデントを構えて突っ込んできた。


「百烈突き!!!」


ドドドドド!!


わいは体をコンニャクのようにプルプルさせて百烈突きをなんとかかわした。


「ええいすばしっこい!水竜槍!!」


潤実ちゃんは地面に浅瀬を作りわいの足元を水浸しにする。


これでは身動きが取れん。


潤実ちゃんは浅瀬に潜って泳いでいる。

何故か潤実ちゃんは浅瀬の中にいる間は姿を消せるらしい。


(電流でも流したら一発やけどな…)


ほなけどわいは女の子にはよう攻撃が出来らん。

浅瀬から大きな槍が突き出てくる。


「うわあっ!」


わいは槍を避ける。

槍はわいの足元から狙っているかのように突き出てくる。


「潤実ちゃん!オークが一体どないしたんな!??」


わいは地面から狙っているだろう潤実ちゃんに問い放つ。


「オークは人間に食肉にされ、創作では人間が襲われている事にして虐げられているのよ!そんな人間達は許せない!!」


訳のわからん事言よってわいには理解出来ん!


「死ねえ!!」


浅瀬が消えたかと思うと今度は水竜が襲ってきた。


「やめんか!!」


わいはその水竜に殴りつける。


その途端水竜は潤実ちゃんと言う一人の少女の姿に戻るが潤実ちゃんは激しく壁に撃ちつけられた。


「きゃっ!!」


しまった!

と思ったわいは潤実ちゃんに駆け寄る。


「潤実ちゃん!いけるか!??」


あかん当たりどころ悪かったらどないしよ…。


グサッ!


その瞬間、槍がわいの腹わたを突き破った。


わいの記憶が走馬灯のように駆け巡ってくる。


「にゃー♪」


「おーおーめんこい猫やなあお前はトラ猫やけん名前はトラテツじゃ♪」


わいとじっちゃんの出会いは鉄道やった。

わいは誰かおらんの言うて親になってくれるん探しよった。


そこでじっちゃんに会ったんじゃ。


「ほれほれメボシ食うで?」


じっちゃんはわいにメボシをくれた。


「にゃー♪」


「そうかぁ美味いか美味いか♪」


顔は厳つかったけど優しかったじっちゃん。

そんでもってじっちゃんは正義の味方やった。


「なんしょんな!痴漢なんかして恥ずかしいと思わんのか!!」


「すみません、もうしません!」


痴漢に謝らせるじっちゃん、ごっついかっこよかった。


「トラテツ、お前はオスやけん男の子じゃ、男の子やったら女の子には優しいにしいよ、間違っても暴力振るったらあかんじょ!暴力や振るったら男失格なんじょ!」


じっちゃんの力説もかっこよかった。

わいから見たじっちゃんは何もかもかっこようて…漢の中の漢だったんじょ!


その明くる日、いつものようにわいがじっちゃんを玄関まで迎えに行っとったらじっちゃんがごっつい怪我して帰って来とった。


『じっちゃん!いけるか!?』


わいはじっちゃんの傷を舐め、手当をする。


「おおトラテツよ、わいの心配してくれるんか、ほなけどわいは心配いらん、アルデナイデと名乗りよる高校生に早よ家帰れ言うたらこんなボロボロにされたけんどな…」


アルデナイデって徳島の吉野川を中心にたむろしよる暴走グループやないか!


いつも正義を大切にしよるじっちゃんが何でこんな目に…!


許さん…じっちゃんをこんなにしやがって!!


じっちゃんへの愛とアルデナイデと名乗る暴走グループへの怒りを覚えた時、わいの中に何かが芽生えた。


『トラテツよ今こそ目覚めるのだ!お前は只の猫では無い!お前はクトゥルフの戦士!稲妻のクトゥルフなのだ!!』


稲妻が轟いた時、わいは猫の姿から人の姿となった。


それを見たじっちゃんは目を大きく見開く。


「と…トラテツ…お前…」


あれだけ大きかったじっちゃんが小さく見える…わい…人間になったんか!?


「じっちゃん、わいが今仇取ってきたる!」


人に、いやクトゥルフ戦士になったわいはじっちゃんに誓いを放つ。


「いかん!奴らは凶暴なんじょ!お前までやられたら!!」


「じっちゃんは正義と漢気を大切にしよった!ほなけんわいも正義と漢気を大切にするんじゃ!!」


「トラテツー!!」


じっちゃんの声が虚しく聞こえる中、わいは吉野川でアルデナイデと対峙する。


「何だてめえは中坊か?」


「俺達が誰だかわかってんだろうなあ?」


何人もの顔つきの悪い不良共がバイクをパラリラパラリラと鳴らしわいの周りをグルグル走らせながら凄んでくる。


「アルデナイデ…よくもわいのじっちゃんをボコボコにしてくれたな!わいはじっちゃんの仇打ちに来たんじゃー!!」


わいはアルデナイデに突っ込む。


「やるのかー!!」


暴走グループも突っ込む。


「ライジングボルト!!」


「三節剣!!」


暴走グループも色々な特技でわいを苦しめたがわいは猫の時からの俊敏さを活かしてクトゥルフになって身につけた稲妻の異能で何とか撃退出来た。


「覚えてろぉ!!」


暴走グループ達はわいから逃げていく。

ざっと8人位はいて中には女もいたがまあ細かい事は気にせんとこ。


戦って至る所殴られてあちこちは痛むがじっちゃんと同じ正義を遂行出来て、じっちゃんの仇を討てたことに充実感を覚えとった。


ーーー家


「じっちゃん!仇は取ってきたじょ!!」


わいは元気な声でじっちゃんに朗報を知らせる。

しかしじっちゃんは何故か訝しげな表情でわいを睨んでいた。


わいが何か悪いことしたんかな?

わいは思った。


「中には女がおらんかったか?」

じっちゃんはそんな事を聞いてきた。


「お、おったよ?」

わいはいつにもない険しいじっちゃんに怯え声をこごもらせて答えた。


「馬鹿もんがー!!!」


わいはじっちゃんから雷を落とされた。


「女に暴力振るったらあかんてあれほど言よったのに何でそれがわからんのんへ!?か弱い女の子は守るべきであって殴ったらあかんのんじょ!!!」


激しいじっちゃんの怒号がわいの全身に響き渡った。


「……めんよ…じっちゃん…」


わいは嫌われたんか思って悲しいなり、悔しいなり嗚咽をあげて謝ったんよ。


「わい…もう女の子殴ったりせえへん…命をかけて守る…ほなけん嫌わんといて!」


わいの目からは大粒の涙が嫌な程溢れおちる。

それを見たじっちゃんは静かになり、表情は穏やかになった。


じっちゃんも目に涙が溜まって綺麗に見えた。

じっちゃんはわいを優しく抱いてくれる。


「わかったら良えんじょ、わいはお前を息子のように思うとる、ほなけん女の子に暴力振るうんだけはやめよ!」


じっちゃんの暖かい匂いが、温もりがわいの怒られて寂しくなった心を温めてくれる。


「じっちゃん…」


わいはじっちゃんに体を預けて思い切り甘えた。

そして…わいらは共に布団の上へ。


わいらは服を脱いで布団の中におる。

二人で布団に入っとって布団も暖かくて気持ちいい。


その気持ち良さがわいらの漢を盛り立たせる。

わい、じっちゃんが側におるだけでドキドキしよる。


恥ずかしい意味や無くてワクワクするみたいな、繋がりたいて言うな。


じっちゃんもそうやろう、そうであってほしい。

そしてじっちゃんの漢も盛っており、わいは嬉しくなる。


「じっちゃん…あったかい…」


「トラテツ…お前もあったかいじょ…」


わいとじっちゃんは漢と漢を合わせる。

硬い…熱い…次第にわいの蜜が溢れてくる。


じっちゃんはそれを見抜いたんか、わいのとこに手を弄ってくる。


「濡れとる…わいでこんなに感じてくれてお前はわいの自慢の息子じゃ」


「じっちゃん…」


「挿れるじょ…」


じっちゃんはわいと一晩中繋がった。

互いに狂うくらい、初めは痛かったり試行錯誤したけんどだんだん気持ち良うするコツがわかってきて、わいはその度に喜び、じっちゃんを喜ばせた。


そんな厳しいて、優しかったじっちゃんももうおらん、ほなけどわいは寂しいない、今は潤実ちゃんがおるけん。


でもそんな潤実ちゃんは洗脳されとって、わいを仇みたいに攻撃してくる。


ほなけどわいは潤実ちゃんをベストパートナーと思っとんじょ。


ほなけど…。


「間一髪だったわね…」


え?


「全くこんな女の子相手に何手こずってるのよ!」


わいはいつのまにかサキュラとカナ言う子に抱かれとった。


それと潤実ちゃんが槍で突き刺しとんは…木株!?


「忍法変わり身の術ってやつよ!サイキックを舐めてはいけないよ!」


カナは声を張る。


「人間…人間は抹殺!!」


潤実ちゃんはやっぱり何かに取り憑かれとる!?

わいにはそこにおる潤実ちゃんがホンマに潤実ちゃんなんか疑問に思えてきた。


サキュラSIDEーーー


厄介な事になってるわね…。

潤実はオークから洗脳されて人間を敵だと教えられている。


貴女だって人間なのよ、でも地球の生き物って簡単にマインドコントロールされるのね。


こう言うのも滑稽だけどね。

それともっと滑稽なのはこのトラテツ。


気絶させれば済む話なのに何故出来ないのかしら。

貴方なら潤実を倒す事位なんて事ないでしょう?


「人間…殺ス!!」


潤実は槍を構えて私達に突っ込んでくる。


「いい加減にしなさい、サイコボール!!」


カナはサイコボールを放ち潤実は槍を弾かれる。


「くっ、メイルストローム!!」


「きゃっ!?」


潤実がメイルストロームを放ちカナは水色の閃光に巻き込まれる。


激しく壁に打ち付けられるカナ。


「トラテツ!しっかりしなさいっ味方が危機に遭ってるのよ!!」


「いかん…わいに女の子に手を上げる事は出来へん!!」


わかってるわよ、トラテツは女の子に手を上げる事が出来る奴じゃないのよね、でも潤実とカナが傷つけ遭っている。


それを止める事が出来るのは二人より強いトラテツだけなのよ!


「トラテツ!二人が傷ついてもいいの!??」


私は激しくトラテツに発破をかける。

!!!


(潤実ちゃんとカナちゃんが戦いあいよる!互いに鬼みたいな顔になって…何手汚しあいよん!女の子が唸ったり攻撃しあったり醜いやん!)


ようやく気づいたみたいね。


つばぜり合いしていた潤実とカナが互いに後方に弾き飛ばされ、再び一騎打ちしようとした所に身体中に稲妻を纏ったトラテツが上空から二人の間に割り込みに入った。


ドドオオオオオォン!!!


トラテツの落下した床下はめり込み、激しい雷の音、稲光が轟く。


潤実もカナも驚き、互いに向かいあおうとしていたのを止める。


「二人ともやめない!!女の子同士が醜い争いやしよって見てて見苦しいわ!!!」


トラテツの激しい怒号が響く。


ビリビリ…!

少なくとも部屋に振動が走るくらい。


潤実とカナは静かになり、武器を収める。

それで良いのよ、トラテツ。


優しさだけでは人の心は動かせない、時には厳しさも大事なの…。


どっちも極端に向かっては駄目。


トラテツの怒号で潤実の洗脳は解かれた。


「トラテツ君…ごめんなさい…私…」


潤実は洗脳されていたとは言えトラテツやカナを攻撃していたのに罪悪感を覚える。


下手したら殺してたかも知れない。


「わいの事はいけるよ」


トラテツが言いかけるところで


「ボクにはお詫びの一言もないの?」


カナが聞いてきた。


「あ、ごめんなさい、貴女は?」


「カナよ、貴女も一度彼女と戦ったでしょ、私が拐われた時」


私は一応心が読めるのでカナの心を覗けば潤実と戦ってたとわかるのでカナの代わりに答えてみせた。


「え?戦ったっけ…あっ!」


「やっと思い出したの?」


カナは腕を組んで全くと言った感じに呆れた様子を見せる。

カナも私が心を読める事をおぼろげながら理解したらしい。


彩華、奈照の話をしていたからか。


そんな風に平行線なやり取りをしている間カナが話を切り替えだした。


「このオークだらけの街を作ったインスマスがいるの、ボクはそいつをとっ捕まえに来たんだよ!」


「え?そうだったん…!?」


トラテツは裏返った声をあげて驚いている。


「どうしたのいきなり素っ頓狂な声をあげて…」


「いやなんでも…」


(わいに惚れてやって来たんやと思った)


だってさ、そう言う所男の子ね。


「ならトラテツの鼻が役に立ちそうね、トラテツ頼めるかしら?」


「嫌じゃなんでそんな命令口調なん!!」


さっきのが堪えたのかトラテツは不機嫌に非難する。


「喧嘩はやめて!トラテツ君ここはサキュラの言う通りにしようよ」


潤実はオロオロしながら私に助け舟を出す。

潤実もちょっとは成長したかしら?


「だーもうわかったわかった!!」


トラテツは乱暴に返事しながら四つん這いになって鼻で嗅ぎ進んで行く。


私が腕を組んでトラテツについていっているのを後ろから見ていたカナが


「サキュラって子いつも偉そうだよね、いつもああなの?」


と潤実に耳打ちする。

一方の潤実は「ははは…」と苦笑いしながら心の中で嬉しそうにしていた。


潤実…訓練メニューもっと厳しくする必要ありそうね…。


まあ悪い事とは思わないわ、心を綺麗にしようとするとかえって人間にはストレスになりかねないもの。


でも海溝潤実、貴女にはこれからもっと苦しませてもらうわ、だってその為にクトゥルフにしたんですもの…。


私は想像しながら床にあるものを落として見せた。

オークの反応がそこかしらから露わになる。


(クトゥルフ…人間…許すまじ!)


(我々の街を土足で踏み込んで来てここから帰れると思うな!)


オークのおでましよ、獣臭い…私が相手してたのと臭いは同じだわ…。


「ふんどうせ体だけが立派なウドの大木よ!大した事無いわ!」


カナは意気込んでいる。


(私も負けてられないな!)


潤実は槍を構え黙っているが心の中で健気にも戦おうとしていた。


「オークの群れか!」


トラテツもこの状況で臭いを嗅ぎ続ける訳にも行かず、すかさず立ち上がる。


「ほな行くじょー!!」


トラテツの粋な阿波弁が轟く。


「ブオオォ!!!」


オークの群れは恐ろしい形相をし、響き渡る程の咆哮を上げ、斧を振り上げて私達クトゥルフに叩き込みにかかる。


カナ、トラテツはオークに怯まず真剣な真顔で戦闘体勢に出る。


気功拳サイコブロウ


カナのサイコブロウでオークが斧を振るう前に鼻血を出して倒れ臥す。


カナのサイコパワーは自身の拳の威力を底上げさせるエネルギーを拳に作り、敵にぶつける。


その威力はカナの細腕でも石段三段は破壊する程の威力がある。


「わいも負けてられんなあ!ライジングショット!!」


トラテツは両手に稲妻を作り、オークに放つ。


「ブオ!??」バリバリバリ!!


凄まじい電撃がオークに走り、オークは黒こげになる。


まだ数体のオークがいる。


(私が怯んでどうするの!戦うのよ!!)


ここまで引っ張ってようやく意を決した潤実も「でやあああ!!」と気合の声を上げてオークに突っ込み出す。


ツルンッ♪


そして私の落とした「あるもの」に潤実は足を滑らせ、豪快にダイブする。


「痛た…なんでぬかるみが…」


潤実は私の落とした透明な液体に目がいくが潤実がつい手を離してしまった槍は見事にカナの尻に突き刺さってしまっていた。


「何すんだてめえ!!」


カナがオークと間違えたのか気功拳で潤実を殴り飛ばす。


「殺す気か!」


「まあまあ…」


不機嫌を漏らすカナにトラテツが呆れながらなだめる。


そしてカナ、トラテツの活躍によってオークの群れは一通り片付く。


「大丈夫?」


私が潤実を立たせてあげる。


「お前やっぱり足手まといだな!もうクトゥルフやめろよ!!」


そんな時、潤実に尻を刺されたカナが潤実を責めだす。


「カナ、そこまでにしなさい!!」


私はそこで潤実に助け舟を出してあげる。


「潤実だって頑張ってるのよ、今のはたまたま足が滑っただけ!潤実は確かにちょっとトロいけど真剣なのよ!」


「……」


カナは大人しくなる。

一方のトラテツはいつも通りだ。


「潤実、今のは足を滑らせちゃったけど、貴女が頑張ってるのは私はちゃんと見てるから」


私は落ち込んでいる潤実にフォローする。


「ありがとう…サキュラ…」


悪い事したわね…でもこれも私の為であり、貴女の為でもあるの…暫くは続くけど耐えて頂戴。


やがて、親玉がいるだろう大きな屋敷の前に立つ私達クトゥルフ。


ここまで来るのにいくらかオークに襲われ、魔法を使うオークにも苦しめられた。


仕掛けもあり、吹き矢が飛んできたり落とし穴、トラバサミなども仕掛けられ、さっきの失態(私が仕組んだものだが)を口実に殆ど潤実に囮にさせた。


でも潤実には奈照の魔力石があるから平気よね?


潤実は奈照の魔力石に癒してもらう度「奈照さんありがとう」と涙ながらに感謝を述べてた。



海溝潤実SIDEーーー


私ってホント駄目だな…結局みんなに迷惑かけてる…。


クトゥルフになっても同じだよ…。


(そんな事ないわ)


そんな時奈照さんが私を抱き寄せてくれた。


(サキュラと同じく、私も貴女が頑張ってるって事は知ってるから♪)


「奈照…さん」


そうだね…いつまでもウジウジしてちゃ駄目だよ!

蓮香ちゃんだって頑張ってるもん。


嫌われてるのに追われてて、村に連れ戻されて理不尽な仕打ち受ける蓮香ちゃんと比べたら私なんて。


だから私も頑張ろう!


ともあれ私達は親玉、つまりはオークの街を作った者の元まで辿り着いた。


中はゴミ屋敷でハエがタカッておりブクブクに太った人間の男が美少女のTシャツを羽織りパソコンの中のゲームに熱中していた。


「………」


「こんなとこでよう暮らしよるな…」


ある意味感心するトラテツ。


私達はその臭いとかに鼻をつまんでしまうがカナは大声で罵倒してみせた。


「貴様!徳島の自然遺産なる箇所にオークの街なるものを勝手に作り美女を攫わせてはオークにしていき地域を乗っ取った罪で逮捕する!!」


「なっ!?何でここが…やめてー!!」


男は捕らえられた…けど「オークにしていき…」て事は遅かったら私もオークになっちゃってたってこと?


心で思った私にサキュラは説明する。


「そうね、洗脳されて人を殺していくごとにオーク化していく仕組みになってたようね、良かったわね、オーク化免れて」


本当に良かったよ…。

カナに連行されていく男を見送りながら私は思った。


けど私今回も活躍らしい活躍は出来なかったな…。

次回からは本領を発揮するぞ!

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