奪還作戦

サキュラSIDEーーー


海溝潤実はどうやら「やつら」に捕らえられているようね…。


早く助け出してやらないと…。


「ここから先は通さん!」


その時、私達の前に三人が立ちはだかった。

一人は大きな身体、毛むくじゃらの所謂ゴリラ、もう一人はダークブルーの髪に小麦色の肌の青年、もう一人はピンク髪ポニーテールの女の子。


三人ともサーカスの劇団員のような格好をしている。


でも私にはわかるわ、こいつらは海溝潤実と戦ってた三人組。


「ここ通しない!わいら急いどんじょ!!」


トラテツは爪と牙を剥き出して吼える。

私はトラテツに耳打ちをする。


「トラテツ、奴らよ海溝潤実を間接的に警察にパクらせたのは」


「何やって!?許せん!!」


まさか警察に捕まる→オークに襲われる→オークに洗脳されるなんてシナリオは思い浮かばなかったけど不幸体質の海溝潤実ならあり得なくもない事だわ。


とにかく私の役割はトラテツに三人の攻略を手伝う事ね。


因みにゴリラの方がガイ、青年がレン、少女の方がカナね。


「うおりゃーライジングボルト!!」


トラテツが空高くジャンプしライジングボルトを放つ。


「させるかっパラライズ!!」


カナがトラテツを異能で止める。


「うぐっ!動かない!?」


トラテツはカナのパラライズの異能を使われて金縛りで動けなくなる。


「グフフ…」


ガイが大きな身体と相反して小さな赤い目でトラテツを見下ろす。


「な、なんなこのゴリラ…」


動かなければならないのに動けない状況にトラテツは焦る。

その刹那ガイはトラテツの体を掴み出した。


「出るわ!ガイの必殺技!!」


カナが拳を握り目を輝かせて放つ。

ガイの必殺技、それは怪力を活かして人や物を丸め混んでしまいボールのようにしてしまう。


ボールのようにされた人は強い衝撃を与えられれば体は元に戻ると言う。


クトゥルフだと変身は解かれる程度で済むけど生身だと命は先ずないでしょうね。


一方、私はレンを前に対峙している。


「ふふふ女の子に手を出すのは不本意だが喧華様のご命令だ、手加減無しで向かわせて貰うぞ!」


私は残念ながら人を憑依しなくては戦えない。

ならば取る道は一つね。


「あらワイルドなのね、私はワイルドな男は好みなの♪」


私はレンと言う男に媚びを売ってみせた。


「そうかい嬉しいね♪」


ここではまだなびかないのは想定内、あの江戸華喧華に従服する形で従っているんだからね。


従服…しかし私にはあって江戸華喧華に無いものがある!

それは…。


私は着ているドレスを少しめくり肌をチラつかせた。

するとどうだろう、レンはなんと顔を赤らめてきているでは無いか。


しかも下が伸びている。

これは効果ありだわ。


この男は(いかんいかん!平常心平常心…)と念じているけどそこは人間の雄(オス)、本能に理性は勝てないってとこかしら?


ともかく私はレンに流し目を送ってみせた。


「ここじゃ何だから…」


私はレンを誘った。


トラテツSIDEーーー


サキュラちゃんレンと言う奴とどっか行っきょるじょ!


その間わいはガイと言うゴリラの化け物に体丸め込まれよる。


ほなけど甘いわわいが猫人間と言う事をわからんみたいやなあ!


ガイは何も考えず異能を使ってわいを丸め込めようとしよるけどこんなもんな!

こうして…こうして…こうじゃ!


「な、何で!?抜け出した??」


カナが目を見ひらく。


ガイは「ウホ(おかしいぞ?)」と空握りしている。


カナは慌てて


「ガイ!何してんの?相手は逃げ出しちゃってるよ!?」


とガイをポンポンと叩きわいに指をさす。

やはりガイは脳みそはすっからかんじゃ。


「わいにそんなもん通用せえへんじょ!!」


わいはライジングボルト放った。


「そうは行くか!サイコボール!」


カナがそれを止めてライジングボルトとサイコボールが相殺される。


「くっ!やるな…ただの金縛り使いや思ったらあかんな…」


カナにそんな特技もあったとは…。


「その通り!私はサイコパワーの使い手!ただのインスマスと思わない事ね!」


カナは手と手を構えて中心に弾を作る。

そして弾をわいに放つ。


「そんなもんっ!」


わいは宙返りでそれを避ける。

わいは元は猫、身軽な動きが出来るんじょ!

わいはカナめがけてライジングボルトを放とうとした!


カナは焦って身を防ぐ。


ぐぐっ、あかん、わいの弱点がここで出てしもうた!


ぐぐ…わいは女の子には手を出されへん…戦場に情けは無用と言うけんど女の子に手を出すんは男とちゃうてじっちゃんも言よった。


わいは悪い事はせえへん主義で悪い事をしよる奴は懲らしめる。


強きを挫き弱きを助ける、これがじっちゃんのモットーにしよった事でまたわいのモットーでもあるんじゃ!


ほなけん女の子に手を出したらあかん!

出したらじっちゃんにも顔向け出来へん!


「今よ!」


カナが隙を見てわいにサイコボールを放つ。


「ぐわあっ!」


わいはカナのサイコボールにぶっ飛ばされた。


「うぐっ!」わいはカナのサイコボールで火傷を負う。


迂闊やった!ライジングボルトはカナや無くてゴリやらガイやらわからん奴に放つんやった!


しかしサイコボールは麻痺の効果もあるけんかわいは体が痺れて動かれへん。


そんな時に目の前にゴリが。


「今よガイ!こんな奴叩き潰しちゃいなさい!」


ガイは腕を振り上げ、わいを叩き潰そうとする。

あかんっ!


そんな時の事。


ガツーン!!


と頭に衝撃が走った後わいは気を失った。


サキュラSIDEーーー


「き、気持ちいい気持ちいい♪」


レンは喜びながら踊っている。

ここで私の異能を使う時よ!


「ライフティイート!!」


私はライフティイートを使う。ライフティイートは

eat to life (生命力を食べる)と言い男の生命力を吸い尽くす技!


私は淫魔サキュバス、甘く見ない事ね。


案の定レンはしおしおに干からびた姿となり、その場でドサリと倒れた。


そしてトラテツとガイ、カナとの戦場に戻るが…。


トラテツは女の子には手を出せないと言う欠点があり、それを見抜かれたトラテツはカナからサイコボールを喰らう。


サイコボールを食らって麻痺を負ってしまうトラテツ。


目の前にはガイが腕を振り上げ、トラテツを叩き潰そうとしている。


どんな状況かは火を見るより明らかね。


私はガイがトラテツに腕を振り下ろす前に大きめの石でトラテツの頭をガツンと殴り、トラテツを眠らせた。


トラテツがドサリと倒れたその背後には私が何も纏っていない姿勢で大きな石を両手に持っているものだからカナもガイも当然驚くわけで。


「あ、あんた自分の味方になんて事してるのよ!?

?」


カナが相変わらず甲高い声で私を非難する。

ガイも今の状況に手も口も出せずオロオロしている。


人間、いや地球人とは本当に甘い生き物ね。

ガイとカナが狼狽えているその間に私はトラテツに憑依した。


すると逆にトラテツが立ち上がりサキュラが地に身を預ける。


「どうなってんの??」


驚くカナとガイ。


「ガ…ガイ!二人まとめて叩き潰しちゃいなさい!!」


我に帰ったカナはガイに私達を叩き潰すよう大声をだす。


「ウホオォ!!」


ガイは思い切り大地を手で叩きつけようと私達を潰しにかかる。


私はすかさずサキュラを抱き抱え、ガイのハエたたきを交わした。


ガイの手の平が大地をめり込む。

もしあれが当たったら無事ではすまなかったようね。


私はサキュラの体を安全な所に預け、再び戦場に向かった。


「遊びはここまで、覚悟は良い?お二人さん♪」


私はトラテツとなってカナ、ガイを睨む。


「ぐっ、コイツ…さっきまでと様子が!?」


「ウ…ウホッ?」


当然よ、だって私はトラテツの体に憑依したサキュラなんだから。


私の異能の一つ、「憑依」は対象が意識を無くしたり気絶している時に乗り移る事が出来る。


身体能力も憑依した相手と同じになり、スキルを使う事も出来る。


「くっ!パラライズ!!」


カナは構えを取ってパラライズを放つ。

その前に私は宙を舞う。


カナは先程トラテツが攻撃出来なかったのか不敵に笑っていて油断した様子を見せる。


しかしその油断が命取りよ、私がトラテツでは無いと言う事を思い知りなさい!


「ライジングボルト!!!」


私はカナの頭上に雷を落とした。

バチーンと鋭い衝撃音が走り、カナは雷に打たれて全身真っ黒になる。


「女の子に乱暴するなんて…サイ…テ…」


ドサリと倒れ込むカナ。

残念だったわね、トラテツだから女の子に暴力振るえなかったのであって私は違うのよ。


そう言うトラテツも嫌いでは無いけれどその甘さが命取りだって事教えておくべきかしら?


さて、残るはガイね。


私はガイに同時にライジングボルトを放つ。


バチーン!!


しかしガイは涼しい顔をしている。

成る程、一撃やニ撃で倒れそうな相手じゃないものね。


その代わりガイは殺気を撒き散らし私に襲いかかってきた。


ヒョイ!


私はトラテツの身体能力を駆使して身軽に避ける。


ガイはカナとレンの仇を討とうと怒りを露わにし私に襲いかかる。


私はガイの剛腕を次々と避ける。


しかし足が石につまずき、私は地に転がる。

ガイはまた大きな足で私を踏んづけようとした。


ガイは足で一思いに踏み潰そうとするが私は地を転がりそれを避ける。


ガイは怒りで完全に我を失っているようね。

なら貴方にとっておきの墓場用意してあげるわ!


私はガイから素早い動きで距離を離した。


ガイは「ウゴオォッ!!!」


咆哮ほうこうを上げながら私を追う。

ダダダダダダダダ!!!


風を切るような速さ…トラテツ、甘い性格を除いたら良い戦力ね。


しかしガイも負けていない。

ガイは巨体に似合わず動きは俊敏、そしてあの破壊力も力の強さだけで無く俊敏性も無ければ出せないもの。


しかしガイの頭の弱さ、それは命取りだったようね!


私はある所まで走り抜けると後方に大きくバク転をした。


そこは谷底、私はその目前に来るまで全力疾走で駆け抜け、ガイがその後を追い目前に来た所で後方に大きくジャンプしたのだ。


ガイは私の狙い通り谷底直前に足をつけてそれに気づいたのか懸命にバランスを取って地に戻ろうとする。


私はそうはさせまいと空中にいてバランスを取って丘に戻ろうとしているガイの大きな頭を足で蹴って谷側に押し出す。


「ウホオオオオォ!??」


案の定、ガイは谷底まで真っ逆さま。

後はこの体を戻すだけね。


私は魂を戻しにサキュラが眠っている所に足を運んだ。


しかし…。


「オホホホホ!この娘は頂いていくわ!!」


!!!


何と江戸華喧華が私の体を抱き抱えていたのだ!

不敵な笑みを浮かべる喧華、抱き抱えられ眠っている私。


でも私にとってはこれも好都合。


だって江戸華喧華は彩華、奈照の魔力石を同時に持ってるんですもの。


しかしもう一人の魔力石は使い物にならないと放って置いたようね。


でもそれで十分、サッサと魔力石、そして自身の身体を取り戻すわよ!


サキュラSIDEーーー


勝ち誇ったように江戸華喧華が私を抱き抱えている。


どうやら江戸華喧華は私の後を追っていて私とトラテツを捕らえるつもりだったようね。


でもそうは行かない!


私は自身の身体も、そして喧華が今持ってる奈照と彩華の魔力石を取り戻す為に喧華めがけて突っ走る。


「来させるか!喧嘩百砲!!!」


喧華は無数の拳を私に放つ。

私はそれを避ける。


喧華は来させるかとばかりに拳を矢継ぎ早に私に繰り出すが私は避けながら喧華に距離を詰めていく。


「くうっ、すばしっこいわね!火炎乱舞!!」


喧華は彩華の魔力石を使う。


「もらった!!」


私は喧華が魔力石を使おうとした隙を見て手を振り上げ、彩華の魔力石を取り返す。



「くっ!この野郎!!」


喧華はサキュラから手を離し、私に飛びかかる。


「捕まるか!ライジングボルト!!」


「うおっ!」


私は喧華の頭上に雷を降らせ、喧華はそれによって身を防ぐ。


私は手を離されたサキュラを自身の手に取り戻す。


私はすかさず彩画の魔力石をネックレスのチェアーに通し、それを首にかける。


「うおおおっ!!!」


喧華が襲いかかってくる。

そして私は彩華の火炎乱舞を喧華にお見舞いして…あらっ!?


都合の悪い事に私とトラテツは入れ替わってしまった。


何を隠そう、憑依とは対象が目を覚ましたり意識を取り戻してしまうと身体が自動的に入れ替わってしまうのだ。


「ぷぎゃっ!?」


目を覚ましたトラテツは喧華のパンチで顔面をえぐられる。


殴り飛ばされるトラテツ。


「な、何があったん??なんでババアこんなとこおるん?」


痛がりながら立とうとするトラテツ。


喧華が仁王のようないで立ち、殺気を湧き立たせながらトラテツの前に立つ。


「わ、わいおばさんになんか悪い事したん?」


トラテツは顔を青くして喧華を前に蛇に睨まれた蛙状態になる。


このままではいけない!

私は武器になりそうなのは何処かに落ちていないか探る。


すると何故かサバイバルナイフが落ちているのに目が映った。


喧華はトラテツに掴みかかろうとしている。

トラテツはテンパっていて何も出来ない。


私は一思いに喧華の太ももをナイフで突き刺す。


私は力の限りナイフを喧華の太ももにググッと押し出す。


「このガキャア!!」


喧華の剛腕で私は殴り飛ばされる。

凄い威力ね…危うく意識を飛ばされる所だったわ。


「お前わいの前で女の子に暴力振れよったなあ!!!」


トラテツも私が暴力振るわれたのが逆鱗に触れたようで喧華にライジングブローを放った。


「生意気なガキめ!二人纏めて魔力石にしてやる!!!」


トラテツと喧華が戦おうとしているけど正直今のトラテツに勝ち目は無い。


それに喧華と戦うよりもしなければならないことがある。


「トラテツ!奈照の魔力石は喧華が持ってるわ!コイツと戦うよりも石を奪う事を考えるのよ!」


「ほなけど…ぐあっ!」


喧華とトラテツの攻防戦の最中、正直私が口を挟むのは得策では無いけどこのまま戦って倒されて貰っても都合が悪い。


ここはトラテツに奈照の魔力石を奪い返す事に全力を注いで欲しい。


しかし今の所トラテツは喧華の前に防戦一方だ。


「トラテツ!首にかけてある赤い魔力石を握りなさい!」


私はアドバイスをトラテツに送る。


トラテツは何で首に石がかけられているのかに戸惑ったがそれを私の言う通り握ってくれる。


すると炎が蛇のように宙に舞い、喧華を後ずらせた。


これで喧華の動きを止める事が出来た!


「今よ!奈照さんの魔力石を奪い返すの!!」


「魔力石…あれか!?」


トラテツは白い魔力石に目が行く。

すかさずトラテツは俊敏な動き、盗みのテクニックで喧華から奈照さんの魔力石を首から引きちぎる形で奪い返す。


「なっ!魔力石が!?」


狼狽える喧華。


「さあっ、今のうちに逃げるのよっ!!」


私とトラテツは走り去った。


「おのれっ、待て…!!」


追いかけようとした途端喧華の右太ももに痛みが走る。


太ももには先程私が突き刺したナイフが刺さったままとなっている。


喧華は自身の太ももにナイフが突き刺さったままなのを引き抜く。


「あのガキ共…次見つけたらボロボロにしてやるわ-」


喧華はガマガエルのような顔を一層醜悪にして漏らした。


海溝潤実SIDEーーー


私は部屋から出た後多くの子供のオークが私に駆け寄ってきた。


「キャッ!どうしたの!??」


私は多くのオークが泣きながらすがっているのに少々驚く。


『お姉さん!僕達オークの仇を取って!』


『人間がオークを悪い奴と決めつけて僕らをいじめるんだ!!』


『人間の女の子がオークに襲われたと嘘を吹き込んで人間がいじめてくるんだ!』


やや戸惑う私に後ろから大きなオークが私に話してきた。


「この子達もまた人間から酷い目に遭ったんだ、どうか我々の仇を討って欲しい…」


私…よくわからないけどこれで皆んなの役に立てるのなら…私はオーク達の話を聞く事にした。


そんな私の後ろで大きなオークが顔をニヤつかせているのを、その時の私はまだ気付かなかった。


私はこの子達の話に涙線が熱くなり、この子達を助けてあげたい気持ちでいっぱいになった。


この子達は人間と仲良くしたいと思っていて頑張ってた…なのに人間はそれを認めずにオークを迫害し、いじめてきた。


私はこの子達を手を広げて抱き止めた。


「大丈夫よ、お姉さんが君達の仇を討ってあげるから!だから元気出して!」


「うわああんお姉さん!!」


ああオークでもこんなに肌が温かいんだ、それにこんな可愛い子達を人間がいじめるなんて…許せない!


私が絶対仇を討ってあげるからね!


サキュラSIDEーーー


徳島の山の麓、剣渓を目指す。

そこに海溝潤実の捕らわれている「オークの街」があるからだ。


凄い速さで流れる川、岩ばかりの絶壁の地。

そのずっと天上にオーク達が人間に狼煙をかける準備をしている。


海溝潤実はそれに使われていると言う。

しかし海溝潤実、気付くのよ、これがあるインスマスの策略だって事を!


私達は岩山の中の街のとある広場に着く。

ここから先はトラテツ一人に行って貰う必要があるわね。


「トラテツ、私は敵を引きつける、ここから先は貴方一人で行きなさい」


どこに敵が潜んでいるかわからないし今も私達の匂いを嗅ぎつけているオーク達が多くいる。


あ、今のは駄洒落ではないからね。


「え?ほなけどサキュラちゃん一人でいけるん?」


「私よりも自分の事を心配しなさい、女の子に手を出せないのは良いけど戦場でそんなだと真っ先にやられてしまうわよ!」


私はキツくトラテツに言って聞かせる。

それで結構悪く思われたりする事もあるけど。


それと私と海溝潤実が喧嘩し合う仲ってイメージ持たれてるけどそんな事は無いから。


寧ろ海溝潤実がやられてるから。


それとトラテツも口答えしだしてるし。


「何やって!?わいは女の子には手を出さんて信条なんじゃ!これはじっちゃんも大切にしよった信条でな!!」


トラテツがムキになって口答えしていると…。


『トラテツ!今はサキュラの言う事を聞いてサッサと潤実を助けに行って来い!!』


突然可園彩華の声が聞こえてきた。


『そうよ、そうしている間にもオーク達が私達の元へ嗅ぎつけているわ!潤実ちゃんを助けてあげられるのは貴方だけなのよ!』


次いで軽間奈照の声が。

魔力石からなのか、どこからなのかわからないけどこのような事もあるのか。


これは私にも想定外の事だった。

しかしこれに驚く暇など無い、トラテツには潤実を助け出して貰わないと。


トラテツに私の異能の影響を受けて貰われると困るから…ね。


「だあっ!わ、わかったよ!!」


トラテツは半分ムキになったように階段を駆け上る。


可園彩華、軽間奈照…感謝するわ…それと軽間奈照…貴女は私を恨んでたんじゃないの?


いえ…なんでもないわ…私はオークをここで惹きつける。


トラテツ…海溝潤実を頼んだわよ!


私はオスを惹きつけるバタフライ・ダンスを踊る。


♪蝶々になって


どうか破り捨ててくれないかパッケージ 息ができないよ

手垢弄る指紋の跡は拭ったとて消えはしない


こんなもんかと見定めたなら あの大人たちと瓜二つ

籠に詰められると同じだ 空はこんなに広いのに


鮮やかだったな

日々という鱗粉纏って


僕ら蝶々になって

甘い誘いに乗ってしまおう

僕ら蝶々みたいに

踊って喰われて華のある暮らし


判断にお任せ 君は怒ってばかり

もうどうでもいいや 好きに生きてみて?

残忍な言葉で御託を並べても 素直に生きりゃ馬鹿をみる


目障りだとか

日々落ちる鱗粉払って


僕ら蝶々になって

ひらりひらり 交わしていよう

僕ら蝶々みたいに

踊って喰われて華のある暮らし


損得感情無しでは無理です

化学反応期待されても

爛漫払ってしまった代償

望んでた状況は何処

他人の不幸で蜜吸う阿呆

明日も胡蝶の夢をみていよう

春には白い羽を持って

お前の家に迎えに行くよ


羽ばたけたなら

好きなだけ

遊びに行こうね


僕ら蝶々になれず

汚い地面に這い蹲って

僕ら蝶々になれる

拙い蛹じゃ くたばれやしない


すると多くのオスオーク達が多くの唾液を垂らし、我慢の証を携えながら醜悪なオスの臭いを撒き散らしてやってくる。


私は踊り終えて汗で体が僅かな光に照らされている。

そして体の隅々からはメスの匂いが漂いオスを惹きつけている。

私は更に多くのオスのオーク達に流し目を送り、誘惑の声を放つ。



「可哀想に…これだけ溜まっていたのね…纏めて私が相手してあげるわ…かかってらっしゃい…」


私は多くのオスオーク達を相手にした。


トラテツSIDEーーー


今のは彩華と奈照の声やったんかなあ?

ようわからんけどこの魔力石も感情があるんやな!


なんてたって彩華と奈照の…。


あかん涙出てもうたわ…。


わいも今も見守っとるだろう彩華さんと奈照さんの為にも漢見せたらなな!


上の階にはオークがまだおる。

わいはそいつらを雷の異能や身体能力で翻弄する。


『逃すなー追えー!!』


わいを侵入者とみなして追ってくるオーク共。

ほなけどわいは行き止まりに出くわしてまう。

あかんどこ行ったら良えんな!


流石のわいも袋小路についてしまい、まごついてしまう。


そんな時の事、わいの足元に穴が現れ、そこから小さい手が現れてわいはその穴に引きずりこまれた。


ドサッ!!


わいは咄嗟に猫になって一回転して着地した。


危なかった、人のままやったら尻餅ついとったわ…てかなんでわい猫になれる事思いつかんかったんやろ?


「危なかったねー、もう少しで君オークに捕まってたよ!」


明かりが灯しだす。


「だ、誰な!?」


女の子の声がしたんでわいは振り向く。

そこにはあのポニーテールの女の子が高台に座って笑っていた。


「お前はカナ!?」


何故かカナがここにいた。


「それにしてもキミやるねー、女の子には手を出せないフリしながら突然の雷撃、そしてゴリラをも身軽に翻弄して谷底に落としちゃうんだから♪」


「な、何の話しよんな?」


わいには覚えが無い、わいはカナらと戦っとる時いきなり頭に衝撃が走って目が覚めたら喧華言う奴が襲ってきとってそれ以前の記憶が無いんじゃ…。


「またまたトボけちゃって♪まあアイツら元々好きじゃなかったし喧華ともこれでオサラバ出来たわけだしボクとしては万々歳だよ!」


カナは少し混乱しとるわいをさしおいてマイペースに語る。


「でもこれで貸しが出来ちゃったからこれでチャラだね♪」


カナはニコニコしながら言う。


「そ、そんなんせんだってわい猫になって逃げられたし…」


わいはほおを赤らめながら腕組みして強がる。

女の子に助けられるなんて男の恥やん!


「あー無理無理、あそこはクトゥルフかそうで無いか見分ける装置が至る所に付けられてるから例え猫でもクトゥルフなら瞬間で捕まってたよ!」


カナは説得する。

まあ猫になれるん思いつかんでダラダラさせた作者も作者やけどな…。


「ともあれこれでボクが手助け出来るのはここまで、じゃあ頑張ってきてね、トラテツ!」


そういうとカナは立ち上がる。


「え?もう行くんか?」


わいはすぐに行こうとするカナに思わず呼び止めてしまう。


「何言ってるの?君はこれから海溝潤実を助けに行くんでしょ!それとサキュラという子にも宜しく言っといて!」


そう言うとカナは部屋から去って行った。


何やったんやろなカナって子。


ようわからんけど作者の気が向いたらいずれまた出会えそうな子やな。


ともあれ次会ったら礼言わなな。

こうしちゃおれん!早よ潤実ちゃんを助けに行かな!


わいは潤実ちゃんの匂いを嗅ぎ分けて彼女を探す。

人では通れそうに無い所から潤実ちゃんの匂いを感じたんでそこから潜っていく。


どこまで続いとんやろ?


しばらく潜ると網目のマンホールの下の部屋に潤実ちゃんが鎖に繋がれ、やや肌地の多い白いドレスを着せられている姿があった。


わいは猫のままでは網目のマンホールはようどかさんけん人間になってそれをどかす。


ぐぐぐ…。

やっぱり重いなあこれ…。


ようやくどかしたわいは潤実ちゃんのおる部屋に着地する。


周りカビ臭いし薄暗い、こんな部屋にずっと閉じ込められとったんか可哀想にな!


わいが鎖を外した時潤実ちゃんが目を覚ました。


「あ、潤実ちゃん!目覚ましたか?」


わいが声をかけようとした時突然潤実ちゃんはクトゥルフに変身しだす。


「う…潤実ちゃん!?」


「うぅ…人間…我々オークの敵…!」


潤実ちゃんはなぜか敵意を剥き出しにしてトライデントをわいに向けて構えていた。

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