不良の友情

江戸華喧華SIDEーーー


生意気にも私より半分しか生きていない若造達が私と戦おうとしてくれてるじゃないの。


しかも不良である事を自慢にでもしている。

不良なんて自慢出来る事じゃないわ、ただの人生の落伍者よ。


それもわからない愚かな娘達。

私が思いっきり教育してあげる必要があるようね。


私は愚かな不良達が立ち直れるように指導教育をする事にした。


「行くぜおばさん!!」


彩華と名乗る小娘は二丁のトンファーを手に持って炎を纏いながら私に向かってきた。


ビュンッ!


彩華のトンファーの一振りで私の髪が僅かに切れる。


それだけの威力…当たれば致命にあたるわね。

しかし今の私には貴女の攻撃が見えるわ。


彩華の次の攻撃で私は彼女のトンファーを手で受け止めた。


ニイ…!


彩華が口元を上にあげる。

その時トンファーに凄まじい高温が襲ってきた。


「熱っ!」


私は思わず手を離す。


「アタイは炎の異能を持つクトゥルフ!アタイの触れた物はどんな物も高温にする事が出来る!」


彩華…炎のクトゥルフ…油断ならないわ。


「そりゃ!行くぜババア!!」


彩華は間髪入れずトンファー攻撃を矢継ぎ早に繰り出す。


炎が舞い、私の服が黒くちぢれる。

受け止める事が出来ない、なら避けるしかないようね。


トンファー捌き、素早さ、そして威圧…不良でなかったら貴女は正義の味方として申し分のない逸材だったでしょうね。


しかし彩華、貴女の攻撃は見切ったわ!


私は彩華の攻撃を受け流し、僅かに手の空いた所に拳を入れた。


「ぐはっ!!」


彩華は私の拳で飛ばされ、大地に滑り込む。

ふん、出直してきなさい!


「姉御!てめえ!!」


今度は葛子が歯向かってくる。

彼女はキューティーBUSU、ミラーチェンジという能力の持ち主ね。


だけどミラーチェンジと言う特技なんてここで使う意味なんて無いわよ?


「魔神旋風拳!!!」


葛子は魔神の如く旋風を身に纏って変幻自在な打撃戦を繰り出す。


「やるじゃない、ミラーチェンジで可愛い子と入れ替えて客を集めるだけの卑怯者だと思ってたわ」


私は葛子の太い図体からは想像も出来ない身軽な動きと技のキレに感心を示した。


「ミラーチェンジだけが特技じゃない!私は姉御についていくためにあらゆる拳法を習って会得してきたのだ!!」


だがまだまだね。


「ふんっ!」


私は回し蹴りで葛子を蹴り飛ばした。

向こう側の壁に叩きつけられ、壁はその勢いで崩れる。


「諦めなさい、貴女達ごときに私は倒せない」


私は不良達に睨み、言い聞かせた。


「確かにアタイらじゃお前には勝てないかも知れねえ…」


「だけどここで後には引けねえ!私達は不良なんだ!!」


彩華と葛子は今度は二人がかりで私に向かってきた。


火炎天烈拳かえんてんれつけん


「雷神マックスブロー!!」


私は矢継ぎ早に小娘達が攻撃してくるのを受け流す。

しかし中々コイツらはチビらないで私に歯向かって来れるわね、その度量がありながら不良なんて勿体ないわよ!


「喧嘩百砲!!!」


私は拳法で纏めて二人を可愛がった。

見事に二人は飛ばされてくれる。


さて、これだけ叩いたら起き上がって来れないわね。

私は二人に歩み寄る。

しかし二人は立ち上がる。


「アタイは負けやしねえ!奈照さんや…仲間達の為にもな!!」


「あっしも負けねえ!姿形が醜かろうと認めてくれる姉御がいるからな!!」


こいつらはゾンビなの?


「上等じゃない!この私が認められないのなら認めるまで調教してやろうじゃないの!!」


「うるせえ!てめえみたいなババア誰が認めるか!!」


「おうよ!顔だけでなく心まで醜いババアにはあっしらの不良道を知られてたまるかってんだ!!」


何処までも生意気な小娘達、ならこの世から消滅させるしか無いようね!!


「ぬおおおぉ!喧嘩千砲!!喧嘩剛圧拳!!魔神旋風脚!!」


私はありとあらゆる奥義で二人を抹殺にかかった。

しかし二人はどれだけ倒しても起き上がる。


これが不良道と言う奴なの?


私の知る不良は怠惰で正義感のカケラもなく、弱い者をいたぶるのだけが生きがいのロクでなしじゃ無かったの!??


「貴女らは何故そうしてまで不良を続けるの!??不良なんてやっててもロクな事なんて無いのよ!」


血だらけ傷だらけになりながらも立ち向かう二人の不気味な小娘に少し狼狽える私。


「そうかもなぁ!だがアタイらは強きを挫き、弱きを助ける不良としてロクでもないルールを破って生きてきたんだ!!」


「不良は悪い奴ばかりじゃねえ!それを姉御は教えてくれた!それに姉御につく不良達もみんないい奴だった!不良はアンタが思ってる程ロクでなしじゃねえんだよ!!」


小娘達は何度も私に歯向い、何度も倒される。

いい加減疲れた、早い所ケリを付けちゃいましょう!


「「どりゃーーーーアタイらがいなくなっても悪は不滅だあーー!!!」」


「うおりゃーーーー正義は必ず勝つのよおおおおおおおぉ!!!」


私と小娘達の闘気がぶつかり合い広範囲に渡って爆破を起こす。


大地にヒビが割れ、草木が砂と化し、電撃が周囲を走る。


そして雌雄は決された。


サキュラSIDEーーー


私はこの瞬間感じ取った。

二つの命が朽ちる瞬間を。


「どないしたん?」


トラテツがとぼけた表情で聞いてくる。


「なんでもないわ、早い所潤実を助けに行きましょう」


あえて何があったのかは言わない方が良い、これから厳しい戦いが待っているのだから。


それに、二人のクトゥルフ戦士達の思いは無駄にするわけにはいかない。


私達はインスマスと戦い、インスマスを立ち直らせる為の組織なのだから!


可園彩華SIDEーーー


「クソが!」


喧華のババアが唾を吐きかける。

唾は私に吐きかけられるが正直、避ける力も拭う力も私には残されていなかった。


「あ…姉御…」


葛子の息絶え絶えな声が聞こえる。何処にいんだ?あ、そこか…お前もボロボロにされてんな…。

元々ブサイクだがもっとブサイクになってるぞ…。

アタイもきっとブサイクになってんだろな…。


「あっしは最後まで姉御といれて幸せッス!」


この野郎…最後の最後に泣かせてくれるじゃねえか!


「ああ、アタイもだ…」


私らは残されていない力を振り絞って手と手を触れ合う。


「喜べ葛子…私らは…勝ったんだ、あのババアにボコボコにされても最後まで意地張れた…」


「そうっスね…あっしらの不良魂は…あのババアなんかに打ち砕かれやしないっスよね…」


そうだ、最後の最後まで私らは戦い抜いたんだ…。

一重にアタイがここまで意地張れたのもお前のおかげだ。


アタイ一人のままだったら命乞いして助かろうとしてたかも知れない…いや有り得ないけどな…。


「愛してんぜ…また地獄で会おうや…」


「はい…鬼のいる前でも…盃交わしましょうや…あっしも愛してんぜ…」


そして互いにほほえみ合い、アタイらの意識は途絶えた。

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