生まれ変わった私!


海溝潤実SIDEーーー


「ふうーあったかーい♪」


私は訓練後風呂で汗を流していた。

ドラゴンやっつけた後のトラテツのビックリした顔が面白く思わずクスリとしてしまった。


眉山の渓谷にてーーー


ドラゴンはここを乱すものは許さんと言っているかのように私を襲う。


しかしね、私はもうあの頃の私とは違うのよ!


「えーーーい!!」


私は空高くジャンプする。

目の前には怒気を露わにするドラゴンの表情。


ドラゴンは口から閃光を放つ。

私はバリアでそれを防ぐ。

訓練の結果バリアをシールド状に備える事が可能になった。


名付けてアクアシールドだ。


私はもう片方に持ってる槍でドラゴンの顎元を刺す。

ドラゴンは暴れまわり私を槍ごと弾き飛ばす。

飛ばされている間も私はドラゴンめがけてメイルストロームと言う青い鳴門状に渦巻く閃光を連続で放つ。


かつてはメイルストロームの発動に溜める必要があり時間がかかったが訓練に訓練を重ねた結果メイルストロームを連続で放てるようになっていた。


ドラゴンは私をゴキブリをはたくように鋭い腕で私を地に叩きつけようとする。


「そうは行くか!」


私は今度は地上にメイルストロームを放つ。

私はメイルストロームの威力も手伝って宙に浮いてドラゴンの腕を躱す。


そしてドラゴンの体力をメイルストロームで消耗させた後、トドメの水竜槍と百烈突きの重ね技でドラゴンを制する事に成功した。


「どんなものですか!」


「潤実ちゃん…すごいじょ…!」


トラテツは口をあんぐりと開けて目は二重丸となった状態だった。


その顔が面白くてついクスリとしてしまった。

これでサキュラや彩華さんも私の事見直してくれるかな?


彩華さんには何度か助けて貰ったけど私には冷たい…私が鈍臭いから仕方がないな…。


それと私がここまで成長出来たのなら江戸華さんもあそこまで邪険にならなかったよね。


私は自分が成長出来たのを噛み締め、私にも味方がいると感謝の気持ちに浸っていたそんな時の事だった。


サキュラSIDEーーー


今日は何だか怪しい気配が外から漂ってくるわ。


心霊的な意味じゃないんだけどカンってやつかしらね?


ん?何か中に入ってきた気がするわ…これはひよっとしてドロボウ…?


私は怪しい者が家の中に侵入したことを悟り、その気配の場所まで音を立てずに進む。


ん?そこは風呂場じゃないの、痴漢かしら?

いや、目的はそうでは無いみたいだけど…これは呼び止め無いとならないみたいね。


「何をヤッているの!?」


私は対象に向けて声を放つ。

その対象は潤実の着替えの中に紛れ込んでいる一つのネックレスを手に持っていた。


あれは軽間奈照の魔力石!?


一見確かに高値で売れそうではあるが(あってはならないが) 何故目的がそれなのかはわからない。


しかしそれを盗まれる訳にはいかない!


海溝潤実SIDEーーー


「何をヤッているの!?」


サキュラの声?何って風呂だよ?何もヤッてないよってそこじゃないよ!


向こう側は模様付けガラスで良くは見えないように出来ているが何かバタバタと言う音と何か向こう側で大きな動きをしているのが見えた。


これは只事じゃない!?


「何なの!??」


私は咄嗟に浴室のドアを開く。


そこには何故か気絶させられたサキュラを一人が抱え、もう一人は奈照さんの魔力石を手に持った男、合わせて二人の黒ずくめのスーツに顔を隠した姿の男達がその場から逃げようとしていた。


こいつら、泥棒!!?


「待ちなさい!!」


私はクトゥルフ姿に変身してサキュラと奈照さんの魔力石を奪おうとする男達を追う。


外に飛び出す男達と私。


「コラ待てー!!」


服着るの忘れてるけど今更戻って服着る暇なんかない!


サキュラと奈照さんの魔力石は泥棒あいつらの手に渡らせるわけにはいかない!


ハァハァ…すばしっこいわねあいつら…ならば!

私は両手に印を結びメイルストロームを放った。


水色の閃光が渦巻き泥棒達に襲いかかる。

その瞬間、男達は横に避けた。


くっ!避けたの!?やるじゃない!しかし奴らは…。


あれ?私取り囲まれている??

なんと私は三人の男達に取り囲まれていた。


私は槍を構えて目線を三人代わる代わるに向けて警戒する。


一人は大柄の男、もう一人は中肉中背の男、そしてもう一人は背の低い男だった。


しかしサキュラ、奈照さんの魔力石は男達をみわたせてもその姿を確認する事は敵わなかった。


「サキュラと石はどこへやったの!??」


私は三人に取り囲まれながらも放つ。


「我々はある方の命令に従っているまで!お前に恨みは無いがお前は俺達が始末させてもらう!」


男達はジリジリと私に詰め寄る。


「やれるものならっ!!」


私は住宅街の景色を一変、浅瀬に変える。

ビシャビシャと腰まで浸かるくらいの浅瀬にいるのに戸惑う男達。


「な、なんだこれは!?」


これでこいつらは自由に動けない。


後は私の足は魚の尾びれとなり、槍を構えた上半身をそのままに浅瀬を飛び回るのに動ける姿に変身。


「オーシャン水竜槍!!」


私は浅瀬の中に足を取られている男達を槍で突きにかかる。


ひとジャンプ、ふたジャンプ!


男達は必死に避ける。

そのすばしっこさが果たしてどこまで持つかしら?


私は避け惑う男達を翻弄するように魚の尾びれで朝瀬を力一杯蹴り、空高く舞う。


そして腕に構える槍で一突きにかかる。


ガシッ!


しかし突きにかかる私の槍は大柄の男が片手で受け止めてしまった。


「あくびが出るぜ」


男はそう言ったあと私を槍ごと空中をポイと投げてしまう。


くっ!クトゥルフの私を馬鹿にしてくれちゃって、これでも喰らいなさいっ!


私はメイルストロームを放とうと構えた。


「そうはいくか!」


その時、小さな男が私の目前まで跳び上がり、両手を私に向けて構える。


「金縛り!!」


小さな男の両手が光ったかと思うと私は体が痺れ、ピクリとも動かなくなった。


「メイルストロームが…放てない…?」


私の体には電流がびりびりと虫が這うように電気の糸が走り麻痺しているのに気づく。


「私は術使いのカナ!術封じとも言われている!お前のやろうとしていることなど既にお見通しだ!!」


甲高い声、それと小さな体の正体は女性のようだ。


そして小さな男じゃなく女もといカナに次いで中背の男が飛び上がり、私の目前に。


そして「俺は連続攻撃の達人レン!俺の自由自在の拳法を食らうが良い!」


どかかかかかか!!」


中背もといレンは空中にいるにも関わらず目にも止まらぬ速さで蹴りを放ち私を翻弄する。


(空中にいるのに器用に蹴りを、それにこの素早さとセンスは何処から来るの!??)


「驚いた?レンは普段の連続攻撃の速さもさる事ながら空中戦こそ彼の真髄と言っても良いわ!」


カナが強気に言い出す。


「そういう事だ!俺やカナばかりに目立たせるといけないんでもう一人紹介するぜ!!」


「があっ!」


レンがそう言うと今度は勢いよく宙返りをし、棍棒のようにその足で私を地上に蹴落とした。


女の子になんてことを…サキュラはクトゥルフになったら男も女も関係ないなんて言ってたけど…。


私は重力に従うしか出来ずそのまま地上に落下してしまう。


この速さで地上に叩きつけられたら私は瞬時にお陀仏…しかし私は脇を掴まれ、地上に叩きつけられるのは免れたがその代わり脇にヒビが入ったんじゃないかと思うほどの痛みが襲ってきた。


「ーーーーーーー!!!」


「キャハハこの人の顔おもしろーい♪」


声が出ないんですが…それとカナちゃん?人の不幸を見て喜ばないで頂戴ね。


「ウホッウホウホウホウホウッホ!」


「俺は怪力使いのカイだ!俺の腕力ならどんな鋼鉄も丸め込んでしまうし人間をボールにしてしまうことも出来る!」


カイとやらはウホウホとしか喋らずレンがわざわざ注訳をしてくれる。


それとこいつが私の槍を片手で受けた時の「あくびが出るぜ」ってレンの声だったのね。


ご親切にレンありがとうじゃない!

親切なら私を助けてよう!


そう突っ込んだ矢先カイは私の体をグリっと前に折りたたむ。


ボキボキボキ…!!


骨が鳴る音と苦痛が私を襲う。

こいつ…人間には骨がある事わかってないようだ…。

カイはこの後も遠慮も無しにグリグリグリグリと粘土のように私の体を丸め込んでしまう。


痛ててててててて!!!


前が見えん…それと向こうからは「ばっちいな…」とか「姉さん、こんなに溜めてたんだ」とか聞こえる。


本来なら緊急に病院行きだからね、しかもいつ治るかわからない…生身だと絶対死んでる…。


死んだ方が楽だ…私は今地獄の苦痛に喘ぎボール状となって身動き出来ない状態にされているのだから。


三人は目前のボール(私)を見て囁き合う。


「こいつ見てるとボール遊びしたくなって来ねえか?」


「ウホウホ♪」


「楽しそう!やろうやろう♪でも髪の毛あるしなんかでてるし気持ち悪いよ…」


「じゃあ白い布で巻いてしまおう!これでこいつはただのバレーボールにしか見えん」


デーデッテレー♪


という不協和音と共に名付けて「人間バレーボール」が出来上がった。


良い子のみんな真似しちゃ駄目だよ。

そして勝手に私をバレーボールにして遊ぶ三人のサイコパス。


「そーれ♪」


先ずカナがスタートにサーブをする。

てか私45キロはあるのにこの子この体でどれだけ馬鹿力…。


「トース♪」


次いでレンがトスをしてボール(私)をカイに向ける。


「ウホッ!」


カイはボール(私)カイの頭上二メートルまで上がると高くジャンプをする。


怪力だけでなくジャンプ力も半端ない。

そしてその怪力でボール(私)をスパイクシュートしてしまうのだった。


「ウホウホッ!!!」


「シュートっ!!!」


レンの注訳入りの声が轟き私はすぐそこの民家のガラスを突き破りそのままドボンッ!!


カナSIDEーーー


あららカイがスパイクシュートなんか決めちゃってあのお姉さん民家のガラス突き破って行っちゃったじゃないのよ…。


すると「キャアァ誰よ貴女!!!」と女の人のつんざくような声が響き、ついでに「何事だっ!?」と男の人の大声が…。


それと向こうのシュート決められたお姉さんは「わ…私じゃありませんっ!私は遊ばれてて…!」


と一生懸命下手な説明をしてくれる。


しかしこの状況は私らとしてもヤバイ…ここはサッサとずらかりちゃいましょう♪


私達三人は今すぐその場を去っていった。


海溝潤実SIDEーーー


私はガラスを突き破って気がついたら民家の中にいた。


生温かい熱気に包まれハープの効いた香り…ガポンと響くような音…これは浴室…よね?


あれ?私体が元に戻ってる?

良かった良かった…じゃない私はこれ以上にヤバイ状況にいるのだ!


私の前には中年のおばさん…若い子ならどれだけ良いか…じゃないこのおばさんは私を見るや「キャアァ誰よ貴女!!!」とつんざくような大声を張り上げた。


「どうしたっ!?」


この女の人の第一声で旦那と思われる男性がバスドアを開きかけつけてきた。


「突然女の子が浴室に!!」


女の人はヒステリー状態となっている様子に私に指を差す。


私も混乱紛叫と言って先行き不安な気持ちとこの逃れようの無い危機に思考が働かない。


「わ私じゃありませんっ私は遊ばれてて…!!」


私は一生懸命何があったのか話すがこれじゃない、これじゃ私変な人だと思われても仕方ないような言葉しか出てこない。


「警察ですっ!何かありましたか!??」


そんな時、私やその民家の人の声が大きかったのかちょうど都合の良いように警察がやってきた。


てかアンタがもっと早く来てくれりゃ今こんな事にはなってないのよ…。


「突然女の子が風呂の中に…!」


「私は怪しい者じゃありません!!!」


私は泣きながらでも必死に訴えるが

「そのカッコからして充分に怪しいじゃないのよ!!」と一蹴され私はそのまま警察に連れて行かれた。


チエチエ助けて!!


トラテツSIDEーーー


わいがゴミ箱を漁んりょる所弟分のドッシュが何やら嬉しそうに話しかけてきた。


「あ、トラテツのアニキ、ちょうど今さっき面白いもん見ちまいましたよ♪」


「おっ、ドッシュかい?お祭りなん??」


「お祭りみたいなもんでさあ♪さっきインスマスとクトゥルフの女の子が戦ってましてねえ、女の子ボールのように遊ばれた挙句民家にシュートされてそれがまた大騒ぎなんでさあ!」


ドッシュの言葉を聞いて何やら嫌な胸騒ぎがしたんじょ。


動物のカン言うんかいな?

わいは「なんでそれをもっと早よ言わんの!!」とドッシュを殴って騒ぎのあった所に行ったんじょ。


そしたらそこには窓の割れたガラスのある民家とアスファルトの上に変なもんが落っとったんじょ。


わいがそこで呆然自失としよると「一足遅かったか…!」と可園彩華が悔しそうにやって来よったんじょ、


「一足って…?」


わいは人と喋れるように人間に変身し彩華と話してみる。


「いやさっきサキュラから連絡が来てだな、巫力で気配探ってたらどうやら海溝潤実がサキュラ助けに来てたんだよ、しかしこの様子を見ると海溝潤実…捕まっちまったみたいだな…」


彩華は残念そうな顔をする。


「ほ…ほなら潤実ちゃん助けて早いとこサキュラ助けに行こう!」


わいは彩華に揺さぶりをかける。


「いや、潤実よりサキュラを助けに行こう!」


彩華はサキュラを助け潤実はほっとくんか??


「いや潤実ちゃんの気配今もしよるし先に潤実ちゃん助けた後でサキュラ助けても間に合う思うじょ!!」


「あいつは自業自得だ!」


彩華はギロっとわいを睨みだした。


「……おっしゃる通りです……」


ひえぇおっかねえ…わいは潤実助ける事を提案したけどこの姉ちゃんはそれを聞いてくれへん。


ほなけどこの姉ちゃんキレさせたら手がつけられんからわいは彩華の言う通り遠くに連れ去られとるサキュラを助けに行くことになった。


サキュラSIDEーーー


私はとある場所に連れて来られ両手を吊るされて宙吊りになっている。


私は彩華とトラテツのやりとりをテレパシスで覗いていた。


どうやら可園彩華、海溝潤実の事許す気は無いみたいね、まあ軽間奈照を殺したと思い込んでるしその上闘技会で軽間奈照の力に頼りそのきっかけで今のような騒動になってるものね…。


でも何だかんだで助けたり奇妙な関係…。


まああの子がそう言う子なのは知ってるしその方が私としても都合が良いわ。


問題は軽間奈照の魔力石が敵の手に渡ってしまった事ね…。


奈照の無念を感じて良い気持ちしないけど…この状況を奪還するのにはとりあえずあの子を信じるしか無いようね…。


そんな時奥側から扉が開き息の臭い大柄の男が入ってきた。


「よう、気分はどうだい、お嬢ちゃん♪」


大柄の男はさも勝ち誇った様子で私に話しかけて来た。

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