悪魔の座礁

江戸華喧華SIDEーーー


鳴門海岸に珊瑚で出来た大きな洞穴がある。

今私はそこにある目的で来ている。


数日前、私はクトゥルフ戦士の強さを観察しに徳島市立体育館で開催された「クトゥルフ闘技会」に試合観戦に来た。


ん?あいつは海溝潤実?私は思った。


相手はキューティーBUSUか、何故か対戦相手が可愛い女の子という変態な奴ね。


キューティーBUSUは海溝潤実を散々苦しめるが海溝潤実は一時怯んでいたもののそれでも善戦へと持って行く根性を見せる。


あの秘密は何なの?と私も思った。

しかしすぐにわかった。


キューティーBUSUは海溝潤実の持っていたものを取り上げ、私ら観客に見せびらかした。


ん?あれは魔力石?何故あの海溝潤実が?


しかしこの闘技会は自身のクトゥルフの技で戦う闘技会、他の者の魔力石か何かに頼ると失格、退場となる筈…。


案の定、海溝潤実は審査員に連れ出される。


その時、赤毛の女が海溝潤実に助け舟を出し、連行は免れ、魔力石も海溝潤実に返されたのだが…。


ふふふ、あの魔力石…見逃す手は無いわね…。


それとあの赤毛はこないだ私をぶっ飛ばした奴…。


海溝潤実もあの女も気に入らない。

しかし私一人では海溝潤実はともかく赤毛の女には手を出せそうにない。

ならば代わりを差し出せば良いのよ!


そう思った私は異世界の悪魔を下僕に出来ると言う

封印された巻物を手にするため、鳴門海岸にある悪魔の岩礁がんしょうと呼ばれた洞穴に来ている。


そこに来た私は途中で足を止める。


私の目の前には懐かしい…そして憎たらしい私の親父がいたのだ。


最後に喧嘩して離れ離れになった頃と比べたら老いの為か様変わりしていた。


頭は禿げた為スキンヘッド、しかし白髭はフサフサに伸ばしており、眉毛も立派に伸ばしている。


ツルツルの頭皮以外は皺だらけで少し背は縮んで見えるが眼光の鋭さはあの頃から全く変わっていない。


着物を羽織り、仙人かよと言うような恰好、いで立ちで私の前に立っていた。


「親父……何故ここに…」


「貴様こそ…ここに何しに来た?」


親父は私を睨み、出て行けと言う風な感じに立ち塞がる。

ここは元々私が18歳になった時に来るのが許される場所だったはずだ!


「ここは私が18歳になった時に来るのが許される場所じゃなかったのか!??」


親父は私の怒声にふうと溜息を漏らし答えた。


「確かにここはお前の為に封印した、しかしお前は自分の力に慢心し、正義を誤認しすぎた、正義も誤認すればただの乱暴狼藉、お前にはやはり極意書は譲れぬ、一生な」


親父は嘆くように漏らすが私はその言葉により腹わたが煮えくり返る思いとなった。


「このクソ親父…!アンタはいつも何かをするたびにこう文句つけやがって!今こそどっちが正しいか白黒つけてやろうじゃないの!!」


私の怒りがオーラを放ち、全身に力が入った影響でギシギシと筋肉で膨らんでいき、160ある身長が180に伸びた。



「男化か、貴様のインスマスの極意…しかし貴様のような奴が極意書を手にすれば誤った方向に使い日本を破滅させてしまう、それだけはあってはならん!!」


親父もまたオーラを放ち私に負けじと闘気を露わにする。


俺と親父は闘気を洞穴中に放ちそこに落ちていた石が宙に浮き、コウモリが慌てて逃げていく。


闘気は人間にある気迫そのものだが強大であればあるほど奇妙な自然現象的な事を起こしてしまう事もあり得ると言う。


ポルターガイスト、トランスポート、ラップ音現象等々…これらはクトゥルフ、或いはインスマスの闘気と闘気がぶつかり合って出来ると言われる。


私と親父の闘気がぶつかり合い、それは火花を散らす。


バチバチ…バチバチ…!


男の体となり親父より体格を超えた私、いや俺はありったけの殺気を拳に纏い、親父に放つ。


「死ねい!クソ親父!!」


逆に親父は杖に闘気を纏わせ、それを突き出す。


「ぬんっ!!」


互いの強大な闘気がぶつかり、それは空気中の爆発を起こす。


ズガアンッ!!


「「くっ!」」


俺と親父は爆発から身を守る為後ずさるがまた互いに睨み合い、戦いに臨む。


「食らえぇ!喧嘩百砲けんかひゃっぽう!!!」


仙空烈破せんくうれっぱ!!!」


俺は親父を殺す気で百の鉄拳を親父に浴びせるが親父も負けじと杖に闘気による弾を無数に作り、俺に放った。


「ぐわああぁ!!!」


俺は逆に親父から弾を放たれて威力押しされていた。


俺は仙空烈破を無数に浴びて血が噴き出る。

くぅっ!歳は取っても強さは衰えていないな…!


一方の親父は無傷、親父は鋭い目で俺を射抜く。


「ここを立ち去れ、極意書はお前には譲れぬ!!」


くっ、この目…親父の一番ムカつく目だ!


「ま、まだまだぁ!!」


俺は立ち上がる。


「これだけの傷を浴びてまだ戦うと言うのか?」


親父は予測はついていたように言葉を向ける。


「俺はまだ30パーセントも本気を出していない!」


俺の闘気で体中に出来ていた傷口は塞がっていく。


「良かろう、わしもお前を殺す気でかかるぞ!!」


すると親父は8体に分かれ出した。

読めたぞ!さっきもそれで俺は親父の攻撃をまともに食らい親父は無傷だったのか!


「見切った!!」


俺は先程とは違う戦法で親父に挑んだ。


「仙空烈破!!!」


親父は先程のように闘気を放つ。


俺は今度は防御と言う形で次々と放たれる闘気弾を拳で打ち返した。


「よく見切ったな、ならこれはどうだ!!真空猛虎撃しんくうもうこげき


無数の虎が俺に襲いかかる。

親父は8体もいるので襲いかかる虎もその威力も8倍。

俺は襲い狂う虎に次々と身体を引きちぎられる。


「ぐわああぁ!!」


このクソ親父…相変わらず敵に対して容赦がない。


しかしこれで親父の技の真髄が見えてきた。

これは俺に幻覚を見せて惑わせているのだ。

でなければ親父が同じ姿で何体も現れるのはおかしい。


ん?何か光ったような?


親父とは別の方向へ視線を向けると光が不自然な形で入り込んで来ているのが見えた。


「こう何度もやられてたまるか!猛八衝撃拳もうはしょうげきけん


俺は遠距離に放てる拳を「向こう」に放った。


するとバリンバリンとガラスが飛び散る音が鳴り、親父の姿は消えていく。


「な!わしの分身が見切られるとは!?」


親父は焦る。

親父のこんな表情は快感だぜ!


親父は弱腰になり出す。


「わ、わしが悪かった…秘伝書はお前に渡そう…命だけは助けて…」


しかしこいつは俺を怒らせた。

俺は一度怒らせた奴は徹底的にやる主義だ。


「許さん!例え生みの親だろうが俺を怒らせた奴は地獄送りにしねえと気がすまねえ!!」


「いやああぁ!KEIさん助けてぇ!!」


人生の最期に気持ち悪い声で他クリエイターに助け求めんじゃねえよ!

てめえは何のために70年男やって来たんだ!


「死ねえ!喧嘩百砲!!!」


俺はとどめに無数の拳を親父にぶつけた。

親父の体は俺による鉄拳で凹み親父は最期に見事な血しぶきを上げて吹き飛んでくれた。


親父の亡骸は五メートル先にまで赤黒い花火を放ちながら地面を赤黒い模様を彩らせ、そのまま大地の栄養分となった。


「ふん、どうせ誰もここには足を踏み入れないんだ、そのまま獣にでも食われてろ!」


俺は親父の亡骸に一蹴り入れて秘伝書を取りに向かった。


洞穴の中を歩いて行くと大きな扉を海亀の銅像が門の番人をしているように囲んで立っているのが見える。


俺が門の前に立つと海亀の銅像から声が放たれた。


『合言葉を言うんじょ』


俺は答えた。


「海亀は徳島のマスコットキャラやけど浦島太郎は関係ないんじょ」


すると扉は児童にガガガと開かれた。

俺はその中を潜っていく。


中は真っ暗闇だったが門のすぐそばの電気のスイッチを入れる。


すると電灯が付く。

小さい頃、ここには親父から聞かされた事があったのでこの秘密の場所は手に取るようにわかった。

目の前には秘伝書があった。


「おおこれが秘伝書!」


俺はその秘伝書を食べる。

なんとその秘伝書は食べられるのだ。


何故なら秘伝書の形をしたちくわだからである。

するとどうだろう、俺の脳内に数々の秘伝が刻まれて行くと同時に俺のパワーがみなぎって来るのを感じた。


「おおこれが江戸華一族の勇者のみに与えられる真の力…なんと素晴らしい!」


俺は自身の力を感じ畏怖さえ感じた。


「これは良いぞ!これで俺の失った信頼を取り戻すことが出来る!待ってろよ赤毛の女!」


俺はあすたむらんど徳島での出来事で海溝潤実やくびょうがみと赤毛の女のお陰で客からの信頼を失い、勧善懲悪事務所を閉店せざるを得なくなった。


何故正しい俺がこんな恥辱を味わわなければならないんだ。


そう、俺はあすたむらんど徳島の客からの依頼で悪い宇宙人を退治していたが途中で海溝潤実やくびょうがみが現れ俺はついでにそいつを退治する。


その時に赤毛の女が俺を殴り飛ばし、赤毛の女は俺の正義をコケにし、ギャラリーを唆し洗脳する。


俺はその時の屈辱を忘れない。

それにあの面に恰好…色々悪い事をやってる事は明白だ。


正義は勝つんだ!

俺はこの手にした力であの赤毛の女を改心させてやる!


そして間抜けなフリして男を誘惑して構ってアピールしては人を陥れていっている海溝潤実やくびょうがみを退治してやる!


私が外に出たところ、三人の年端のいかない子がいた。


「ご主人様、仕事は出来そうなのですか?」


そう、この三人は私が拾ってきたのだ。

身寄りが無く腹を空かせていたので可哀想に思いパンを分け与えたらついてきてくれた。


でもこんな子供を捨てるだなんて親の顔が見てみたいわ!


「ええ、もうすぐたらふく食べられるようになるから期待して待っててね♪」


私は笑顔で答える。


「「有難き幸せ、私達はご主人様の為に働きます」」


子供達は声を揃えて誓う。

健気な子達、これから私の手と足となり私のように正義の為に世に尽くすのよ!


海溝潤実やあの赤毛の女のようにはなっては駄目よ!


私の子供だからそんな捻くれた子には絶対にならない、期待してるわよ!我が子達♪

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