顔解析AI特捜部

隆見ヲサム

第1話 顔解折AI特捜部

 「部長。窃盗集団たちのアジトを特定しました」オペレーターからの報告だ。

 「よし現場に急行させろ」

 ついに顔解折AIの本領発揮だ。篠原部長は息をついた。


 話は遡る。


 東京オリンピックのテロ対策として導入されたのが顔解折AIだ。

 たとえば、不審物を観客の集まっているところに置いて逃げる男がいたとする。AIがすぐさまイレギュラーな行動があったと検知し、当局に通報する仕組みになっている。

 このたび導入された顔解折技術はもう一歩進んでいる。

 端的に言えば、遺伝的に犯罪を起こしやすい人間の顔の鑑定をする。

 反社会性パーソナリティー障害、病的窃盗、病的放火などを顔で判別するのだ。犯罪はある程度は遺伝する。サイコパスならば、四〇個ほどの遺伝子によって八割ほどの確率で子供に遺伝するという。

 顔にはそうした遺伝的特徴が出て来る。何も驚くことはない。医学界では古くから、ダウン症候群やウィリアムズ症候群には特定の顔付きがあることが知られていた。

 AIの手に掛かれば、膨大なビッグデータからそうした遺伝的傾向がある顔を判別し、マークすることが出来る。

 このテロリズムの横行する時代、ソフトターゲットの警備はこのシステムの導入ではかられる。東京の街中に監視カメラを設置し、ネットワークで全域をカバーする。


 篠原部長は、報告を受けた。

 「配置につきましたが、本当に良いのでしょうか」

 犯罪の予防。素晴らしい技術ではないか。

 捜査員たちに篠原部長は無線で命じる。

 「よし、突入せよ」

 「それが、その……」無線ごしに、ためらいがうかがえた。

 「どうした行け!」



 すると、突入したはずの捜査員たちが篠原部長のいる、この司令室に入ってきた。

 「どうなっているのだ。サイバー攻撃か? もういちど場所を確認しろ」

 篠原部長は狼狽しながらオペレーターに指示を出す。

 「いえ間違いなくここが窃盗集団のアジトです」

 少々時間が掛かったが、篠原部長は事情が飲み込めた。


 「そうか。特捜部が」

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顔解析AI特捜部 隆見ヲサム @Wosam

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