第47話 モナカちゃん先生は甘えてみたい 1-1

 このままではリイサの思い通りの結末になってしまう。それだけは何としても避け無いと駄目だ。


「くっ、くっ……は、離してよ!」

「どうして? リイサにこうして欲しかったんじゃないのかな? レイケだとこういうことはしてくれないでしょ? あの子が晴馬くんを甘やかすとかあり得ないだろうし」

「そ、そうだとしても、ここでこんなことをするつもりなんて無いよ! モナカちゃん先生の場所で、嫌だ!」

「へー、案外根性くんなんだ? 本気にしないでね? あたしもさすがに人の家でやらないし、あたし一人では面白くないしさ」

「うっ?」


 こんな言葉でやめてくれたのは意外すぎた。リイサの胸に押さえつけられていた頭は、あっさりと解放された。


「晴馬くんの部屋がベストだと思うんだよね。でしょ?」

「へ、部屋に呼ばなければそういうことも出来ないと思うけど……」

「うん。あたし一人だけじゃ厳しいからね、あの子を近々呼ぼうかなって思ってるの。誰だと思う?」

「さ、さぁ……」

「可愛い妹ちゃん! あの子ならきっと協力してくれるし、やる気も出してくれると思うんだ! その日を楽しみに待っててね」


 一体誰のことなのだろうか。リイサには妹がいて、その子と一緒になって俺のことを弄ぶつもりがあるとするなら、嫌だけどさやめに守ってもらうか、円華の家に隠れるかしないと逃げられない気がする。


 ――トントン……。


「んん?」


 リイサとのやり取りで気づけずにいたけど、さっきから足下をトントン……いや、つんつんとされているような気がする。


 この位置ということは、一人しか思い浮かばないけどいつの間にか帰って来ていたのだろうか。


「ハルマ、ハルマ! こっちを見るのじゃ!」

「やっぱりモナカちゃん先生でしたね」


 振り向いて足下を見ると、小さな先生が俺のことを上目遣い……というより、自然と下から見つめているので、自然上目遣いをしている。


「駄目なのじゃ! モナカのことはモナカと呼んで欲しいのじゃ!」

「それは流石に失礼……」

「いいじゃん? 先生可愛いし、ちびっ子だし? 甘えさせるのも晴馬くんの役目だと思うよ。あたしは、ここでは手を出さないしそろそろ帰るね」

「え? リイサもここで世話になっているんじゃ?」

「違うよ。先生が戻って来るまで晴馬くんを見張っていただけだし」

「え、嘘……リイサが?」

「失礼だなあ。さっきも言ったけど、あたしは一人じゃ何もしないし、するつもりもないよ? 晴馬くんのお部屋でその辺は後でゆっくりと……ね。じゃあね」


 何もしないと言う割に、さっきは胸に顔を埋めさせていたのはリイサ的にノーカウントなのか?


 そして確かにまじまじと見ても、モナカちゃん先生は小さい。だけど実年齢が不明すぎる。言葉遣いだけでは判断のしようがない。


「ハルマ! モナカを抱っこするのじゃ!」

「ふぁっ!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る