第46話「よろしく~」って、何でこの子がここに!?
「さて、
「それはモナカちゃん先生の身内ですか?」
「いや、なに……明空もすでに会っている奴じゃ」
「は、はぁ。知っているなら問題は無いと思いますけど、何か心配でも?」
「モナカから言えることは、耐えろ! ただそれだけのことじゃ」
「ほえ?」
てっきりモナカちゃん先生と二人で過ごすことになるんじゃないかと、内心色んな意味でドキドキしていた。
でも考えてみれば、モナカちゃんは先生であるわけだし、いつもそこにいるわけでは無いはずで、そう考えると他の誰かも一緒にいてもおかしくない。
「明空……いや、ここではハルマと呼ぶがよいかの?」
「そ、それはもう、好きなように呼んでくれれば」
さすがに学園の中と家とでは違うということみたいだ。モナカちゃんの後をひたすらついて歩くこと20分くらい、学園からその家らしき所にたどり着いた。
「ここは碓氷の屋敷に近い所にあるのじゃ。ここで出会ったと奴は言っておったぞ」
「奴?」
何だか思わせぶりなんだけど、もしかしなくてもあまりいい人では無かったりするのか。
「えっ!? な、何で……」
一見すると、趣のある古民家に見えるその家は、円華の屋敷と比べればこじんまりとした作りになっていて、モナカちゃんには丁度いいとさえ思えた。
だけど問題はそれじゃなく、ガラガラと音を立てて玄関の戸を開けて待っていたのは、よりにもよってあの子だった。
「やぁ、晴馬くん!」
「あわわわ……何でリイサがいるの?」
「何でとは心外だなぁ! あたし、帰国子女! なんだけど、家族と仲悪い! つまり、そういうことなんだなぁ。オッケイ?」
「そ、それは何と言うか」
さやめと円華がいない……そんな時に、モナカちゃんに誘われて付いて来てみれば、そこで待っていたのは危険すぎる女子のリイサだった。
モナカちゃん先生ってだけで、安心と大いなる油断をしていた。まさかこの子と同じ場所で過ごすことになるなんて……確かに、何かに耐えなければいけないかもしれない。
「さて、ハルマ。モナカはまだ仕事があるのでな。後のことはリイサに任せておる。リイサと仲良くしておくのじゃ」
「え、えええ? そんな」
「うふふ……」
モナカちゃん先生はリイサの危険性を分かっているのだろうか。何で二人きりにさせるんだよ。
「こ、困るよ……どうしてこんなことするの?」
自分だけの特別待遇を聞かされた直後くらいから、自分の口調はすっかりと素を出すようになってしまった。ここで強がったところで、誰にも勝てないと判断してしまったのも関係しているかもしれない。
「晴馬くん、可愛いね。もしかして今の姿が本当の君なのかな?」
「そ、そんなことは……」
「息は苦しくないかな? お姉さんが優しく手ほどきしようか?」
「い、いや、リイサは姉とかそういうのじゃないでしょ? お姉さんって言われても……」
「出会った時にはお姉さんって勘違いしてたじゃん? その時と今とで、大して意味は変わらなくない?」
どんな状況になっているかなんて言いたくない。ましてこんな所をさやめに見られでもしたら、とんでもないことになりそうな気さえする。
円華の屋敷に近いのも別の意味で緊張してしまう。
「晴馬くんの全てを面倒見てあげるって言ったのは覚えてる? 教室で言ったことなんだけど、今がまさにそれじゃん?」
「み、見えるのは服の生地だけです……な、何も見えなくていいから」
「息は苦しくない? 逃げないとは思うんだけど、このままでいさせてくれる?」
「さ、さやめがここに来たらどう説明を……」
目の前にはリイサの胸が……ではなく、洋服の生地の繊維が見えている。くっつきすぎていて、身動きが取れない。
「レイケが? あぁ、それは簡単じゃない?」
「え?」
「晴馬くんは、妙義先生の保護下に入りましたよー! ついでにリイサが貰いました! 彼は弟くんになったので、レイケの出る幕は無いよ? って言うし」
「そ、そんな……せめて今の状態から解放してくれないかな? そ、そうじゃないとそんな説明を素直に聞いてくれるはずが無いよ」
リイサの方が自分よりもやや背が高く、力も強い。しかもここはモナカちゃん先生の家? だ。ウカツなことが出来ないのは彼女も分かっているはずなのに。
「そ、それに弟にするとか、そんなの出来るはずが……」
「簡単だよ? 晴馬くんが求めているのはリイサなんだってことを、妙義先生が認めてくれればいいんだもの」
言われてみればそうなのかもしれないけど、見た目がお姉さんなだけで、同級生の女子にそんなことを言われているのは、何だか納得出来ない。
リイサを求めている? それはどうなのだろうか。未だに誰にもきちんとした答えを出していないのに、距離が縮まったからと言ってリイサが有利になるとは思えない。
「――と、とにかくっ! 離れてくれないかなっ――!? むぐっ!?」
挟まれた状態から抜け出すには、勢いよく突き飛ばすしか考えられなかった。
それなのに、予想の出来ない動きを彼女はして来た。
「いったぁ……び、びっくりしたー! 晴馬くん、大胆なことも出来るんだ? でも駄目だよ? キミは弟くんなんだし。あたしはキミを離すわけにはいかないの」
「う……くっ、い、息が」
これは最大の貞操危機とかいう奴?
リイサを突き飛ばして離れるつもりが、逆に胸の辺りにまで引っ張られた。
「う、動かないでね? くすぐったくなるの」
「むぐー!?」
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