第66話 多重運命交錯照準星 エピローグ

☆☆☆


 それから俺達は改めてクリスマスの夜を迎える。

 キャンドルの焚かれた共同部屋には、飾り付けられたクリスマスツリーと豪勢な食事。

 俺はトナカイスーツを着て、他全員が通常のサンタ衣装に着替えていた。

 ミニスカサンタ衣装の輝刃は七面鳥を噛りながら、俺にも噛み付く。


「ほんっと、あんたのせいでサンタビキニで外出たこと噂になってるし。すれ違った生徒には笑われるし最悪よ」

「すまんて。クククク」

「何わろてんねん。殺すわよ」


 笑うなと言う方が無理があるだろう。


「まさか学内SNSに動画晒されてるとは思いませんでしたね……」


 エクレはRFの3Dブラウザに映る、自分ビキニサンタたちの痴態を見て口からエクトプラズマを吐き出していた。


「……嘘でしょ? これあたしたち? バカみたいじゃん……」

「ほんとです。機械工作科小鳥遊悠悟、犬神葵とクリスマス直前デート中に美女サンタ四人から告白される」

「……それの投稿アカウント学長の個人アカウントらしい」

「はぁ!? あの学長まじぶっころよ!」

「完全に娯楽にされちゃってるわね……」


 それだけインパクトが強かったということだろう。あれから俺のRFには殺害予告が次々に舞い込んできている。


「どう責任とってくれんのよ」

「悪かったって。だから今日はいい飯作っただろ」

「当たり前よ。罰として今後一週間はこの食事を継続させなさい」

「太るぞ」

「あんですって!!」


 サンタ衣装のまま俺に逆エビをキめてくる輝刃。

 その様子に苦笑いする犬神さんと雫さん。


「騒がしい奴らじゃな」

「でも良かった。葵ちゃんがあのままだったら、ほんとに結婚までいってたと思うし」

「ありえんありえん」


 犬神さんは苦笑いしながら首を振る。


「ほんと今回は占いに振り回されましたね」

「そうじゃな、しかしその運命とやらも落ち着いたようじゃ」

「さすが犬神先輩。超磁力的なんとか運命って奴を跳ねのけたんですね」

「当たり前じゃ。と、言っても跳ね除けたのはわっちというよりこ奴じゃがな」


 犬神さんが俺の方を見やる。


「あっ、あたし気になってたんだけど、犬神さんがラブシールでおかしくなってたのはわかるけど、なんでシールを剥がそうと思ったの?」

「わたしも気になりました。てっきりあのままエロ同人的な展開になると」

「いや、ドライモンじゃないんだから。道具でそんなことしたらバチが当たると思っただけだよ」

「正々堂々とわっちを口説きたいそうじゃ」


 犬神さんがフフンと笑うと、輝刃達がすくっと立ち上がる。


「なによあんた口説くほうが好きなら最初から言いなさいよ」

「ユウ君ちょっとお話しようか?」

「わたしもそろそろ正々堂々口説いてもらっていいですか?」

「……こっちから口説くのはダメ……なの?」


 詰め寄る女性陣。酒も飲んでないはずなのに勢いが凄い。


「語弊があって、それは俺がまだまだ未熟だと思ったからで、それにもう犬神さんとの運命は切れてるから! ですよね!?」

「どうじゃろうな?」


 クツクツと笑う犬神さん。この人ずるいぞ!


「……しかし、この部屋暑いな」

「そうですか?」


 犬神さんはパタパタと自分の手で顔を扇ぐ。

 俺はあんまり体感してないが、室内で逆エビとかキめてたらそりゃ室温も上がるというものだろう。


「少し夜風にでも当たって来るか」


 そう言って彼女が外に出ようとすると、共同部屋の扉が開かれた。


「やっほー皆さんお揃いで楽しそうね」


 何食わぬ顔をしてやってきたのは、真っ赤なローブを着たクリスマス仕様の星見先輩だった。


「あら、星見ちゃんどうしたの?」

「いや~、この前迷惑かけたんで占いのサービスに来たの」

「ほぅ、なら丁度いい。わっちとこ奴の運命を占ってくれんか? 恐らくお主の言っていた運命というのは回避されたじゃろう」

「実はそのことも気になってたのよね~」


 星見がローブの袖から水晶を取り出し、掌をかざすと小さな星が点々と浮かび上がった。


「あれ……」

「どうした?」


 犬神さんが水晶を覗いてみると、そこには蒼い巨星が小鳥型の星を丸呑みしようとしている光景が映っていた。

 俺の運命星の周りを金、緑、紫、白の星が飛び、必死に飲み込まれないように赤いラインを繋いで引っ張っているようにも見える。


「……これはどういうことじゃ?」

「……えーっと……凄く言いにくいんだけど。……多分運命切れてないわね」

「……待て、ラブシールは剥がしたぞ!」

「えっとね、ラブシールはただのトリガーで、活性化した運命は元に戻らなかったみたいね。自覚ないかしら?」


 星見先輩に言われて、犬神さんより先に他の女性陣が気づく。


「そういえば葵ちゃん最近暑い暑いって言ってるけど、それってユウ君の前ばっかりな気が……」

「そういえば犬神先輩、ずっと小鳥遊さんのこと視線で追っかけてる気が……」

「葵……ユウゴの隣によく座るようになった」


 ジトッとした目で犬神さんを見る女性陣。


「し、知らんそんなこと! 偶然じゃ!」

「「「…………」」」

「そんな目でこっちを見るな! 星見、運命が切れてないとどうなるんじゃ!?」

「まぁそうね……」


 ――小鳥ちゃんレース出走決定ということね。しかも本命。


 その言葉を聞いた四人の少女が立ち上がると、無言で自分の体に真紅のリボンを巻き始めた。


「あの、皆何してんの?」

「クリスマスプレゼントを作ってます」

「生ぬるいことやってたらユウ君が飲み込まれちゃうわ」

「まさか非常時用の装備が役に立つとは……」

「……やっぱり僕たちが運命を引き離さなきゃダメだね」


 四人は全身にリボンを巻きつけ、ノーマルのサンタコスを脱ぎ捨てる。

 すると下には動画で晒されていたサンタビキニを纏っていたらしく、セクシーな格好でベッドに横たわると、声を揃えてこう言う。


「プレゼントフォーユー」と


 クリスマスプレゼントは私とベッタベタなことをやったのだった。

 しかし意外にも効果は絶大である。


「凄いわ! クリスマスパワーで四人の運命星がパワーアップしてる! これなら犬先輩の運命星から引き離せるかも!」


 星見先輩が水晶を見ながら実況し始めた。

 この人絶対この状況楽しんでるだろ。


「犬先輩、いいの? このままじゃ小鳥ちゃんとられちゃうわよ!」

「わ、わっちはやらんぞ! やらん……やら……」


 結局やった。


 星見先輩曰く、クリスマスパワーを受けて輝刃達の運命星がパワーアップしたらしく、俺の運命星を5方向から引張り、現在釣り合いがとれるようになったとか……。

 俺の運命星は、全員の圧力でそのうち5つに引きちぎれるかもしれないと怖いことを言われた。


 性の6時間? あぁその時間なら皆でスマ○ラやったよ。






多重運命交錯照準星      ――――了




――――――――――――

あとがき

短編集+犬神葵編で1巻分くらいの文量となりました。

総文量的には3巻ぐらいにあたります。


途中ヤンキー実況の方を更新していたので、こちらの更新が少なくなり申し訳有りません。

次回くらいまた長編に戻ろうかと考えている次第でございます。


何度も宣伝して申し訳ないのですが、カクヨムコン5に参加しております。

本日読者選考最終日になっております。フォロー、星、レビュー、感想などで応援していただけると幸いです。

また読者選考は今日で終了いたしますが、じゃあ星もレビューもいらねぇなというわけではありませんので、貰えるものは随時募集しております(笑)。


ヤンキー実況の方も合わせてよろしくお願いいたします。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054892598260



それではまた次章でお会いいたしましょう。

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