第5羽 出雲学園祭
第51話 出雲学園祭Ⅰ
よく晴れたいい天気だな。
俺は洗濯籠に入った大量の洗濯物を干しながら、雲一つない青空を見上げる。
現在学園都市型艦出雲は予定通りの航路を飛行しつつ、次の停泊都市を目指していた。
俺は洗濯甲板とも呼ばれる学生の洗濯物を干す甲板で、輝刃含めたお姉様方の下着や、ルイス達留学生の服を干していた。
爽やかな秋風に吹かれる紫、赤、純白、ストライプ、星条旗柄の下着を眺めていると――
「はーい生写真一枚1000円、レア写真一枚3000円、出雲四天王のSレア写真は5000円、レア以上確定の5枚入り福袋は1セット1万円! 福袋の中には四天王のSレアを超える
「「うぉーー!!(野太い歓声)」」
そんな爽やかな空気をぶっ壊す野郎どもの声。
甲板の一角で男子生徒が集まり、人気女生徒の生写真を売買する闇の取引が行われている。
俺はひらりと飛んできた写真の一枚を手に取ると、そこには犬神さんが学食で優雅にティータイムをとるシーンが映し出されていた。写真の裏面にはSレアと書かれている。
「Sレアというか、ただの盗撮では……?」
ちなみに彼女実家での用事が終わらないらしく、合流までもうしばしかかるらしい。
「ここでしか手に入らない貴重な写真だ! 証拠隠滅しなきゃならねぇから写真の画像データは残せない。売り切れたらそれで終わりだ!」
「早い者勝ちでゴザルぞ! 大人気出雲四天王に加え、龍宮寺輝刃、その妹のエクレールちゃん。更にはセントルイスからの留学生の写真も大量に仕入れてるでゴザルよ!」」
メガホン片手に男子生徒を煽る猿渡と戦国先輩。こいつらも商魂たくましいと言うか、相変わらずと言うか……。
「セクシー写真! スーパーセクシー! が手に入るのは今日ここだけだよ!」
セクシー写真って、コイツらまさか風呂場の盗撮とかしてるんじゃないだろうな。そう思い俺は福袋をこそっと開けて中を確かめてみる。
すると筋肉三兄弟先輩のムキムキボディービルの写真が出てきた。
確かにスーパーセクシーと言っただけで女性の写真とは言っていない。どうやらこれがUR写真らしい。
「あこぎなことやってんな……」
怒り狂った生徒に八つ裂きにされても知らんぞ。
写真や福袋を買った男子生徒たちは、コソコソと隠れながら洗濯甲板を後にする。
残った猿渡はRFに映し出された電子マネーを確認する。
「んほ~ボロすぎる。10万IPは稼いだぜ」
「いや~やはり需要があるものは多少の暴利でも売れるでゴザルな」
「それちゃんと許可とってるんだろうな……」
「ちょっと何言ってるかわからない」
「わかるだろ」
「お前みたいにお姉様プラス龍宮寺姉妹に囲まれた恵まれた人間に、オレ達モテない男の気持なんかわからんだろ」
「ゴザルゴザル」
こいつらかなり
「しかも、最近では留学生のギャラクシーオービットの世話もしているとか」
ギャラクシーオービットとはルイスがよその学園艦でレイヴンとして活動していた時のチームで、12名の女性隊員から構成される。
セントルイスの看板チームとあって、その実力は折り紙付きである。
その実力もさることながら、特筆すべきは皆ルイスばりのフィジカルを持っていることだ。
そんな彼女達に出雲の男子生徒が密かにつけたあだ名は爆乳アーミーである。
そりゃあんなバインバインがタンクトップとホットパンツ姿で歩き回ってりゃそんな名前もつけられるだろう。
俺は学園長によって、彼女らの世話よろしくねーと軽く頼まれてしまった為、一応姉様方同様、私生活のサポートも行っている。
「あれも結構大変なんだぞ?」
「じゃあ今日起きてから具体的に何したか言ってみろよ」
「別にいつも通り掃除して、ランドリーで洗濯してからここに来ただけだぞ?」
「いや、いろいろ
「端折ってないっての。ただ……ルイス達は洗濯物出せって言ったらその場で脱ぎだしたくらいで」
「「
猿渡と戦国先輩は「お前の罪を数えろ」と声を揃える。
しょうがないだろう。お国柄、彼女達そういうところ凄くオープンなんだから。風呂上がりにタオル一枚で歩き回ってるし、就寝時は何も身に着けてない時が多い。
「畜生、俺もお姉様たちの下着洗いたいぜ……」
「そう聞くととんでもない変態に聞こえるな……」
ある意味いつも通りの会話をしていると、洗濯甲板に『タコ焼き』と書かれた屋台の骨組みを持った生徒が数人現れた。まだ組み立ての最中のようで、色を塗ったり釘を打ち付けたりしている。
「あれは……」
「そういえば小鳥遊氏のところは学祭何をするか決めたでゴザルか?」
「あー、もうそんな季節なんですね」
年に一度の出雲学園祭。
やることと言うと普通の学祭と同じく屋台やショー、ホールでライブを開いたりと一般的な学園祭と大して変わりはない。
尚、参加に関しては、いつもレイヴンとして活動しているチームで参加してもいいし、同じ兵科の人や、仲の良い友人と学祭の為に臨時のチームを組むのもOK。
ただし全員参加が原則となっており、コミュニケーション能力が低い奴が浮き彫りになる。ぼっちには辛いイベント。
また学祭ランキングなるものが存在し、学園祭で一番の売上を出したチームには何かしら景品が貰えるとか。
去年は最も稼いだMVP生徒には出雲チケットなる、出雲に所属する人間なら誰にでも一回だけ好きな命令を出すことができるという、スーパーチケットだった。
「オレ、今年も出雲チケットだったら牛若先輩に一日デートしてもらうんだ……」
「赤ちゃんプレイしたいでゴザルなぁ」
邪な妄想を浮かべる二人。しかしながらそれを本当に可能にするのが出雲チケットである。
「今年も出雲チケットとは限らんだろ? 一昨年は家電セットだったらしいし」
「家電はいらんな」
「そういえば小鳥遊氏、ギャラクシーオービットの方々は参加されるでゴザルか?」
「どうだろまだ話してないからわからないですけど、多分何かするんじゃないですか?」
「本場Gアメリアの女子プロレスリングとかどうだ? 勝利予想に観覧料とれば儲かると思うぜ」
猿渡は
「そんなもんダメに決まってるだろうが。まぁ無難に食べ物屋とかかなぁ」
「何にしろ何かやるなら声をかけてくれ。オレたちが出資するからよ」
「いや、遠慮しとく」
◇
その日の夜。
俺達牛若チームとギャラクシーオービットのメンバーは共同部屋に集まって学祭のミーティングを行っていた。
「えーっと、再来週に出雲の学園祭があるんだけど、そのことについて会議したいと思います」
俺は拡大した3D
去年の学祭の動画を見せると、ルイス達は「oh、陽火のスクールフェスティバル楽しそうね!」と頷き合う。
「…………てな感じで、一般の学園祭と大してかわらないんだけど、皆何かやりたいことってある? ルイス達は留学生だから別に出店側で参加しなくてもいいんだけど」
「面白そうだからやるわ!」
他のメンバーもイェーイと乗り気だ。
「それじゃあ何か案がある人?」
そう聞くと、ルイスの胸を頭に乗せながら三角座りしているエクレがすっと手を挙げる。
「はい、エクレ」
「メイド喫茶は外せないですよね」
「まぁベタなところだよね」
学園祭と言えばコレと言ってしまってもいいかもしれない。
俺はスクリーンボードに【メイド喫茶】と案をメモする。
すると輝刃が首を傾げる。
「やっぱり何かしら色がないと面白くないんじゃない? せっかくルイス達がいるんだからGアメリアの文化も取り入れてみたら?」
「そうだな。確かに少しひねりがあってもいいかもしれない」
俺は【メイド喫茶Gアメリア風】と追記する。
「それならカウボーイがいいわ! テキサスのバーをイメージした喫茶店なんてドウかしら?」
「ふむ。ウェスタン劇場と言う奴だね」
俺はルイスの案を取り入れ【メイド喫茶ウェスタン】と書く。
「白兎さん何かあります?」
「ん……僕はGアメリアの武器とか見てみたい」
「なるほど。武器、特に銃器に関してはGアメリアは強いしね。喫茶店に武器が並んでるってのもひねりがあって面白いかもしれない」
俺は更に修正を加え【武装喫茶ウェスタン】と書く。
「雫さん何かある?」
「そうね、Gアメリアと言えばGフットボールが有名でしょ? 何かその辺のスポーツを取り入れられないかしら?」
「Gフットボールと言えば、やっぱあのでかい肩アーマーでぶつかるのが魅力だよね。ランジェリーフットボールとか、女性だけのフットボールもあるみたいだし」
俺は【武装喫茶ウェスタン】に【肩アーマー?】とつけ加える。
そしてなんやかんや火炎放射器はいるだろとか、もっと荒廃した世界観が良いとか様々な意見を取り入れて最終的にまとまったのが。
【世紀末喫茶ウェスタン】
「いや……これはダメだろ……」
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