橋立真里菜編
今日私は決意した 小学生時代第7話(橋立真里菜編1)
今日も朝がやってきた。今日という今日こそは言おう。私はそう決めていた。緊張して夜遅くまで眠れなくてコンディションはちょっと悪め。だけど今日こそ言うんだ。私は自分を鼓舞した。そそくさと制服に着替えて身支度をし、リビングへ向かった。既にリビングにいたお父さんとお母さんにおはようと挨拶をして朝食の席についた。お父さんは椅子に座って新聞を読んでいる。お母さんは台所から私に朝食を配膳してくれた。今日の朝食メニューはご飯に味噌汁、卵焼きだ。一般的な日本の朝食って感じだ。私はご飯にふりかけをかけて、一心不乱に食べきった。気合を入れるために今日はおかわりしていこうかな。
「お母さん、ご飯おかわり。」
「あら今日はよく食べるのね。でも真里菜ちゃんも成長期だもんね。ご飯はたくさん食べた方が良いわよ。」
お茶碗をお母さんに渡した後、テレビで丁度朝の占いのコーナー『熱血ボディビルド星座占い』が始まった。ボディビルダーの人が一回一回ポーズをとって運勢1位から12位の星座を言っていくというシュールな内容だ。友達は朝からこんな暑苦しいの見たくないって言っていたけど私はこの占い好きなんだよな。筋肉モリモリの人がポーズを決めながら順位を言ったりラッキーアイテムを言ったりするのが笑えるからおもしろい。私はその占いを凝視する。私の星座はみずがめ座。今日の私は何位だろう。今日はとても大事な日だ。上位の運勢であれ。
『今日の運勢、第5位はぁぁー、みずがめ座のあなたーーーー。』
運勢を発表するボディビルダーの人がサイド・チェストというポーズを決めながら私の星座の運勢順位を発表した。第5位か。上位の方だけどちょっと微妙かも。
『そんなみずがめ座のあなたのラッキーアイテムはぁぁー、髪留めだぁぁ。』
運勢を発表するボディビルダーの人がフロント・ダブル・バイセップスというポーズを決めながらラッキーアイテムを発表した。髪留めか。普段はあまりつけないけど、今日はつけていこうかな。願掛けってやつ?そうだな、つけていこう。確か部屋にあったはず。
「真里菜ちゃん、テレビばっかり観てないで早くご飯食べちゃいなさい。」
「ごめんお母さん。」
私はお母さんが持ってきたおかわりのご飯をふりかけをかけてまた一心不乱に食べ始めた。
学校に着いた私はいつものように教室へ向かった。にしても最悪だ。夜遅くまで起きていたことでの眠気と、緊張と、そして朝食を食べ過ぎたことでの満腹感のトリプルパンチに苦しまれている。何してんのよ。今日こそは言うって決めたのに、私の馬鹿。教室に入ったら自分の席で少し休もう。私はそう決めた。
教室を見渡すと新町亜紀ちゃんと深江貴理子ちゃんは既に教室にいた。おはようって言いたいけどまずはちょっと休もう。私はすぐ自分の席へ座った。座ったのはいいけど、座ったのと同時に一気に眠気と緊張がやってくる。あーもうどうしよう。何でなの。気合入れないといけないのに。こんなので大丈夫なの私。とりあえず深呼吸しよう。深呼吸して落ち着こう。
そんなことしていると友達の藤島美佳ちゃんが教室に入ってきた。美佳ちゃんと私は席が近い。よし美佳ちゃんとお話ししてちょっとでも気を紛らわそう。私はスタスタっと美佳ちゃんの席へ向かった。
「おはよう、美佳ちゃん。」
「おはよう、真里菜。あれ?髪留めしてる。かわいいね。」
良かった。髪留めも似合ってるぽいし今日はいけそうな気がする。
「えへへ、ありがとう。ちょっとイメチェンしてみちゃったりして。ていうか美佳ちゃん。私昨日夜遅くまで起きてたから眠―い。ねぇねぇ、目が覚めるおまじないかけてよ。」
「何?目が覚めるおまじないって。そんなの知らないよ。目にワサビ塗っとけばいいんじゃない?」
「そんなのしたら目が大変なことになっちゃうよ、もう。」
変でお馬鹿なお喋りだけど、今の私には丁度良い。少しずつだけど眠気も緊張も収まってきたかも。
私たちがお喋りしていると亜紀ちゃんと貴理子ちゃんもやってきた。皆でお喋りした方が気はもっとまぎれるよね。
「何の話してるの?」
亜紀ちゃんが問いかけてくる。
「真里菜が今日は目にワサビを塗るっていう検証をするって話。」
「えっ、真里菜そんなことするの?止めた方がいいよ・・・・・。」
いやいやそんな話してないし。何言い出すのよ美佳ちゃんは。
「いや、そんなことしないし、そんな話してないから。私が眠いって言ったら美佳ちゃんが目にワサビ塗れって言ってきたの。」
「眠気が覚めるおまじないだよ。」
美佳ちゃんが真顔で言ってくる。時々美佳ちゃんがちょっと怖い時がある。
「そんなのおまじないじゃないよ。」
私が食い気味で言い返すと、亜紀ちゃんがハッとした顔をして口を開いた。
「私知ってるよ、目が覚める方法。」
「えっ、なになに?どうするの?」
「タバスコを目薬代わりに・・・・・」
「あっ、もういいです。」
私はタバスコというワードを聞いた瞬間に話を止めた。亜紀ちゃんがそんな風にふざけるのは珍しいな。でもやっぱり皆とお喋りしている時が1番楽しいかも。だいぶ緊張も眠気も収まってきたな。
私たちがお喋りしていると教師に1人の女の子が入ってきた。
大安寺さんだ。大安寺さんは所謂いじめられっ子で、ある子にいじめを受けている。私は今日この子ともう1人の女の子をそのいじめっ子から助けるために、いじめっ子にもういじめを止めるように言うって決めたんだ。どうしよう。大安寺さんを見た瞬間に急に緊張いてきた。やっと収まってきたのに。
ふと美佳ちゃんを見ると心ここにあらずって感じだ。どうしたんだろう。美佳ちゃんの目線の先は、大安寺さん?もしかして美佳ちゃんも大安寺さんがいじめられていることに気づいているのかな。
「どうしたの?美佳ちゃん。」
私は考える前に言葉を発していた。
「うん?うん、大丈夫。何でもないよ。」
美佳ちゃんは表情一つ変えることなく答えた。
私たちは大安寺さんの話を全くしたことがない。というか避けている気がする。避けているということはやっぱり美佳ちゃんもクラスのいじめに気付いているってことだよね。亜紀ちゃんも、そして貴理子ちゃんも。もしいじめを知らなかったら「大安寺さんどうしたんだろう」とか「大安寺さん、他の子と喋ってるところ見たことない」的な話をすると思うし。
雰囲気でわかる。美佳ちゃんも亜紀ちゃんも貴理子ちゃんも気づいてる。3人だけじゃないきっとクラスの皆も気づいてるよ。
でも誰も口にしない。いじめから目を背けようとしている。その原因が・・・・・
ガラガラ。教室の扉が開かれた音だ。来た。豊旭だ。この子がいじめの元凶だ。性格もきつくて怖いし、何より彼女のお父さんとお母さんが凄い人たちだ。お父さんは地元では有名な実力者だし、お母さんは有名な教育評論家だ。私もよくテレビのワイドショーとかで観たことある。正直あの子に何か言って怒らせたら何をされるかわからない。皆怖くて誰も豊に口出しできない雰囲気になっている。
でもやるんだ。怖いけど、ちゃんとはっきり言うしかないんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます