うっとうしい悪魔 小学生時代第4話(藤島美佳編4)
リビングへ向かうとテーブルの上においしそうな夜ご飯が並べられていた。
椅子にはりんと・・・・・珍しいお父さんが座っていた。
「お父さん、おかえり。今日は早いんだね。」
「だだいま、美佳。今日は早く上がらせてもらったんだ。明日からはいつも通り帰りが遅くなるけどね。」
お母さんはキッチンでお茶碗にご飯を盛っている。
「私、持っていくの手伝うよ。」
私はお母さんの元へ駆け寄る。
「ありがと、美佳。じゃあ、お父さんとりんの分お願いね。」
私はご飯が盛られたお父さんとりんのお茶碗を配膳し、椅子座った。ふとソファの方を見ると奴が座っている。何くつろいでるんだあいつは。お父さんもりんもそしてお母さんもあいつには気づいていない。どうやらあいつの姿が私以外に見えていないのは本当らしい。
お母さんが自分と私の分のお茶碗を持ってきて少し遅めの夜ご飯が始まった。こうして家族全員が揃ってご飯を食べるのは久しぶりだ。いつもはお父さんが夜遅くに帰ってくるからお父さんを除いた3人でご飯を食べるのが当たり前だった。けど、今日は家族全員だ。ちょっとうれしいかも。
「美佳、りん。学校はどうだ。問題なくやっていけているか?」
お父さんが質問を投げかけてきた。私は問題なくやっていけている。今起こっている学校の問題は除いて。
「うん、大丈夫。学校大好き。」
りんが満面の笑みで答えていた。口元にはご飯粒がついている。
「そうか、それは良かった。美佳の方はどうだ?」
私に振られた。ちゃんと返さないと。
「うん、私もちゃんとやっていけてるよ。全然問題ないよ。」
私は取り繕った笑顔でそう答えた。
「そうか。それは良かった。最近忙しくて中々話す機会もなかったし、2人がちゃんと学校でやっていけているか、お父さん心配だったんだ。でも安心したよ。2人とも元気に過ごせていそうだって分かって。」
「ありがとう、お父さん。」
私はお父さんにつぶやいた。
「うん。でも何かあったらすぐにお父さんに言うんだぞ。」
お父さんがそう私たちに言った時、私の左隣にデュナミがいつの間にかいることに気づいた。
「うまそうな料理だなぁ。何?お前毎日こんなの食ってんの?羨ましい。」
デュナミが間の抜けた声で私に話しかけてくる。ていうか家族の前で話しかけてくるな。
「お姉ちゃんどうしたの?怖い顔してるよ。」
りんが訊いてきた。ヤバい、ごまかさないと。
「何でもないよ。ちょっとご飯がのどに詰まっただけ。」
「大丈夫?ちゃんとよく噛んで食べなさいよ。」
お母さんが私に注意する。
「うん、気を付ける。」
私がそう言って、お茶を飲み始めた時、デュナミが夜ご飯が並べられているテーブルの上へ浮き上がり、テーブルの真ん中にあるおかずを指さして私に顔を向けた。
「このおかず残らないかな?残ったらさ、俺に頂戴。」
こいつあとでぶっ飛ばす。私は心の中でそうつぶやいた。
ご飯を食べ終えた私はお風呂に入り、パジャマに着替え、自分の部屋へと戻った。いつもであればくつろげる自分の時間であるが、今日は違う。部屋ではあの黒フードが壁にもたれて眠っていた。
「何くつろいで寝てんのよ。」
私はデュナミに話しかけると、デュナミは眠たそうな瞼を開いて、目をこすりあくびをしながら私に語りかけてきた。
「よう、風呂終わったのか。」
「あんた、私の部屋で変なことしなかったでしょうね。」
私はデュナミを睨む。睨まれたデュナミは笑い始めた。
「しないしない。変なことなんてしないよ。ちょっとくつろいではいたけどね。」
本当か?私は疑問に思いながらも、今日の夜ご飯の出来事を話すことにした。
「あのさぁ、さっきの夜ご飯の時だけど、私に話しかけるのやめてくれる。」
「へっ?何で?どうして?」
「そりゃそうでしょ。今あんたの姿が見えてるのは私だけだし、声が聞こえてるのも私だけなんだよ。そんな状態で私があんたと会話したら周りの人たちは私が独り言ってるように見えて私が変な子みたいに見られちゃうじゃん。」
「別に良いじゃん、それくらい。」
「良くない。絶対に人前で私に話しかけるのはやめて。」
「はーい。善処しまーす。」
乾いた返事だ。私の注意を聞く気ないな、こいつ。絶対にこれからも人前関係なく話しかけるつもりだ。私はそのように確信した。
私は机に向かい、明日の授業の準備を始めた。ランドセルからいらない科目の教科書とノートを抜き取り、明日やる教科の教科書とノートを詰め込み始めた。今日は何だか疲れた。デュナミとかいう悪魔と出会うし、家族の前でデュナミと会話しないようにいらない注意を払わないといけなかったし。今日は宿題が特別なくて良かった。こんな日に宿題があったらたまったものじゃない。そんなことを考えながら準備をしていたが、ふと思い立ち、振り返ってデュナミに尋ねた。
「あんた、これからずっと私の家にいるつもり?」
デュナミは首をかしげていた。
「えっ、駄目?ていうかお前の部屋でお世話になろうと思ってたんだけど。」
「駄目に決まってるでしょ、そんなの。私のプライバシーとかどうなるのよ。」
「えー、本当に駄目?もうさ、俺たちパートナーみたいなもんじゃん。」
「パートナーになった覚えなんてない。私あんたと一緒に家で生活するなんて絶対に嫌だから。」
「冷たいなぁ。あれですか。思春期だから男の子と一緒はちょっと抵抗ありますみたいなあれですか?」
「あんたが悪魔だからよ。」
デュナミが手を顔に当て、顎を斜め下に向けて大げさなポーズを始めた。
「がぁーーー。悪魔だから一緒に生活できないって。差別だ、差別。悪魔差別だよ。美佳ちゃんがそんな子だったなんて知らなかったよ。」
「私の何を知ってるのよ。とにかく私はあんたと一緒に家で生活するなんて絶対に嫌だからね。」
はぁとデュナミのため息が聞こえてきた。ため息をしたいのはこっちの方だ。急に現れた意味不明な悪魔と共同生活なんてありえない。
しばらく沈黙が続き、デュナミが口を開いた。
「まぁ、そんなこと言ってくるのは想定内だったよ。大丈夫安心しな。毎日24時間ずっと一緒にいるわけでもないし、俺はこの家に居座る気もさらさらない。だからお前と一緒に生活することもないよ。」
その言葉を聞いて少し安心した。これで一緒に生活しないといけないかもしれないという悩みの種が取り除かれたし、普段と変わらない生活ができるだろう。でもその希望はすぐに打ち砕かれた。
「でも、俺は気まぐれだからな。お前の前からいなくなってもすぐどこかから現れるかもしれないし、話しかけたりするかもな。俺含めて悪魔は神出鬼没なんだよね。あっ、でも俺がそばにいない時、お前から俺を呼んでくれたらいつでもどこでも会いに来てやるぜ。なんて言ったって俺たちはパートナーだからな。そんじゃ今日はもうお暇しますわ。また明日。良い子は早く寝ろよ。おやすみー。」
そう言うとデュナミは姿を消した。それっていつどこであいつが現れるかわからないってことでしょ。一緒に生活するよりもたちが悪いかも。悩みの種は全く取り除かれてはいなかった。ていうか私からあいつを呼ぶなんて絶対にないし、そもそもパートナーなんかじゃないから。調子の良いことばかり言って。明日からどうなるんだろう。今日はもう寝よう。正直考えてもどうにもならないことだ。私は部屋の電気を消してベッドへ入り、眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます