第39話 法王庁滞在
法王庁
王国の東に位置する小国であり国土の面積も王国の10分の1にも満たない。
列強が集う大陸において他国からの侵略を受けずにその国を保っていられるには、やはり教会の長である法王がいるということが大きい。
現法王は47代目にあたり、基本的には法王の退位時に12名いる枢機卿の中から次の法王が選ばれる仕組みになっている。
今法王庁の法都の一室で話を交わしているのもそんな枢機卿のひとりであった。
「それで、王国の騎士と件の歌姫とやらはもう法都に入ったというわけだな?」
「はっ、現在は中央区に近い宿に滞在している模様です」
「王国の騎士の中に王族がいるというのは?」
「はっ、第3皇子のハイル殿下のようでございます」
「ふむ……わかった、下がってよいぞ」
若い神官が失礼しますと部屋を出るのを見届けると男、神官らしくないガッチリとした体躯に法衣を纏った壮年の、は顎に手をやり何やら考えこんだ。
「吉と出るか凶と出るか……猊下にはお伝えせねばならんな」
男はそう呟くと部屋を後にした。
「しっかし右見ても左見ても真っ白だな」
「ああ、綺麗っいやあ綺麗なんだろうけど……ちょっと落ち着かねぇなぁ」
法都内は白を基調とした建物ばかりで歩いていると自分が今どこを歩いているのかわからなくなるほどです。
今わたし達が滞在している宿も白亜の建物で一見すると宿には見えないようなものでした。
「まぁ国としては悪くないんじゃないのか?」
「治安もそう悪くないらしいしな」
「そうは言っても西区の方はスラム街らしいしそれなりの貧富の差はあるみたいだな」
「俺の調べたところによるとやっぱり亜人や他種族はスラム街に押し込められてるみたいだ」
「人至上主義か……」
「教会の教えが全てらしいからな」
宿の一室でわたし達はこの法王庁に関してわかっていることを話し合っていました。
教会の総本山ということもあり街の中には亜人や他種族の姿は全くありませんでした。
道行くのは人間のみ、王国のように亜人やハーフ、他種族の姿は見ることはありません。
特に目立ったのが真っ白な鎧の騎士さん達でした。
ハイルさんが言うには、法王庁の騎士団の方々だそうですがまるで我が物顔にとても偉そうに歩いているのが印象的でした。
「さて、とりあえずは2、3日様子見だな」
「そうだな、いきなり面会ってわけにもいかないだろうしな」
「でも当然俺たちが法都に入ったって情報は入ってるはずだから何かしらの接触があるかもな」
「まず第1には歌姫様を守ることが絶対条件だ。この宿だって確実に安全てわけでもないかもしれないからな」
「ああ」
ハイルさんがそう言うと皆さんが頷いています。
わたしとしてもいくつか気がかりなことがあります。
法都に入ってから死者さん達の気配がなくなったことです。
ゼロさんが言うには特殊な結界の所為で法都には死者や悪魔は入れないそうで、ゼロさんのようなに擬似的な身体がなければダメだそうです。
それでも何人かの魂さんは入っているそうですので心配はいらないと言っていました。
『さて、40番。今回は我々2人だけなわけだが』
『はぁなんでよりによっててめぇと2人なのかねぇ』
『それはこちらの台詞です……が今回は寧ろその方がいいと思いませんか?』
『ああ、気にくわねぇが……この気配は……ちとヤバイヤツがいそうだな』
『ええ、人間では到底太刀打ち出来ない存在ですからね……悪魔は』
『まぁ19番ならそれなりにいけるんじゃねぇか?』
『本来の身体ならでしょう?あの義体では限界があると思います』
『そりゃそうか、まぁ姫様に一丁いいところ見せないとなぁ』
『ええ、こないだは留守にして散々な目にあいましたからね』
『……思い出したくもねぇな……』
『……会長には絶対に逆らってはダメなのがよく分かりました……』
『あの人って……神より強えよな?』
『……間違いなく』
その日は、宿で遅くまで皆で話し合いをし翌日からの行動方針を決めました。
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