第38話 法王庁領内
法王庁への道中、ハイル王子率いる騎士団とわたし達は、若干の回り道をしながらも順調に進んでいました。
ハイル王子や騎士団の皆さんもすっかり馴染んだみたいで、今も冒険者さん達と一緒に温泉に浸かっています。
わたしはそんな中、星空を見上げていました。
傍らにはゼロさんが控えています。
ゼロさんの本当の名前は教えてもらえませんでしたが魂の皆さんからは、19番さんと呼ばれているそうです。
ゼロさんが言うには法王庁の首都は特殊な結界が張られているらしく魂さん達は入ることが出来ないそうです。何人かは例外もいるそうでその方たちが護衛についてくださるそうです。
ゼロさんは身体があるために入ることが出来るそうで何かあれば自分が何とかすると言っていました。
「あの……ゼロさん」
「……は……い」
元々急遽作った身体らしく話すのは苦手だそうです。
「魂さん達ってどれくらいいらっしゃるんですか?多くの方がいらっしゃるのはわかるんですが……」
「……100人は……いる」
「え?そんなに?」
「は……い」
星空を見上げても今は誰も見当たりませがきっとどこかで見守ってくれているんでしょう。
「あの金色の魂さんがリーダーさんなんですか?」
ゼロさんは軽く頷きます。
「会長……」
「会長さんって言うんですか」
「……そう」
『うおぉぉ〜〜!!ちゃんと喋る機能つけといてくれえぇぇぇ〜〜!』
ゼロさんはたどたどしくも色々と教えてくれました。
集まってきた魂さんを会長さんがまとめて今のかたちになったことや、それぞれが色々な能力を持っていてずっとわたしを助けてくれていたことなど。
感謝してもしきれないです。
「皆さんに身体があればこうしてお話ができるんですけど……」
『2ば〜ん!!!その他ヒマなヤツ!!全員でアシッドスライムを探しにいくんだっ!!』
『いや、だってそんな簡単には見つからないんでしょ?』
『それでもだ!お前らも姫様とお話したいだろ?』
『はい!それはもちろん!!』
『よしっ!!ならさっさと出発だ!』
ゼロさんとそんな話をしているとハイル王子や皆さんが温泉から帰ってきました。
「いやぁいい湯だったなぁ」
「ここんとこ毎日温泉通いだからなぁ、王城にもあればいいのになぁ」
「いやいや、この楽しみは野外だからこそですって」
「そうそう、満天の星空を見上げながら入る温泉……最高じゃないですか!」
「はっはっは、それもそうだな!」
浴衣に着替えてタオルを首からかけた皆さんがテントに入っていきます。
「もうただの温泉旅行になってますよね?」
「…………」
翌日からは視察に回る町もないそうなので真っ直ぐに法王庁へと向かうことになりました。
国境はハイル王子がいるおかげで何事もなくこえてようやく法王庁領内に入ります。
法王庁は代々教会のトップである法王が治める国で、国土は王国の10分の1程度しかありませんが世界中の信仰の中心ということもあり近隣の国家が侵攻することもなく平和な国だそうです。
ただ、やはり信仰が強すぎてか亜人や魔物に対しての強い排除意識があり、人以外が住むには厳しい環境だそうです。
ハイル王子は、一回潰れたほうがいいんじゃねって言っていました。
わたしもそう思います。
法王庁領に入り三日ほどで法都が見えてきました。
高い城壁に囲まれた真っ白な街。
清廉を意味する白を基調とした整然と整備された美しい街だそうです。
わたしは何となく足取りも重く、街へと続く街道を進んでいきました。
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