第37話 旅の始まり


 王都を出発してしばらく後。


「さぁて!みんな集まれ!」


 冒険者さんが他の皆さんを集めて今後の方針を決めるようです。


「よぅし、集まったな?初めてのヤツはどれくらいいる?」


 パラパラと何人かが手を挙げました。


「ならざっと説明しておく!よく聞くんだぞ!」


 冒険者さんたちは皆さん何度も一緒に旅をしていますので問題ありませんが、騎士団の皆さんやハイル王子にお付きの騎士さんは初めての方もいらっしゃいます。


「まず!お昼の時間は厳守だ!そして手分けして周囲の捜索にあたることになる!」

「???」

「お昼ごはんは残さず食べること!感謝の心を忘れずにだ!」

「はいっ?」

「次に、大事のは……」

「あの〜」

「ん?どうした?騎士さん」

「何の話をしてるんでしょか?」

「何のって?大事な話だ!まぁいずれわかる!」

「……はぁ」


 冒険者さんの話はまだまだ続きますが、わたしは大体わかったので先に辺りを捜索することにしました。


 本当にいつもありがとうございます、です。



『なぁ2番さん』

『ん?なんじゃ?』

『あの身体って味も分かるのか?』

『もちろんじゃ、痛み以外の感覚はちゃんと備えておるぞ』

『痛みは感じないんですね?』

『当然じゃ。痛がっておったら姫様の護衛なんぞ任せれんからな』


 そのあと騎士団の皆さんも一緒に周囲の捜索が行われました。


「ここのカツ丼は絶品なんだぜ!」

「おうよ!一回食ったら忘れられねぇぜ!」

「何故……こんな場所に御食事処が……」

「細かいことは気にすんなって!」

「細かいか?……な、こ、これは!美味いっ!」

「だろ?」

「これほど美味いカツ丼は初めてだっ!」


 皆さん、一心不乱にカツ丼を食べてます。

 本当に美味しいですから、ここのカツ丼は。


 流石にこのまま夜まで過ごすわけにはいきませんので旅を続けることにします。

 日が傾いてくる頃に今日の野営の準備を冒険者さんたちが行ってくれます。


 それを騎士団の皆さんは、いつものように驚きの表情で眺めていました。


「やはり騎士団も野営の練習はせねばならんな」

「仰っるとおりですな、殿下」


 ハイル王子もそう言って冒険者さんたちの手際の良さを褒めています。



「よぅし!テントは貼り終わったな?」

「はい!」

「こちらも準備完了です」

「よし!なら手分けして探すぞ!」

「「「おおっ!!」」」


 号令のもと、皆さんが四方に散らばっていきます。


「何を探すんだ?」

「ふっふっふ、それは見てのお楽しみでさぁ」


 ハイル王子の問いかけに冒険者さんはニヤリと笑い返しました。


「ありました〜!!!」

「でかした!全員集合だ!」

「な、何があったというんだ?」

「まぁまぁ、まずは歌姫様からって決まってるんですよ」


 満天の星空の下、一日の疲れを癒す草原の真ん中の温泉はやっぱり最高です。

 このときばかりは上空を見上げても魂さんたちは見えません。

 気を使ってくれているみたいでなんだか悪い気がしますが。


 温泉から上がって皆さんに報告します。


「いいお湯でした。いつも先に頂いてすみません」

「いえいえ、歌姫様がおられるからアレがあるんですから当然ですよ」


 そう言って冒険者さんたちとハイル王子は温泉へと向かっていきました。



「これは……堪らんな」

「でしょ?これが毎日続きますからね」

「いったいどうなっているんだ?」

「さぁ?歌姫様の奇跡って俺たちは呼んでますが」

「……奇跡か……まさにその通りだな」

「昼メシとこのためだけに冒険してるようなとこあるからな」


 こうして法王庁への旅はいつもと同じ感じで始まったのでした。


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