第31話 2分間の攻防


「2分!2分お願いします!」


 魂さんたちが2分あれば何かをしてくれるみたいです。

 上空の魂さんがわたしの周りに魔方陣を描いていきます。


「おまえら!何としてでも食い止めろ!」

「王国騎士の気合いを見せてやれ!」


 冒険者さん達と騎士団の皆さん、魂さん達も悪魔に向かっていきます。


「フン、人間如きが……くだらん!」


 見えない障壁に守られた悪魔はそれでも何ごともないように悠然と歩いてきます。


『42番から45番!余に続け!』

『『『『了解!!』』』』


 幾筋もの斬撃が悪魔を襲いますが、それでも悪魔の障壁にヒビひとつ入りません。


「ほほう?これは……」


 悪魔が歩みを止めて迫り来る斬撃を見据えます。


「四聖の剣撃か……」

『むう、余を知っておるとは?ただの悪魔ではないのか?』


 悪魔は正面から斬撃を受け止めて冷酷な笑みを浮かべました。


「くくく、死して尚未練があるのかぁ?俺が喰らってやろう!」

『いかん!撤退!』


 悪魔を中心に風が吹き荒れて魂さんを吸い込もうとします。


『89番!強制転移!』

『はいっ!』


「ん?消えた……か?」


 悪魔は辺りを見渡して……


「やはり、女ぁ〜貴様は確実に……喰ってやるっ!!」


 先程のゆっくりした歩みとは違い悪魔は目を見開きわたしに向かって飛んできました。


「歌姫様をお守りせよ!」

「騎士団!!!」

「うおぉぉぉぉ〜!!!」


 冒険者さん達と騎士団の皆さんがわたしの前に立ち塞がってくれます。


「皆さん!もうやめてください!死んじゃいます!」

「はははは、たかが人間如きいくら集まろとゴミに等しいわっ!」


「ぐわあぁっ!!」

「く、くそぅ……」

「う、歌姫……様」


 悪魔の前にあっという間に地面に崩れ落ちる皆さん。


『まだかっ!』

『あと少しです!』

『83番!パーフェクトヒールを姫に掛け続けろ!時間を稼げ!』

『他の連中はありったけの魔法を打ち込め!』

『はいっ!』



 わたしと悪魔の距離はもう1メートルほどでしょうか。

 遮るものもなく悪魔がその手をわたしに伸ばしたとき……


「ぐおっ!」


 わたしに伸ばした手が跡形もなく吹き飛びました。


「貴様らぁぁ!死者の分際でぇぇ!」


 上空から無数の魔法が悪魔目掛けて降り注ぎます。


『やはりな、姫様に触れようとすれば障壁を解くと思ったわ』

『流石会長!』

『全員今だ!』


 わたしのすぐ目の前で悪魔と魂さん達の激しい戦いが繰り広げられています。


「歌姫様!今のうちにお下がりください!」


 わたしの周囲で倒れていた皆さんは魂さんの魔法により傷は治っています。


「あと少し!あと少しです!」


 わたしはここを今の動くわけにはいかないのです。


「けけけっ何を企んでやがるか知らねえが無駄なあがきだぜぇ」

『無駄かどうかはやってみんことには分からんだろ?』

「はっ、死者は黙って喰われてろ!よ!」

『黙って喰われるほど世を儚んではおらん!』

「けけっこの世に未練タラタラのカス共がっ!」



「あ、あれが歌姫……」

「なんと凄まじい……」

「あれほどの魔法を連続で行使しながらも顔色ひとつ変えんとは」

「おまけに無詠唱かよ」



『会長!!準備OKです!!』

『よしっ!全員上空に退避!』

『行きますよぉ〜〜!!!』


「ん?なんだ?もう終わりかぁ?」


 魂さん達が一斉に上空へと飛び上がっていき、わたしの周りの魔方陣が眩い光を放ちはじめました。


「あぁ?なんだ?」

 悪魔はわたしをちらっと見てから上空を見上げ。


 そして……








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る