第14話 討伐遠征10日目 討伐終了



 戦いは益々激しさを増してきました。

 わたしの元に運ばれてくる騎士さんや冒険者さんもひっきりなしです。


「おお……傷が……」

「神の奇跡なのか……」


『神ですもんね?』

『身もふたもない言い方ですね』

『じゃあ……ヒマ人?』


 倒れてもすぐに回復して戦いに戻っていく冒険者さんと騎士さん。


「え?お前さっき死にかけてなかったか?」

「歌姫様の加護があれば3分で復活よ!!」

「ラーメンかよ……」


『そういえばラーメンあるんですよね』

『そうだな。どっかの世界から来た異世界人が広めたらしいぞ』

『へ〜それって40番さんの仕業ですよね』

『多分な……あの人ラーメン好きだし』

『こないだもお忍びで来◯亭に食べに行ってたしな』



 やがてワイバーン達は劣勢と見て山頂から逃げるようにして飛び立っていきました。


「うおぉぉぉぉ!!!俺達の勝利だ!!」


 騎士団の皆さんと冒険者さんが共に手を取りあって喜んでいます。

 やっぱり騎士の方々や高ランクの冒険者さんはすごいです。

 勝利に湧く騎士団の皆さんと冒険者さんをわたしは後衛の方々と少し離れたところから見ていました。


「それもこれも歌姫様の加護があってこそだ!!」


 ひとりの騎士さんがそう言うと皆さんもわたしの方に向かって歓声を上げました。


「え?いえ……わたしは何も……」

「何を言われますか!こうして皆無事なのは歌姫様のおかげです!」

「そうです!死を覚悟した私を救ってくれたのは歌姫様です!」

「温泉にも入れたし」

「昼御飯は美味かったし」

「え?」

「は?」


 後半ちょっとよくわからないことを言っていましたが皆さんがそう言ってくださり嬉しいです。


「皆さんが無事でなによりです。それだけです」


 こうして10日目にして無事にワイバーンの討伐は終わりを告げたのでした。



「……で、何で騎士団の連中が一緒に下山してるんだ?」

「何でも歌姫様に命を救われたから王国まで護衛するそうだ」


「ふ〜ん」


「……何故このような所に御食事処が……?」

「おっ!今日のお昼はカツ丼だぜ!」

「ここのカツ丼は美味いんだよな〜」

「……来るときもこうだったのか?」

「おう!美味いんだぜ〜ここのカツ丼」

「…………」



『17番、いっそのこと店出すか?』

『いやぁ〜そう言っても俺達死んでますからね』

『それもそうか……』

『48番から50番!お客さんが帰ったらすぐに解体だからな!』

『『『へい!親方!』』』



 わたしと冒険者さん、騎士団の皆さんで下山していきます。

 騎士団の皆さんは御食事処のカツ丼にとても驚いていました。王都にはカツ丼はないのでしょうか?



「なぁ、どうして階段があるんだ?君たちが作ったのか?」

「いいや」

「手摺までついているのだが……」

「え〜っと、歌姫様の奇跡かな?」

「これもか……」


『階段よりスロープの方が良かったかな?』

『何でだよ?』

『足の不自由な人でも登れるだろ』

『足の不自由な人は討伐には来ねーよ』


 その日は中腹の比較的広い場所で野営することになりました。

 いつものように冒険者さん達がテントを張ってくれます。


「流石は冒険者だな。見事なものだ」

「そりゃこっちはこれでメシ食ってるわけだからな」

「我々も野営の設営の訓練もせねばならんな」

「言ってくれりゃ教えてやるぜ」

「おお、そうか。それは助かる」

「しかし……」


「いい湯だな……」

「ここは鉄分とミネラルが豊富なんだぜ」

「詳しいな?」

「立て札に書いてからな」

「討伐に来たんだよな?」

「もちろんだ!」


 騎士団の皆さんと冒険者さん達は仲良く温泉に入っているみたいです。


 疲れたときはやっぱり温泉ですよね。








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