第2章 ワイバーン討伐作戦
第7話 討伐依頼
「そこを何とかお願い出来ないでしょうか?」
今わたしの前には冒険者ギルドから来たギルドの職員さんが机に額をこすりつけるようにして頭を下げています。
「あの……でも、わたしGランクですよ?そんな高ランクの冒険者さんと一緒に討伐だなんて……」
職員さんが言うには、近隣の山頂にワイバーンの巣が発見されたらしく王国からギルドに討伐依頼が出されたそうです。
「何を言われますか!ミィスさんの実績ならAランクになっていてもおかしくないのですよ!」
『全くその通りだ』
『何故ミィスちゃんはランクを上げないんでしょうね?』
職員さんが言うように単純に討伐実績だけならそうなのでしょう。
ですがそれは全部死者さんたちのおかげなんです。
わたしはランクなどあげなくても食べていけるだけのお金と故郷に送るお金があれば充分なのです。
『きっとミィスちゃんは自分の力ではなく我々の力だとわかっておられるのだろう』
『か、会長!』
『何とも心打たれるではないか……』
「ランクはこの際関係ありません!是非!是非お願い致します!」
「……わかりました。足手纏いかもしれませんがお手伝いさせて頂きます」
「おお、ありがとうございます!〜いたっ?」
『47番、電撃(小)だ』
『はい』
『全くけしからん!どさくさに紛れてミィスちゃんのお手を触ろうなどと……』
喜びのあまりわたしの手を取ろうとした職員さんは、バチっとその手に電撃を受けて首を傾げながら小屋を出ていきました。
今のはきっとわたしを心配した死者さんの仕業なのでしょう。
「うふふ、わたしは大丈夫ですよ」
わたしは何処にいるともしれない死者さんたちに向けて笑いかけます。
『会長〜〜!!ミィスちゃんが……ミィスちゃんが自分に笑いかけてくれたであります〜〜!』
『うむ、47番。お前の働きをミィスちゃんが見ていてくれたのだ!良かったな!』
『はいっ!いやっほう〜〜!!!』
こうしてわたしはギルドの依頼でワイバーン討伐に参加することになったのでした。
依頼は明後日から約1カ月間です。
その間は酒場でのお仕事をお休みしなければなりませんので酒場のご主人に事情を説明したところ快く了承してくださりました。
いつもきて下さる冒険者さんたちも応援してくださったので心強い限りです。
そして迎えた討伐依頼当日。
わたしは冒険者ギルドに向かっています。
服装はお気に入りのワンピースに麦わら帽子。まるで近所にお出かけするような格好ですが、他の冒険者さんのように大層な武器や防具を持っているわけではないので仕方ありません。
肩からぶら下げたポシェットはある日、わたしの小屋の前に置いてあったものです。
このポシェットは不思議でいくらでも物を入れることができる優れものなのです。
きっとこれも死者さんたちが用意してくれたのでしょう。
カランカランと扉を開けて冒険者ギルドに入ります。
中にいたちょっと怖そうな冒険者さんたちがわたしをジロリと睨みます。
「あいたっ!」
「うわっ!」
「いてっ!」
『47番。あの3人に電撃(中)』
『はい、ミィスちゃんを睨むなんて……』
何故かわたしを睨んだ冒険者さんたちからは焦げた香りがしていました。
「あの……こちらに来るように言われましたミィスと言います」
「はい、ギルドカードを拝見してもよろしいでしょうか?」
「は、はい、どうぞ」
カウンターの美人なお姉さんにカードを渡します。
「えっと……Gランクの……ミィス?歌姫様っ!?」
カウンターの美人なお姉さんがそう言うと回りにいた冒険者さんたちが騒ぎだしました。
「歌姫って、あの噂の歌姫か?あの女の子が?」
「王都最強のGランクって話だぜ……」
「どう見ても可愛い女の子だぜ?」
『可愛いには同意ですな』
『同感です』
『激しく』
「あ、失礼しました。こちらへどうぞ」
美人のお姉さんに連れられてわたしはギルドの奥にある広間に向かいます。
広間には大勢の冒険者さんが集まっていました。
「ギルドマスター!歌姫ミィス様、ご到着なされました!」
お姉さんがそう言うと広間内が一気に静かになり皆さんがわたしを注目します。
ちょっと怖いです……
『いかん!ミィスちゃんが怖がっている!37番!部屋内にスマイルの魔法を!』
『あいよ!』
広間内にふわっとした空気が流れるとわたしを見ていた冒険者さんたちは何だか引きつった笑いを浮かべました。
やっぱりちょっと怖いです。
『よしっ!引き続き警戒!』
『『『はい!』』』
わたしが最後だったようでギルドマスターさんから討伐についての詳しい説明が始まりました。
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