第5話 会長>>>神


『なぁ、ちょっと聞いてもいいか?』

『んん?なんだ?93番』


 ミィスちゃんがおやすみになった後、俺と71番はミィスちゃんが住む小屋の警備を担当していた。


『俺たちって死者だよな?普通さ、死んだら天界か冥界に行って転生を待つんだろ?なのにどうして俺たちはこうして現世に留まってるんだ?』


『ああ、そうか93番は新しく入ったから知らないんだよな。あのな、天界には全能神デウス様がいらっしゃるだろ?で冥界には冥界神ハデス様がいらっしゃるんだが……』


 そこで71番は一息ついて、続きを話はじめた。


『俺もその時はまだ生きてたから詳しくは知らないんだが、ミィスちゃんが死者の魂を引き寄せのを吉としなかった冥界の使者がミィスちゃんを襲おうとしたことがあったらしくてな』


『ええっ!ミィスちゃんを!!ゆ、許せん!!!』

『まぁ落ち着けって、それでな会長がブチ切れて冥界に乗り込んだそうだ』

『冥界に?会長!マジかっけぇ〜!』


『冥界に乗り込んだ会長は冥界神ハデス様とサシで勝負してミィスちゃんを認めさせたって話だ』

『会長……神?』

『話はこれで終わりじゃないんだ。その後勢いに乗った会長は天界にも乗り込んで全能神デウス様にも認めさせたってさ』


『マジっすか?会長……もう最強?』


 ってゆうか神にサシで勝つってもう会長何者って感じ?


『まぁそんなこんなでこうして平穏無事に俺たちはミィスちゃんを見守れるってわけだ』



 ところ変わって、とある山中。


『しかしこないだの絶対防御魔法は中々のモノでしたなぁ。流石は神ですな』

『いやいや、お恥ずかしい。会長殿のご指示があってこそですよ』

『けっよく言うぜ、それよか、てめぇこんなとこで油売ってていいのかよ?』

『おやおや30番君、キミこそいいのですか?あちらも忙しいのでは?』

『うちの連中はてめぇんとこと違って優秀だからなぁ、俺がちょっと留守してもしっかりやってらぁ』

『相変わらず汚い言葉遣いですね、これだから冥界の人はイヤなんです』

『ああん?喧嘩売ってやがんのか?てめぇ?』

『何です?買って頂けるんですか?』


『お2人共、いい加減にして下さい。それ以上続けると……マッチョ1ヶ月ですよ』


 何となく神様っぽいふたつの虹色の魂はその一言でピタリと言い争いをやめ仲良く並んで声の主である、金色の魂の元に戻っていく。


『い、いやだなぁ〜会長〜冗談ですよ〜なぁ?』

『あ、当たり前じゃないですか!我々は仲良しなのですから!ソウルフレンドですよ?ソウルフレンド!』


 ふたつの虹色の魂の声を代弁するならきっとこうだっただろう。


 マッチョはイヤ…マッチョはイヤ…マッチョはイヤ…


『さて、前置きが長くなりましたが今後の予定を少し話しておきます』


『先日の森の一件でミィスちゃんが国に目をつけられた恐れがあります。正直この国程度一捻りですが……我らのミィスちゃんはあの酒場をいたくお気に召しておられますので……』

『ふむ、なら私が神託でも下しましょうか?』

『それも考えましたが……神託絡みになりますと事がおおごとになるやもしれません』


『なら、俺が……』

『余計にややこしくなりますからやめておいて下さい』

『うぐっ』


 山中の奥深く。3つの魂はこれからの事についてそれからしばらくの間話し合いを重ねていた。


 やがて静寂が訪れ森は静けさを取り戻した。




 小さな小屋の窓から朝陽がベッドに眠る少女に優しく降り注ぐ。


「ふわぁぁ〜もう朝ですか……」


 わたしは寝ぼけ眼でベッドから這い出して顔を洗いに水を汲みにこれまた小さな庭に出ます。


『ミィスちゃんが御起床なされた!93番は会長に連絡!18番は水汲み!19番は庭掃除!25番は洗濯干し!』


「あれ?お水が……汲んであります?」


 わたしが井戸に行くとその前に設置された台の上に清廉な水が並々と汲まれ置かれていました。


『殺菌、滅菌、毒味、完了致しました!』

『よし!引き続き18番は周囲の警戒にあたれ!』

『はい!……今日もミィスちゃんは可愛いなぁ……』


「いつも皆さんありがとうございます」


 わたしはそう言って誰もいない庭に向けてぺこりと頭を下げます。


『『『死んでもいい〜!!!』』』

 これが魂が震えるってことだろう。


 こうして本日の責任者である71番以下魂たちは感涙にむせび泣いたのだった。




 死んでもいいって死んでるけどな。








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