区の相談所へいく

 消費者センターの担当者が教えてくれたけれど、いまいち一歩を踏み出し損ねた場所。

 無料相談所である。

 わたくしが独断で警察に相談にあがったとき、警官の一人がメモに「暮らしのガイド」より電話番号と、予約受付時間を抜粋してくれた。

 とても助かった。

 そうやって、ちぎれた手書きのメモが手の中にあると、たたまれた字の小さいパンフレットより身近に思え、母に勧める気になった。

 このときまだ、あんな目にあおうとは思いもしなかった。だから、わたくしが必死で考え抜き、大型連休中は相手も身動きとれないようだから、今のうちに予約をとっておけば、先々心配が減る、と説得。

 そして2019年5月7日火曜日。

 予想通りの展開。


 ハッキリ言って、なにをどう、相談すればいいのかも母はわかっていなかった。

 持ち時間は7時30分から25分間。

 相手は物慣れていて、証拠物件に目を通すと、不備がないかチェックしてくれたそうだ。

 ふむ。無料だけあって、時間をとる気はなさそうだ。いい経験だ。

 なぜかというと、母は冗長なしゃべりの人で、会話中も相手に口をさしはさませずにだらだらと話し続ける人なので、消費者センターへ行ったときも、持ち時間を30分も超過しておいて、「初めてだから」と笑っていた。

 こういうところがわたくしは不満なのだ。つねづねわたくしは母に、相手の求める情報の提示法を身につけて欲しいと思っていた。

 憶測や個人的意見を交えず、事実をのみ伝える、ということを。そのうえで、自分の見解を述べる、それがスマートなのだと。

 たとえそれが的を得ていたとしても、しょっぱなから、

「あの人は~~だから、~~なんです。だから~~なことをするんです」

 という論調は、少なくともわたくしは決めつける行為に見えるし、好まない。

「あの人は~~なことをしていた。だから~~だと思いますし、たぶん~~でしょう」

 の方が、わたくしにはしっくりくる。まあ、これは個人の好みだ。

 裏付けがあったとしても、求められていた情報と違えば、その回答は無意味なのだとわたくしは思う。


 うわさ話や、陰口でわたくしの心を荒らさないでほしいのだ。忠告ならば、しかるべき時にしてほしい。間違っても食事時の話題で、生活保護受給者は根性がねじ曲がっている、などと聞かせないでほしい。気分が悪くなってしかたがない。

 断固拒否する。その点に関しては母の味方はしない。


 で、その業者、弁護士からみても、あきらかに多く余分な請求をしてきて、回収していったものと思われて、母は相談所で初めて「取り返す手続き」なるものが存在することを知った。即断即決はしないが、帰宅したのち、心を決めたらしい。

 友人からもらったお助けメールを印刷して渡した。

 次はきっとうまくいく。なんども母の両肩を叩いた。

 本人が、方針を決めるべきなのだ。そして配偶者と意見が食い違わぬよう、こんどこそ情報の共有をするように念を押した。

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