第68話 怪・缶〜あやしい缶詰〜3
澄麗は四畳半の部屋に立っていた。
タタミの上には達也の死体がころがっている。
(なんなの? これ……?)
混乱していると、背後から声がした。
「どうする? あんた、どっちをすてるの?」
ふりむくと、玄関にあの男が立っていた。
さっき、路上で澄麗に缶詰を押しつけた男。
そして、幸福に暮らしていた澄麗に缶詰を届けにきた宅配便の配達員。
「あなた、いったい、誰? 何者なのッ?」
「おれはただの缶詰の販売員だよ。それ以上でも以下でもない」
違う。悪魔だ。きっと、この男は悪魔なのだ。
男はニヤニヤ笑っていたが、その目は冷徹だった。
「選べよ。あんたは、どっちをすてる?」
「どっちを……?」
そうか。そういうことなのか。
この缶詰は望みを叶えてくれるけど、大切なものを代償にしなければならない。
愛しいわが子の拓也をとるか。
最愛の伴侶の龍星をとるか。
二者択一。
どちらか一方を、必ず、すてなければならない。
「わたしに……選べって言うの?」
男は、ただ笑っている。
澄麗は考えた。
泣きそうな思いで、必死に。
目の前のすべてが、グルグルまわって見えた……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます