第16話 百物語〜リベンジ〜
あの子の復讐だということは、すぐにわかった。
だって、去年のこの日、自殺したから。
イジメに加担してる気持ちは、わたしたちにはなかった。
彼女のまわりの子たちが、なんか変なことしてるとは思ったけど、それがイジメだったなんて。
わたしたちは、ただ、それをイジメと気づかず、傍観してただけ。
林間学校で、百物語をやることになった。
まっくらな体育館のなかで、百人の生徒が集まり、怖い話をしていく。
ひとつめのロウソクが、ふきけされた。
同時に「うッ」と、つまった声がした。
ロウソクをふきけした生徒が、バタンと倒れた。
「なんだ? 熱中症か?」
「目立ちたがってるんじゃないの?」
教員が近づき、うろたえた。
「死んでる……」
生徒はキャアキャアと悲鳴をあげる。
教員が救急車を呼ぼうとしたが、スマホがこわれたみたいだ。
ーー続けてよ。怖い話ーー
とてもイヤな感じの声が、どこからかして、みんな、だまりこむ。
ーー続けないと、ロウソク、ふきけしちゃうよ? これが、あたしの怖い話ーー
ケラケラ笑い声がして、ロウソクの火が一本消えた。
その前にいた生徒が倒れた。
逃げだそうにも、なぜか、どのドアも、かたく閉ざされて、ひらかない。逃げ場所がない。
ーー続けないと殺すよーー
生徒の一人が叫んだ。
「おれの怖い話は今の状況だ。女の幽霊が出て、みんなを殺し始めた!」
ロウソクが消え、その子は倒れた。
ーーもっと、面白くないと。面白かったら、助けてあげてもいいよーー
わたしたちは、しかたなく怖い話を続けた。
一人の話が終わるたび、ロウソクが、かききえる。
みんなが、パタパタ、たおれてく。
最初、ロウソクは百本あった。
でも、残りは一つだけ。
この暗闇のなかに、生きて残ってるのは、もう、わたし一人……。
「ごめんね! 気づかなくて。同じクラスの子がイジメられてるのに気づかない。それって、怖いことだよね!」
すうっと、あの子の気配が遠くなった。
ーーその話、おもしろいーー
やった! 助かったんだ!
わたしは許されたんだ!
でも、わたしは気づいた。
ドアがあかない。
スマホも宿舎に置いたままだ。持ってきちゃいけないって決まりだったから。
「出して! ここから出して!」
暗闇のなか、わたしは体育館のドアをたたき続ける。
生きている者のいない空間で。
すうっと、ロウソクの最後の火が消えた。
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