第15話 光に浮かぶ影
高校生活も残りわずか。
だから、最後に思い出になることがしたかった。
夜の学校に忍びこんで、肝だめししようって言いだしたのは、マナカ。エリナとテルミが、すぐに、いいねって言った。
シズネは気乗りしなかったが、けっきょく、みんなに押しきられた。
マナカが日にちや時間を決めた。
集合場所や校内で歩くルートとか。
でも、それが、テルミにはシャクみたいだ。
「ねえ、ちょっと、マナカのこと、からかってやろうよ」と、言いだした。
「からかうって?」
「マナカにだけ見えるオバケとか、よくない?」
つまり、こういうことだ。
懐中電灯を二本、用意する。
一本はふつう。もう一本は前もって、人型に切ったセロファン紙を貼りつける。
最初はふつうの懐中電灯を使い、途中でオバケ付きと、すりかえるーーというわけだ。
シズネは乗り気じゃなかった。
が、テルミとエリナが、おもしろがって賛成した。
当日の夜。まっくらな校舎に、うまく忍びこんだ。
けっこうハラハラしたけど、シズネのテンションは上がらない。
三階の教室まで行った。
マナカたちは屋上に上がりたがった。
が、そこには出られない。一ヶ月前、飛びおり自殺した生徒がいるからだ。ドアを施錠されている。
暗い教室。
懐中電灯の光で、整列した机が見える。
窓辺に黒い影が見えたような気がした。
人影?
シズネが見直そうとしたとき、すっと、懐中電灯が消えた。一瞬、何も見えなくなる。
しばらくして、また、すうっと光がついた。
懐中電灯の丸い光のなかに、人影が浮かんでいる。
予定どおり、テルミがオバケ付きに、すりかえたのだ。
テルミは自分でやっておきながら、キャアッと悲鳴をあげる。迫真の演技だ。
エリナは、わざとらしく、キャアキャアさわぐ。
つられて、マナカが、おびえた声をだす。
急に叫んだのは、テルミだ。
「イヤ! 来ないで!」
いったい、どうしたんだろう?
「テルミ。どうしたの?」
テルミは、よろめきながら窓のほうへ歩いていく。
正直、やりすぎだ。
顔なんか、ひきつって、ものすごい形相だ。
さすがに、エリナが、あきれた声をだす。
「ねえ、もういいよ。その懐中電灯、消せば?」
すると、テルミは首をふった。
「まだ……つけてないよ」
「えッ?」
そういえば、あの光のなかの影、よく見ると髪がゆれている。用意していたオバケとは、何かが違う。
「じゃあ、いったい、なんなの……? あれ?」
シズネとエリナは、とまどうばかり。
ただ、背後から、何かが近づいてくる気配があった。
あの光のなかに、影を作る何かが……。
「ねえ、先月。自殺した子がいたよね」
テルミの声がふるえている。
「それって、ふためと見られない死体だったって……」
それが近づいてくる。
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